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2015年11月03日
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言語の力によって現実世界の価値をことごとく転倒させ、幻想と夢魔のイメージで描き出される壮麗な倒錯の世界。――裏切り、盗み、乞食、男色。父なし子として生れ、母にも捨てられ、泥棒をしながらヨーロッパ各地を放浪し、前半生のほとんどを牢獄におくったジュネ。終身禁固となるところをサルトルらの運動によって特赦を受けた怪物作家の、もっとも自伝的な色彩の濃い代表作。(内容紹介より)

ジュネ『泥棒日記』(新潮文庫、朝吹三吉訳)
ジュネ・泥棒日記.jpg

◎正真正銘の泥棒

ジャン・ジュネは正真正銘の泥棒であり、大作家です。本物が書いたのですから、『泥棒日記』(新潮文庫、朝吹三吉訳)がおもしろくないはずはありません。

ジュネは捨て子でした。両親の顔すら知りません。友人をつくらず、書物だけを友として成長しました。そんなジュネですので、書物のなかの悪人だけに偏った愛情を感じるようになりました。そして盗みを働き、感化院へと送られます。

感化院は「おかま」と「暴力」と「裏切り」の巣窟でした。ジュネはそこで、親分格の少年の恋人になります。そして自由の身になると、軍隊を志願します。ジュネは軍隊でも重い犯罪を犯し、脱走を余儀なくされます。

脱走後の逃亡のてんまつについては、『泥棒日記』にくわしく書かれています。冒頭でふれたように、ジャン・ジュネ『泥棒日記』は、本物の泥棒の日記なのです。

入獄、出獄を繰り返しながら、ジュネはセーヌ河岸で古書店を営みます。このころジュネは自分の文才に気がつき、『死刑囚』という詩集を自費出版します。その詩集に目をとめたのが、ジャン・コクトー(「標茶六三の文庫で読む400+α」推薦作『恐るべき子供たち』岩波文庫、鈴木力衛訳)でした。コクトーはラディゲを世に送り出したことでも有名です。

ジュネはコクトーの要請で、書いたばかりの『花のノートルダム』(光文社古典新訳文庫)を披露します。一読したコクトーはあまりの過激な内容に、まともな形での出版はできないと判断します。そして地下出版に踏み切るのです。(ここまでのプロフィールは、『解体全書』リクルートを参照しました)

◎泥棒と男色と裏切り

『泥棒日記』は自伝的な、詩のような小説です。舞台はスペインのバルセロナにある貧民窟。そこにはスペイン人以上に、外国人がたむろしています。主人公のジャンは孤児で、物乞いや盗みや男娼で生計をたてています。彼は乞食の醜男サルヴァドールと生活しています。

しかしジャンは、片手を失った美男の女衒スティリターノと出会います。スティリターノは、冷酷で平気で人を裏切ります。それでもジャンは、それが彼の美徳と思います。ジャンはスティリターノと同棲して、献身的につくします。

やがてジャンはスペインを追われ、放浪の旅をはじめます。『泥棒日記』には、そこでの体験が生々しくつづられています。

このあとの展開については触れません。ジャンは次々と男の関係を繰り返します。途中で吐き気をもよおすほど、男同士の情交の模様をさらけ出します。

サルトルには『聖ジュネ・殉教と反抗』(上下巻、新潮文庫)といつ著作があります。読んでみたいのですが、古書価格があまりにも高く手がでません。

ジャン・ジュネについては、三島由紀夫もたくさんの論評をのこしています。その一部を紹介させていただきます。

――ジュネは、泥棒と男色と裏切りにその半生を費やし、自らこの三つのものを聖三位一体と称して、自分の送った過去と、自分の本能と運命に対するおどろくべき情熱的な自己肯定によって、この小説を書いたのであるが、かくも執拗な悪徳の主張は、反対概念としての神をもたない日本人には、歯の立たないところであろう、(鹿島茂編『三島由紀夫のフランス文学講座』ちくま文庫P225)

そして三島由紀夫はこんな文章で結んでいます。
――私はこの世にも崇高で、豪華で、痛切な小説が、全くの偏見なしに読まれることを祈ってやまない、『泥棒日記』は一流の小説なのである。(鹿島茂編『三島由紀夫のフランス文学講座』ちくま文庫P225)

三島やサルトルが絶賛する小説を、ぜひ読んでみてください。
(山本藤光:2013.09.22初稿、2015.10.27改稿)





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最終更新日  2017年10月30日 07時10分31秒
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