狐の生態

狐の生態


狐の種類と分布

 狐はイヌ科の獣で、ヨーロッパ・アジア・北アフリカの中央部に広く分布しています。
日本では全土におよんでいます。
 キツネ属は十種ほど知られていますが、その中でアカギツネの分布が極めて広く、日本の狐はこのアカギツネの一地方型で、
本州・四国・九州地方にいるものは、ホンドギツネとよばれ、北海道に生息するやや大型のものは、キタキツネとよばれています。
 アカギツネの体色は、いわゆる「キツネイロ」で、体の表面は黄褐色、または赤褐色、下面は白く、四肢に小黒斑があります。


狐の生息地

 キツネは地理的に広く分布すると同時に、その生息地の環境も様々で、
農村・農耕村落・草原・灌木林(雑木林)・森など、種々の環境に適用しています。
 本来は、森林と草原の接する地点を中心に生息する動物だったのです。
 巣としては、丘陵地の斜面や、林の中の穴、岩の割れ目などを利用するが、
農家の廃屋、古い倉庫、廃車など人間の使ったものも狐はよく利用しています。
 狐自身が穴を掘る場合、それは丘陵や段丘斜面が圧倒的に多いです。


狐の感覚

 狐は優れた聴覚、視覚、嗅覚の持ち主です。とりわけ聴覚に優れていて、人間には聞き取れない二万サイクル以上の高い音を聴くことが出来ます。
また、無風の静かな林内では、十数メートルも離れたところから落ちる落葉の音にも反応を示すことが観察されています。
この優れた感覚は、主食の野鼠を取るのにきわめて有効なのです。


狐の食性

 狐の主食は動物質で、夜出て鼠、兎、雉、鴨、蛙、昆虫などを捕食しますが、
季節によっては植物質の食べ物にも大きく依存し、食性の幅はきわめて広いです。


狐の魅力

 狐は数多くの獣の中でも際立って美しく、しなやかな姿の持ち主です。
その尾は豊麗で、その長さは胴体の四分の三以上にも及びますが、全体のバランスを壊すほどのものでもありません。
 目も澄んでいて大きく、鼻筋は細く通って知的であり、人になぞらえれば細面の美女を思わせます。
この様な顔つきや姿から受けるものは一種の気品です。
 狐は、人と不離不即の関係を保って暮らしてきたのです。
人は折にふれて狐の鳴声を耳にし、それを予兆として受け取ったことも多いのです。
 しかし、人にとって大きな関心は狐の恋の激しさではないでしょうか。
厳寒期に狐は発情し、その期間中メスはことに絶食に近い状態になり、身ごもれば非常に食欲を増し、夜行性の狐が昼間も姿を見せるのです。
 三月から四月にかけて子狐が誕生します。
一腹の子は、三~四匹で、生後二ヶ月、巣穴から出て来て晩春の野原に遊ぶ子狐の愛くるしさに人は心を奪われるのです。
 七月になると母狐は子狐を実習旅行に連れ出します。
独立の為の訓練をし、この旅行が終わると母子の関係は変わり、母は子を本気で強く咬むといいます。
この「子別れの儀式」が、また人に限りない哀愁を感じさせるのです。
 人の目からみれば「畜生ながら健気なこと」とされ、心情に迫ってくるものとして受け止められたのです。


狐に対する嫌悪

 嫌悪される一つにその顔つきがあります。
魅力でもありますが、嫌悪の対象ともなったのです。
大きな目と小さな顔、知的な三角形の顔かたちは、見方を変えれば優雅というよりも、むしろ狡智を感じさせるものでした。
寓話の中で狐がいつも悪賢いものとされている理由が、この顔つきと感覚の鋭敏さによっています。
 そしてもう一つは、狐の雑食性からきています。
食餌の中には、動物質も植物質も含まれます。
また生餌ばかりでなく死肉も好んで食べる習性があり、その中には狐仲間の死肉を食べること、つまり共食いすることが報告されています。
 人間が嫌悪する最もな理由は、狐が死肉を漁るこの習性と、嗅覚の鋭さが相まって、狐が「墓掘り」をすることです。
 また、狐はきわめて賢く、頭の上に雑草をのせ、体を水中に沈めたまま、鴨の群れに近づいて捕らえたり、兎の傍で苦しそうに転がりまわり、
兎が好奇心を起こして近寄ると、不意に飛びついて捕らえたりすることから、その意味で『騙す』というのは嘘ではありません。
狐が化けるとか、人をばかすというのも、こうした狐の怜悧さに因るものです。
狐が美女に化ける時、川藻をとって頭にかぶるなどという伝承は、明らかにこのような生態に負っています。


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