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2016年03月06日
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その昔、とてつもなく破天荒な大儲けを企てた男がいた。その名をオズワルド・ヘンドリクス・コーネリアス―スーダン産ブリスター・ビートルな甲虫の粉が信じられないほどの強力な媚薬であることを知った彼は、それを各国大使に売りつけ、ひと財産築いた。ばかりか、次には、それを使って世の天才ピカソやフロイトなどの精の液を奪取し、売りさばこうと考えたのだ。壮大なホラ話の楽しさが全篇に横溢する大人の童話。(「BOOK」データベースより)

ロアルド・ダール『オズワルド叔父さん』(新潮文庫、田村隆一訳)

ダール・オズワルド叔父さん.jpg
◎諷刺とブラックユーモア

ロアルド・ダールは児童文学作家であり、探偵小説短編の名手です。これがダールを語るときの、一般的な冠だと思います。私は代表作『チョコレート工場の秘密』をはじめ、たくさんのダール作品を「ロアルド・ダール・コレクション」(評論社)で読んでいます。このシリーズは児童書のコーナに置かれているので、あまり見かけることはないと思います。全20巻+別巻2巻が勢ぞろいしています。

本シリーズは、きれいに書棚にならべてありました。しかし小学校高学年になる孫が、おもしろいと持ち去り歯抜け状態になっています。ダールについて翻訳者が書いている文章があります。

――空想の作品が現実の観察に裏打ちされている。それが諷刺というブラックユーモアというか、そこが面白い。(柳瀬尚紀、訳者あとがき『チョコレート工場の秘密』より)

柳瀬尚紀が書いているように、ダール作品は豊富な体験と観察により堅牢なものになっています。ダールは第2次世界大戦で、イギリス空軍のパイロットとして従軍しています。その体験を書いたのが、1946年のデビュー作『飛行士たちの話』(ハヤカワ・ミステリー文庫、永井淳訳)となります。ダールはその後、大人向けの短編としては『あなたに似た人』(上下巻、ハヤカワ文庫、田口俊樹訳)や『キス・キス』(ハヤカワ文庫、田口俊樹訳)などを発表しています。

特に『あなたに似た人』に所収されている「南から来た男」は世界中で絶賛されています。また『キス・キス』に所収されている「女主人」もアメリカの探険小説クラブ短編賞を受賞しています。

児童書にかぎらず、ダール作品には諷刺とブラックユーモアに満ち満ちています。しかし私にとっては、大人向けに書かれた唯一の長編『オズワルド叔父さん』(新潮文庫、田村隆一訳)を、推薦させていただくことにします。

◎誇大妄想的事業へ進む


『オズワルド叔父さん』は、奇想天外のホラ話です。それもとんでもない下ネタの話です。オズワルド叔父さんは若いころ、巨万の富を築きました。若きオズワルドはある日、スーダン産甲虫(ブリスター・ビートル)から、強力な媚薬を製造できることを知ります。彼はスーダンに出向き、ブリスター・ビートルを入手します。

実際に試してみると、その効果は絶大でした。彼はブリスター・ビートルの粉末をピルとして製造します。今度はそれをいかに販売するかを考えます。オズワルドはイギリス大使館が主催する各国の大使が集まるパーティにもぐりこみます。そこで各国の大使に、試供品としてビルを配布します。

翌日大使の使いの者たちが、大金をもって押し寄せてきます。ピルは飛ぶように売れました。オズワルドはたちまち大金持ちになります。ピルを服用した男性は、いかにたくましい状態になるのか、ここではあえて触れません。とにかくロアルド・ダールは、たくさんの比喩を用いてそれを説明してくれます。

大金を手にしたオズワルドの事業は、第2の段階に入ります。17歳のオズワルドは、指導教官・ウォレスリーの精の虫凍結技術を入手しようと企てます。老いたウォレスリーは、容易にオズワルドの企てに加担しようとはしません。そこでオズワルドは、自分があなたの精の虫を獲得したら、協力してもらうという約束を結びます。ウォレスリーは、もちろんそんな約束が成就するはずはないと確信しています。

オズワルドはヤズミンという、誰もが魅せられる美人の学生に支援を依頼します。ヤズミンはチョコレートにピルを含ませ、ウォレスリーにあたえます。オズワルドはその様子を、こっそりと観察します。

――九分! まさにその瞬間、チョークを持って黒板にむかっていた手が、突然、書くのをやめた。A・R・ウォレスリーのからだは硬直した。/「ウォレスリー先生」ヤズミンは間髪を入れず、明るい調子で言った、「サインをいただけませんか?」(中略)つのりくる欲情に心は千々に乱れながら、A・R・ウォレスリーは署名した。(本文P152-153)

その後ドタンバタンと、醜悪な場面がつづきます。こうしてオズワルドは精の虫凍結技術を手にいれます。ここからは第3の段階となります。著名人の精の虫を集めて、有能な遺伝子をほしがっている裕福な貴婦人にあたえようと考えるのです。集める役目はヤズミンが担います。ヨーロッパ主要国の国王、モネ、ルノアール、フロイト、ブルースト、アインシュタイン、ストラヴィンスキー、バーナード・ショーなどが、世界著名人事典のごとく登場します。それぞれが媚薬を飲まされ、ヤズミンの餌食となってしまいます。

事業は大成功でした。ところがとんでもない結末を迎えることになります。その様子を書いてみたいのですが、ぐっと我慢して嚥下することにしました。決してエロくない、少しだけお下劣なホラ話をどうかご堪能ください。本書を読んでから、ぜひ『あなたに似た人』『キス・キス』『チョコレート工場の秘密』などを、味わっていただきたいと思います。

ロアルド・ダール作品は、茶色の苦みのあるチョコレートです。必ず大笑いされることでしょう。癖になりますので服用注意ですぞ。

※ここまでの文章を送信しようとしたら、「 わいせつ、もしくは公序良俗に反すると判断された表現が含まれています」とでました。読み返してみました。見当をつけてその単語をこれから「精の虫」に改めてみます。それにしても「精」と「子」をつなげた表記がわいせつとは、理解不能です。では修正して発信ボタンをおしてみます。
(山本藤光:2013.04.15初稿、2016.03.05改稿)






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最終更新日  2017年11月15日 08時40分44秒
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