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時空の流離人(さすらいびと) (風と雲の郷本館)

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May 4, 2009
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 最近よく雇用の流動化ということを耳にする。要は、解雇規制を緩和すれば、労働需給は市場がうまく調整してくれて、社会的な効用が増大するというのだ。いわゆる経済の専門家と言われる人たちが声高に叫んでいるのだが、常識的にみてもそんなにうまくいくとは思えない。雇用の流動化の前提には、労働というものの質の差というものが考慮されていないことを指摘しておきたい。たとえば、昨日まではバターを作っていた人が、今日からは車を作るというようなことが、ほとんどコストも時間もかけずに可能だということだ。そのような非現実な仮定にも関わらずこれだけ世間を賑わせているのはどういうわけだろう。唱えている学者先生や評論家たちも、あなたたちはもう需要がないけど、明日から半導体組立の方に職があるので行きなさいと言われてできる自信があるのだろうか。

 この間から、「経済学の考え方」(宇沢弘文:岩波書店)という本を読んでいる。宇沢氏は、経済学の大御所で、現在日本人でノーベル経済学賞に最も近い人だとも言われているようだ。この本は、そのタイトルの通り、アダムスミス以来の経済学に流れる思想の変遷を解説したものである。

○「経済学の考え方」(宇沢弘文:岩波書店)
   

 実は、「市場がなんとかしてくれる」というのは「新古典派」という考え方で、その前提条件として色々なことが仮定されている。しかし、スティグリッツらが指摘したように、情報が非対称な場合などには、市場が必ずしも効率的に働くとは限らないし、市場が成立しない可能性もある。

 この本で紹介されている、「ソースティン・ヴェブレン」という経済学者の考えは特に興味深い。彼は、1904年に発表した「営利企業の理論」とという書物の中で、産業革命以来生産の大部分が機械を用いて行われるようになったことを重要視している。この機械を用いるために、生産は固定化して、市場の条件に合わせて自由に調整することができないというのだ。固定性が見られるのは、機械だけでなく熟練労働などの生産要素についても当てはまる。だから実質賃金と労働の限界雇用で労働市場が均衡するとうのは空想の世界に過ぎない。100年以上前の思想にもかかわらず、今でも立派に通用すると思うのであるが。

 また、1970年代に反ケインズ経済学として流行した「合理主義の経済学」、「マネタリズム」、「合理的期待形成仮説」、「サプライサイドの経済学」などは、「市場機構の果たす役割に対する宗教的帰依感をもつものである」とバッサリと切り捨てているのも面白い。それほどたくさん経済学関係の本を読んでいる訳ではないが、ここまで言いきっている本は少ないのでは思う。

 あまり、経済学になじみがない者にとっては、それほどすらすらと読めるという訳にはいかないが、経済学思想の流れを見渡すことができ、新書としては、かなり中身が濃いのではないかと思う。経済学が専門ではなくても興味がある人は一読しておいて損はないだろう。

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Last updated  May 4, 2009 10:02:01 AM
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