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この広い空のどこかで今日もいい日旅立ち

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Jun 16, 2006
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カテゴリ:映画
一度だけの面白さではもったいない。真に見どころのある映画は繰り返して見るとまた発見が在る。
映画の魅惑はとても一様ではない。二度と見たくない映画に遭遇すると「時間と金、返せ!」だが、再び見たくなればこれはDVDの発売を待って、座右の映画として時間もお金も賛辞とともに献上する。この差は大きく広く深い。
一度目、内容以上に映画のプロたちが結集したその様相に眼を瞠り、その仕事ぶりそのものに堪能してしまう。二度目は、おそらくその細部をいま少し明確にしたいと思う。「インサイド・マン」はそんな種類に属する仕上がりの映画だ。
キャリアを磨き、押しも押されもせぬその技量が、ひとつまたひとつという具合に重ねられていき、そのコラボレーションが成果を生む以前に、その丁々発止の展開が興趣をいや増す。この映画の場合、それはたとえばクライヴ・オーウェン、デンゼル・ワシントン、ジョディ・フォスター、クリストファー・プラマーから脇役の隅々までの充実によるアンサンブルの魅惑だ。
役者というものはその役だけでその演技を輝かせているのではなく、その自らのキャリアの光背を持っても後押しされているものだと気づく。むろんそれは自らが誇るべくものである出自でもあるが、アーサー王伝説から遠く歩いてきた充実のオーウェン、単なる善意の人とは言えない振幅でその力量がいや増すデンゼル、それこそキャリア・ウーマンを演じて歩くその姿だけで、もう適任と感じさせる説得の莞爾たるジョディ、「サウンド・オブ・ミュージック」のナチスと対峙したあのロマンス・グレイが、そのナチスを利用した金脈の頂点にいる役柄を演じて貫禄のクリストファー・プラマー。その幾星霜こそがまた多くの重量を携えてドラマの緊迫を呼ぶ。
そしてニューヨーク派といってもいい作風のスパイク・リーの目線は、人種のるつぼのその相互の視線を闊達に浮かび上がらせ、刑事もの映画の思い出(「狼たちの午後」「セルピコ」)をも客演させ、さまざまな利害や思惑を交錯させながら、いよいよニューヨークそのものを情景以上のものに抽出させていく。
ヘタな映画はいつも画面に隙間風が吹く。隙間風を埋めるが如く画面を重ねる質より量の長時間映画は願い下げとなるのだが、近頃スタンダードはほぼ2時間。その2時間をしっかり模範答案として提出したような構成と画面の緊密度。そこには映画の達意と輝度が何によってもたらされているかを改めて気づかせるものに充ちてもいるのだ。
組織などに手を差し伸べられることもない腕っこきたちが、ひとたび結集してその力量を満開させればこの華盛り、まこと映画の魅惑に、嵌るべくしてハマれる映画である。





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Last updated  Jun 16, 2006 07:20:41 AM
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