Stella di Napoli:Joyce DiDonato
最近よく聞くようになった、ジョイス・ディドナートの最新作を聴く。と言っても聴き始めたのはだいぶ前のことで、ブログに書くのに相当時間がかかってしまった。最近、なかなか音楽について書けなくなっている。看板に偽りありというやつで、もうそろそろ潮時なのかもしれない。こう書くと、ではそれを読んでいる方(貴方のことです)は一体なんなんだと思われるだろう。すまぬすまぬというしかない。「ナポリのステッラ」と題されたこのアルバムは、ベルカント・オペラのアリアを集めている。世界初録音が3曲もあるという意欲的なレコーディングだ。ところで、数年前からベルカント・オペラに耐性が出来たのか気になったアルバムは聴いている。以前だと陳腐な旋律が出てきた時には、その時点で聴くのをやめたくなったものだが、最近はいい曲が数曲あれば良いという鷹揚?な気持ちになってきた。考え方を変えたのではないが、こだわりがなくなったのかもしれない。それに、相変わらず知らない曲を聴きたいという欲求だけは旺盛なのも一因かもしれない。大分蛇足が長くなったが、このアルバムにはロッシーニ、ベルリーニ、ドニゼッティという有名な作曲家の他に、カラファ、パッチー二、ヴァレンティー二、メルカンダンテという私(だけ?)の知らない作曲家も含まれている。気に入ったのは、ベルリーニの『アデルソンとサルヴィーニ』からの「暗い雲の後に」以前ガランチャのアルバムでその美しさを知った曲だ。ディドナートの歌唱はガランチャの歌唱に劣らない素晴らしいものだ。同じベルリーニの「キャプレット家とモンテッキ」第二幕のアリア「君だけだ おお 僕のジュリエッタ… 天に昇り行く 美しい魂よ」も良かった。ドニゼッティの「マリア・ストアルダ」第三幕からの有名なアリア「 」の勇壮さもいい。パッチー二の『サッフォ』第三幕からの一場面ではテノールも加わり、その劇的な展開がたまらなくいい。14分とかなり長く、曲の良さが十分感じられる。機会があれば全曲を聴きたいほどだ。お得意のコロラチューラの技巧もロッシーニの『ゼルミーラ』からのアリア「王座にお戻りください」で楽しませてくれる。 ベルカント・オペラはバックが貧弱で、そのバックが上手くないとますます貧弱に聞こえるものだが、今回の リッカルド・ミナージ指揮のリヨン国立歌劇場管弦楽団はまずまずのサウンドでディドナートの足を引っ張ることもなくて良かった。合唱が入っていて劇場の雰囲気が増し、興奮度がアップする。このベルカント・オペラ、伴奏のハーモニーを豪華にするというのはどうだろうか。一般にシューマンに代表されるオーケストレーションが上手くない作曲家の編曲が試みられることは少なくないが、ベルカント・オペラでそれが試みられたとは聞いたことがない。腕のいい作曲家が編曲したら、曲の良さがアップして、もっと聞かれる機会が多くなると思う。ベルカント・オペラはゴツゴツした肌触りの曲が多く、それは美しい曲でも変わらない。これが柔らかな肌触りになると随分と違ったものになると思う。誰かやってくれないだろうか。Stella di Napoli:Joyce DiDonato(ERATO 08256 463656 2 3)1.Pacini:Stella di Napoli, Part I: "Ove t'aggiri, o barbaro" (Stella, Marta)2.Bellini:Adelson e Salvini, Act 1: "Dopo l'oscuro nembo" (Nelly)3.Carafa:Le nozze di Lammermoor, Act 2: "L'amica ancor non torna... Oh, di sorte crudel" (Lucia)4.Rossini:Zelmira, Act 2: "Riedi al soglio" (Zelmira, Polidoro, Ilo)5.Mercadante:La vestale, Act 2: "Se fino al cielo ascendere" (Giunia)6.Dobnizetti:Elisabetta al castello di Kenilworth, Act 3: "Par che mi dica ancora" (Amelia)7.Bellini:I Capuleti e i Montecchi, Act 2: "Tu sola, o mia Giulietta... Deh! tu, bell'anima" (Romeo)8.Valentini:Il sonnambulo, Act 1: "Lasciami... Se il mar sommesso mormora" (Adele, Sofia)9.Donizetti:Maria Stuarda, Act 3: "Io vi rivedo alfin... Deh! Tu di un'umile preghiera" (Maria)10.Pacini:Saffo, Act 3: "Flutto che muggi... Teco dall'are pronube... L'ama ognor qual io l'amai" (Saffo, Faone, Climene, Alcandro)World Premire recording:1,3,8Joyce Didnato(ms)Orchestre et Choeur del'Oper National de LyonRiccardo Minasi(conductor)Recorded Opera de Lyon,17-24 October 2013