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カテゴリ:営業マン必読小説:どん底塾の3人
▀小説「どん底塾の3人」047:公正な業績評価
「海老原は、上司から正当な評価を受けていると考えるか?」 唐突な質問だった。所長からは、相変わらず「ビリー」と呼ばれている。最近は業績が上がっているのに、差別用語は消えない。正当な評価を受けているとは、考えられなかった。 「正当な評価は、受けていません」 「そうだろう。正当な評価を受けていると答えられるのは、1000人に1人くらいだ。あとの999人は、不満タラタラ。それが評価の現実だ。ずっとトップを走ってきたおれが、管理職になったのは同期でいちばん最後だった。もちろん、不満だったさ。でも当時の上司は、おれが管理職には向いていないと評価した。 上司が替わって、待ちに待った課長のポストをもらった。部下は14名だった。チーム成績は、5年連続でトップ。鼻が高かったけど、くだんの上司が舞い戻ってきた。だから、会社を辞めた。自分をまっとうに評価をしてくれない上司とは、いっしょに仕事をしたくなかったからだ」 評価の話は、加納には耳の痛いものだった。いつも公正な、業績評価を考えていた。どんなに考えたところで、すべての人が納得してくれるものは作れない。 「人事部だった関係で、評価に関する苦情をよく受けました。いくら説明しても、納得してもらえません。最後は、公正な評価案を持ってきなさい、と開き直ったほどです」 「評価を量と質で考えると、営業職は量が明確だから、まだわかりやすい。しかし量だけでは、不具合が起きる。市場規模やさまざまな条件で、量が左右されるからだ。そこで、質の要素も取り入れる。こうなると、客観評価となり不平不満を誘発する。 評価なんて気にするな。不満を述べたところで、オリンピックの判定と同じだ。絶対にくつがえらない。いやなら、会社を辞める。方法はそれしかない。優秀な営業マンは、そんなことに時間を取らない。取るだけムダだ、と知っている」 「評価を甘んじて受けろ、ということですか?」と海老原。 「変わる可能性があるのなら、挑戦してみればいい。そうでなければ、受け入れるしかないだろう。おれが会社を辞めるとき、前の上司がきみこそ最高の営業リーダーだ、といってくれた。うれしかったよ。そして業績評価以外の、もうひとつの評価の存在を知ったんだ。給料には反映されないが、信頼という評価だ。人物評価といい換えてもいい」 ※加納百合子の日記 亀さんから「人物評価」ということを教わった。自分の成果が上がらないのは、亀さんの指導が悪いからだと思っていたことを反省している。 亀さんは何も教えない。教えるよりも、育てようとしてくれていた。だからいつも、「自分で考えろ」といっていたのだ。長いトンネルの向こうに、かすかに光が見えた。希望という名の光だ。 ※ダントツ営業の知恵 大切なのは自分自身を鍛え磨いた人にだけ与えられる、給料に反映されない「人物評価」である。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2016年04月07日 02時22分59秒
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