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「健康」が至上命題となっている現今の世の中は、医者を中心にいくつかの宗教のような考え方がある。「病気にならない生き方」の新谷弘実先生や「体をあたためればすべての病気がなおる」と主張し断食サナトリウムを経営する石原結実先生などそれぞれに強烈な信者がいて、それぞれの聖書ともいうべき書物を読み漁っている。
「免疫革命」で有名なな安保徹先生の著書は私もいくつか読んでいる。 月刊「現代」8月号に「還暦から始めるアンチエイジング」というインタビュー記事があったので買ってみた。 60歳を迎えた安保先生は仲間の医師から「最近ちょっと皮膚が汚くなってしまったんじゃないか」と指摘を受ける。「健康な生活を説く書物の執筆に忙殺され、結果、自らの免疫力を低下させてしまったのですから、こんあ皮肉な話はありません」。 安保先生の自己診断は「執筆に追われ、イライラも募り、他人に健康を説きながら自身の健康を顧みる余裕がなかった。相当に無理のかかった体になっていたのでしょう」だった。 毎日15分間、上半身を鍛える運動を続け、免疫力を活性化させた結果、首周りや顔からは、一切のシミが消えたそうである。 この正直な文章を読んで読んで吹き出しそうになった。 これに似た話を思い出した。 「知的生産の技術」という戦後の岩波新書で最近まで一番よく読まれた本を書いた梅棹忠夫先生は意外なことに遅筆で有名である。書いたものを読むとやさしい言葉で目からうろこが落ちるような見方を流れるように説明する。だから熱烈なファンが多い。 この梅棹先生から編集者が原稿を受け取るのは、なかなか難しいらしい。知的生産の技術研究会の八木哲郎会長からも、本の前書きを頼んでも「桜の咲く季節には、、、」といわれて春に訪ねると、「紅葉がきれいになったら、、、」といわれて途方にくれたという思い出話を聞いたことがある。 この梅棹先生のエッセイを読んでいたら、なかなか原稿を書いてくれない先生に、ある編集者から「こういう本がありますよ。参考にされたらいかがですか」という手紙とともに「知的生産の技術」が同封されていて、驚くと同時に申しわけないと反省したという文章があった。 梅棹先生の文章のうまさと編集者のユーモアのある原稿催促の方法にどちらもさすがだと感じたことがある。 私にも思い当たる節もあるが、著者は「こうしたらいいい」ということを本に書いてるのであって、「自分はこうしている」と書いてあるのではないということだろうか。 読者としても、こいうこともあるということを知っておいた方がいいかもしれない。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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