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カテゴリ:邦画
これまで何度か映画化されてきた盲目の居合いの達人・座頭市を、ビートたけしこと北野武が再度リメーク。 座頭市というと今は亡き名優勝新太郎の代表的な作品シリーズだが、元は子母澤寛の短編に登場していたキャラクター。 粗筋 ある宿場町に、訳ありの三組がやってきた。 一人は金髪で朱塗りの杖を持つ盲目の居合いの達人・座頭市。 もう一組は浪人の服部源之助とその妻おしの。殿の師範代という身分を捨てた服部は、病気を患う妻の為に用心棒の職を探していた。 更にもう一組、旅芸者のおきぬとおせいの姉妹。二人の三味線には人を殺める為の仕掛けが施されていた。 三組は、町を仕切るヤクザの親分・銀蔵と大店の主人・扇屋を介して交錯。壮絶な闘いが幕を開ける……。 感想 本作は、暴力に塗れた典型的な北野武作品。 見所は、幾度となく繰り返される殺陣。 一般の時代劇ではあまり描かれない血飛沫が、本作ではCGによってリアル(リアルより説得力あるかも)に描かれている。 血飛沫があらゆる方向に飛ぶ模様を描きたい為か、「ここまで人を殺すシーンを導入していいのか?」と思いたくなるほど人がバタバタ斬られていく。 最初は「凄い迫力あるシーンだな」と感心するのだが、こう何度も見せられると感動が薄れる。 何事も節度が必要らしい。 本作品をきっかけか、アクションシーンで血飛沫が遠慮なく飛び散る様子を描く映画が多くなったような。 殺陣がメインの映画なので、殺陣に至るまでの経緯は単なるフィラーというか、詰め物。 大して重要ではない。 登場人物の過去が描かれたりして入るものの、飛ばしてみたところで支障はないのである。 そんなこともあり、どの登場人物にも大して感情移入できない。 主人公を含め、登場人物は単なる「顔」で、容姿や性別で辛うじて識別できるに留まる。一部の登場人物は、それすらもままにならないが。 ストーリー的にはどんでん返しがいくつか用意されている: ・町を仕切る黒幕は、実は座頭市が幾度と通っていた酒屋の頼りない使用人(無論、使用人の振りをしていただけ)で、姉妹の敵でもあった。 ・座頭市は実は盲目ではない。 ……ただ、こうしたどんでん返しも、間延びした感のあるストーリーのお陰で、明らかにされても「あ、そうかい」もしくは「演じている役者の顔触れから何となく読めた」くらいにしか感じない。 本作は時代劇だが、時代考証はあえて避けたらしい。 主人公の座頭市(北野武)はなぜか金髪。 最終場面にはタップダンスが出て来る。 この面でも、本作は殺陣を見せる為だけのものだと分かる。 こうした演出を、一部の人は「北野監督の非凡なセンス」として賞賛しているが……。個人的には目障りに感じた。ギャップが激し過ぎるのである。 本作の中心となる殺陣だが……。 ほぼ全ての殺陣は座頭市を相手にしたものか、服部を相手にしたもの。 この二人は圧倒的に強いので、全ての相手は雑魚。一瞬の間に倒されていく。 座頭市が危機に陥ることはないし、服部も危機に陥ることはない。 ラスト辺りで座頭市と服部はようやく直接対決する。 いずれも一人で数十の剣客を切り捨てられる腕を持つ。 壮絶な戦いになると思いきや……。 本作は、座頭市が主人公。 主人公が敗北したら意味がないので、服部は必然的に死ななければならない。 座頭市は常に圧倒的に強くなければならないキャラ。 それは、服部を相手にした場合も例外ではない。 したがって、座頭市を相手にした服部は、これまでの雑魚と同様、あっさりと倒される。これまでの強さが嘘だったかのように。服部を最終的にはあっさり倒されるキャラにしてしまうのだったら、途中まで無敵なキャラにしなければ良かったのに、と思う。 この作品は、北野武が監督・制作にも携わっている。 したがって、北野武の事務所(オフィス北野)に所属する芸人が多数登場。 所属芸人の食い扶持の問題もあるので、登場させざるを得ないのかも知れないが……。 芸人は芸人。 俳優ではない。 真面目なのかふざけているのか分からない演技(と演出)で、シリアスなのかコメディなのか、焦点がぶれてしまっている。 映画からは芸人はなるべく排除してほしい。 ただ、そうなると元は芸人の北野武本人も登場できなくなってしまうが。 北野武の作品は、自己満足というか、自慰的なものが多い。 自分をいかに格好よく演出するかに最も多くの努力を注ぐ。 本作もその例外ではなく、北野武というタレントの大ファンであるならともかく、そうでない者にとって、面白いのか面白くないのかよく分からない。 他の作品より娯楽性を高めてはいるが。 関連商品: お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2015.07.03 18:36:31
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