童話「ベラのペンダント」21
ベラは、母ライザに父の王の言葉を伝えた。
「昔逢っていた秘密の裏庭で逢いたい」と。
不安を覚えながらも伝えてからは自分の手を離れたように感じた。
「本当に王様がそう言ったの?」と母は顔を赤らめた。
王のことは覚えてるのだろうか。娘の私のことは忘れたのに・・・
「王様のことは分かるの?」
つい言ってしまった・・・
「あまりよく覚えてはいないのだけど、
夢で見た秘密の裏庭の人影が王様だと思うわ。」
「私のことは?」思わず聞いてしまう。
「ベラのことも夢に見たの。だから娘が居るんじゃないかと思ったのよ。」
母は悪びれずに言う。少しは済まなそうにしてよ・・・
「そうなの。お母さんの夢は正夢なのね。」
「そうかもしれないわ。だからこうして会えたのよね。」と明るく笑う。
私は嫌味を言ったつもりだが、母には通じないらしい。
そんな自分が嫌になってしまう。
「ともかく明日、秘密の裏庭に一緒に行きましょう。
王様が待ってるから。」
「嬉しいわ。何を着て行けばいいかしら?」とうきうきしてる母。
それをなぜか他人事のように見てしまう・・・
自分の両親とはいえ、長く離れていたせいか、あまり実感が湧かない。
というか、自分だけ二人から取り残されたような気さえしてしまう。
せっかく会えた父と母なのにね。
なんでこんなに喜べないんだろう。
母が王妃にまた命を狙われるのではないかと心配してたけど、
それも自分が願ってることかもしれないとさえ思ってしまうほど。
自分で自分を信じられないし、好きになれないのだ。
これが両親から愛されずに成長した結果なのかな。
自分のせいではない、この2人のせいではないか。
両親を恨みたくないけど、そう感じてしまう自分も否定できない。
黙って考え込んでしまった私をいぶかしげに見る母。
「ベラ、どうかしたの? 大丈夫?」
顔を覗き込む母を突き放すように
「なんでもないわ。ちょっと心配になっただけ。」とだけ言った。
「そう。確かに心配だけど、なんとかなるでしょう。」
なんでそんなに楽天的なの?
王様もそうだし、私だけ心配してバカみたい。
まあ、何かあったとしても、それはこの2人の自業自得なのだから仕方ない。
私も開き直ってしまった。
そう思ったら、少しは気が楽になってきた。
心配してもキリがないしね。
また、王様に母の言葉を伝えなきゃ。
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最終更新日
2016年03月29日 22時39分03秒
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