海賊八幡船・・・(15)
俺は海に来てよかったのか浜辺で焚火を囲んでの歌と踊りの宴会が開かれています。鹿門と黒白斎は少し離れた岩場にいます。海に向かって佇む鹿門に黒白斎が話かけますと、鹿門は黒白斎のほうを向きます。黒白斎「若、お父君丹後守様は、この島によくお立ち寄りになりましたぞ。この先 の泉で月明かりの夜など、笛を吹いておられたものじゃ」鹿門「爺、丹後守という人は、どんな人だ」黒白斎「・・・ようお聞きくださいました。爺はそのお言葉をどんなに待っており ましたか。・・・今そうして立っていられる若のお姿は、お父君に生き写 し、勇ましく、お優しいお心根まで、そのままでございます。・・・あな た様のお母上様は、幼いあなた様を抱いて、めくら船におわしました」 鹿門「お二人共、確かに右衛門大夫に殺されたのか」黒白斎「・・・・はい・・・」そのことを聞き、鹿門は海のほうを向くと、 鹿門「右衛門太夫が、めくら船に乗り現われたとき、俺は両親の仇を討つというよ り、奴らの非道ぶりを目の当たりに見て思わず戦った。・・・堺の船火事の 中死んでいった父、あの無残な死にかたをした父を、一日とて忘れたことは ない。・・・俺はめくら船に乗った。・・・小静を探すために船に乗った。 ・・・だが、この長い航海の間に、いつの間にか俺はめくら船、いや、八幡 船の男になっていた」黒白斎「若・・・」鹿門「・・・海が呼ぶ。・・・丹後守という父が俺を呼んでいるのだ」 黒白斎はそれを聞き、うんうんというように首を縦に、鹿門が黒白斎のほうを向き訊ねます。鹿門「爺、俺は海に来てよかったのか」黒白斎「よかったですとも、よかったですとも。そのお言葉で、道休もうかばれま しょう。亡き丹後守様も、どんなにお喜びのことか・・・」海の彼方に目をやる鹿門の表情からは、迷いが消え晴れやかでした。 続きます。🎞️『海賊八幡船』前回までの投稿掲載分は、ページ内リンクできるようにしてみました。下記のそれぞれをクリックしてご購読することができます。海賊八幡船・・・(14)海賊八幡船・・・(13)海賊八幡船・・・(12)海賊八幡船・・・(11)海賊八幡船・・・(10)海賊八幡船・・・(9)海賊八幡船・・・(8)海賊八幡船・・・(7)海賊八幡船・・・(6)海賊八幡船・・・(5)海賊八幡船・・・(4)海賊八幡船・・・(3)海賊八幡船・・・(2)海賊八幡船・・・(1)