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2016年04月12日
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トルストイ『アンナ・カレーニナ』(全4巻、光文社古典新訳文庫、望月哲男訳)
トルストイ・アンナ・カレーニナ.jpg
青年将校ヴロンスキーと激しい恋に落ちた美貌の人妻アンナ。だが、夫カレーニンに二人の関係を正直に打ち明けてしまう。一方、地主貴族リョーヴィンのプロポーズを断った公爵令嬢キティは、ヴロンスキーに裏切られたことを知り、傷心のまま保養先のドイツに向かう。(「BOOK」データベースより)

◎扉の文章を念頭に

新訳が出たので再読しました。その間にビデオ(主演・キーラ・ナイトレイ)を観ていましたので、アンナの顔が瞼にちらついて離れませんでした。
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『アンナ・カレーニナ』(全4巻、光文社古典新訳文庫、望月哲男訳)は、主に寝床で読みつなぎました。約3カ月の長丁場でしたが、十分に堪能できました。

ビデオを観ていてよかったのは、社交界の華やかな場面がくっきりとイメージできる点でした。おそらく活字だけたどっても、たとえばダンスの場面など、鮮やかにイメージできなかったと思います。最近の電子書籍は、不明な単語を瞬時に検索できます。イメージしにくい場面が、映像で飛び出してくれればいいのにと思います。

それほど『アンナ・カレーニナ』には、きらびやかな舞台がたくさん登場します。ストーリーは意外に単純です。ただし第1巻の扉に書かれている文章を、ずっと記憶にとどめておかなければなりません。

――「復讐するは我にあり、我これを報いん」
(「ローマの信徒への手紙一二-一九」の主の言葉より)

その点についての解説があります。紹介させていただきます。

――彼女が「姦淫するなかれ」という神の掟に背いたという事実に変わりがない。最後には嫉妬やヴロンスキイへの不信によって絶望し、自らの命を絶つことになるのは、カレーニンや社交界が彼女を裁くのではなく、冒頭の題辞にもあるように神が裁くのである。(『世界文学101物語』高橋康也・編、新書館P121)

ただしまったく異なる見識もあるので、それを併記させていただきます。

――西洋近代の恋愛観の源流となったトゥルバドゥール(南欧の宮廷詩人)の詩学によれば、騎士が愛を捧げる相手は必ず既婚婦人でなければならず、結婚の枠の中に丸く収まるような愛は文学の対象とはならなかった。(沼野充義・文『世界文学のすすめ』岩波現代文庫P272)

沼野充義はこう書いたうえで、本書は並の不倫小説ではないと結びます。その理由として、

――ここには、ペテルブルグの社交界から、田舎での農作業にいたるまで、リアルなディテールに裏打ちされたロシア社会の見事なパノラマがあるし(その意味ではこれは「社会小説」である)、性愛や家庭生活の意味、そして人間の生と死に関するトルストイの苦しい思索の跡もくっきりと刻印されている(その意味では「粗相小説」と言えるだろう)。(同書P272)

と説明しています。

◎ストーリーをたどると

中沢けいの著作に『書評・時評・本の話』(河出書房新社)という分厚い一冊があります。なんと総ページ数720というものです。本書には索引がありませんので、私は自作の索引を作ったほどです。そのなかで中沢けいは、次のように書いています。

――翻訳物を読むことをそれまで苦手としていた。特にロシア文学は登場人物の名前が苦手であった。が、これを全巻読み通したことを境に翻訳を読む苦が減った。(同書P75)

私も同感です。本書は登場人物が多くなく、核となる何人かを覚えてしまえば、すいすいと先に進むことができます。物語を理解するために、登場人物を整理しておきます。

アンナ・カレーニナ:カレーニナ夫人、男の子の母親
カレーニナ:アンナの夫。ペテルブルグの大物官僚
オブロンスキー:アンナの兄
ドリー:オブロンスキーの妻
キティ:ドリーの妹

この間に入りこんでくるのが、ヴロンスキーという若い軍人です。彼はキティと婚約しています。キティはリョーヴィンという貴族から求愛を受けますが、断ります。リョーヴィンはアンナの兄(オブロンスキー)の友人です。

リョーヴィンは、トルストイ自身の仮身だといわれています。物語の半分ほども占めるリョーヴィンについて、斎藤孝は次のように書いています。

――リョーヴィンという、気の利かない、ものごとを深く考え込む質の男。(中略)彼は農村に住んでいて、都市と農村を行き来しつつ、さまざまな価値観を交錯させながら人生について考える。(斎藤孝『クライマックス名作案内2』亜紀書房P135)

物語はモスクワ駅から一気に動きはじめます。アンナは兄(オブロンスキー)の浮気事件解決のために、モスクワ駅に降り立ちます。そこでペテルブルグ近衛騎兵隊大尉・ヴロンスキーと、運命的な出会いをします。2人はペテルブルグの舞踏会で再会し、瞬く間に愛し合うようになります。2人の仲は社交界でも噂になります。

ある日競馬が催され、アンナは落馬するヴロンスキーを目の当たりにして、大いに取り乱します。夫(カレーニナ)は世間体をおもんばかって、そんなアンナをたしなめます。

キティはヴロンスキーにフラれて、傷心で療養のためにドイツへ行きます。そんなときアンナは、ヴロンスキーの子どもを身ごもります。そしてそのことを夫に告白し、離婚を求めます。
夫はそれを拒否します。アンナは家を出て、ヴロンスキーのもとに身を寄せます。2人は結婚したいのですが、アンナの離婚が成立しないために認められません。

同棲したのち、アンナは少しずつ違和感を覚えはじめます。結局アンナの選んだ最後の道は、列車への投身自殺でした。ここまでのストーリーは、多くの方がご存知のことと思います。

◎たくさんの書評

『アンナ・カレーニナ』については、たくさんの書評が発表されています。私の机上には26冊の文献が積んであります。

――『アンナ・カレニナ』が、大小説である所以は、そこに描かれたカレニナ夫人の心理が心理学者の端倪を許さぬが為ではない。(中略)そこに彼女が肉体をもって行動する一性格として見事に描かれているが為である。(小林秀雄『全文芸時評集・上巻』講談社文芸文庫P52)

『アンナ・カレニーナ』は、世間体を重んじて見ないふりを続ける夫と、激情にかられて不倫に走る妻という構図が柱です。不倫が露見して、アンナに仲裁を求めた兄のためにモスクワに降り立った彼女は、そこで同様の不倫の種を拾います。兄の家庭は大騒動が勃発していますが、アンナの不倫を夫は黙殺します。

私にはカレーニナ氏の存在が、強いインパクトで残りました。どこにでもいる小心で実直な男。本書の主人公をカレーニナ氏として読むと、また違った印象の物語になります。

最後に本書を読むときのルールについて触れた文章を紹介させていただきます。

――話の展開のスピード、という点から言えば、今の感覚からすると確かに遅い。描写はくどいし、人々の動きは、肉体的な動きも精神的な動きもずっとおっとりしている。けれどそれはつまり馬車の速度と車の速度の違いであり、手紙と電話の速度の違いであるだけで、圧縮すると同じになってしまうと思います。(池澤夏樹『世界文学を読みほどく』新潮選書P101-102)

世界的な大作は、現代社会においても色あせてはいません。今回新訳を再読してみて、やはり『アンナ・カレニーナ』はフローベール『ボヴァリー夫人』(新潮文庫、文庫で読む500+α推薦作)とともに、純愛小説の傑作だと思いました。
(山本藤光2016.04.11初稿、2017.11.25改稿)






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最終更新日  2017年11月25日 06時02分37秒
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