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カテゴリ:営業マン必読小説:どん底塾の3人
■小説「どん底塾の3人」038:予約受注を獲得する
亀さんがホワイトボードに、最後の実践研修のタイトルを書いている。右下がりの独特な文字だ。亀さんは文字を書くときに、小指を立てる。そんな亀さんを、加納百合子は冷ややかな視線で眺める。 ――今月の指令:日替わり弁当の予約受注。1人200食以上。 「今回は、予約受注をしてもらう。それも決められた地区でのみ、活動してもらう。日曜日から土曜日までの日替わり弁当の予約を、1人200食以上獲得すること。これが今度のゴールだ。1週間分の献立表は、いま印刷屋に依頼中だ。活用できるものは、そのパンフレットのみだ。海老原、おまえには前回との違いが分かるか?」 「前回は、どこででもいいから、100食を売ればよかった。今度は、定められた地区で、活動しなければならない。まったく違います」 「客が商品を買うのには、4つのパターンがある」 亀さんは、ホワイトボードに次のように書いた。 ――客が商品を買うとき 1:生活のため(衣食住) 2:自己実現あるいは自己満足のため(書籍、ブランド品) 3:衝動買い 4: 「加納に質問しよう。4つ目はなんだ?」 感謝という言葉が浮かんだ。加納はそこから、贈答品をイメージする。 「プレゼントのため、ですか?」 「なかなか鋭いじゃないか、おれ流の言葉でいえば、4番目は『(あかし)証のため』となる。感謝の証もそうだし、行った証もそうだ。旅先でペナントなどを買う類のことだが。では、日替わり弁当は何番目になる?」 「1番です」と加納。 「では、1番の商品の条件はなんだ?」 「安いことです」 「安ければ、どんなものでも買われるのか?」 「いいえ、安くてよいものだから、お客さんは買うのです」 「よし、加納のいう通りの弁当にしよう」 テーブルに、○○区△△台の地図が広げられる。不動産屋が使う、詳細な地図だった。定食屋「どん底」を中心にして、3色に塗り分けられている。 「おまえたちには、3つの色のどれかを担当してもらう。今回は弁当の販売ではない。あくまでも、いかに予約をもらうかが勝負だ。予約を受けた弁当は、午前10時から11時半までには必ず配達する。配達要員は、すでに手配済みだ。だから安心して、予約を取りまくってもらいたい」 加納はまだ、亀さんの意図が理解できない。弁当販売が自分の営業活動に、役に立つとは思えなかった。自分たちは、単に利用されているに過ぎないのではなかろうか。加納の胸中に、さまざまな疑問がわき起こる。 ジャンケンで、担当地区が決まった。大河内雄太は、赤色地区の担当となった。地図のコピーを受け取り、まずは法人を探す。法人を丸印で囲みながら、大河内はねらいをそこに絞り込む。 海老原浩二は、青色地区の担当となった。定食屋「どん底」の北部は、高級住宅地が立ち並ぶところだった。海老原は、団地を引きあてた加納をうらやましく思う。 今度ダメだったら、どん底塾を止めよう。加納百合子は、これが最後の機会だと考えた。担当地区はどこでもよかった。「待ち」ではなく、積極的に注文を取りに行く。それでダメなら諦めもつく。 ※ダントツ営業の知恵 1日に面談できる顧客の数は限られている。それゆえ、絞込み(ターゲティング)が重要になる。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2016年03月08日 02時53分33秒
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