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碁法の谷の庵にて

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2007年10月08日
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カテゴリ:カテゴリ未分類
 昨日の「たかじんのそこまで言って委員会」テキスト起こしで見ましたが・・・はっきりいってげんなりです。今枝弁護士はこの番組に出ようかと考えながらやめろと言われまくって(私もやめろといった人間の一人)ていたらしいですが、出ないで正解だったとしか思えません。
 なお、このテキスト起こしの内容が誤りであるということなら、どんどん指摘をお願いします。



 橋下徹氏談だから、再審請求出せば死刑が止まるけれども、実際にね、裁判所が一生懸命吟味して再審開始決定が出て、開始決定がでてさらに無罪になるかどうかは別ですよね、開始決定が出るすら1%しかない、じゃあのこり99%は弁護士がね、無能な弁護士が余計な手続きをやってるってことじゃないですか。



 またまたまた橋下氏の登場です。しかもまたしてもご丁寧に嘘を言っているのか誤解を招くことを・・・。花田紀凱氏も間違えていってますが、橋下氏は弁護士でしょうに、どうしてこんなことも調べないで発言するんでしょうか。あるいは、あれほど説明責任を主張しながら誤解を招くことを言うのでしょうかね。


 というのも、再審請求を出したって死刑は「止めることはできません」。

 再審という手続きは、「もう一度裁判を始めてください」という請求をした上で、では始めましょうという裁判所の決定をもらってもう一度裁判を始めるという、言わば2段構えになっています。
 そして、では始めましょうという決定が取れるという第一段階を突破できるどうかが開かずの門とさえ呼ばれた再審の関門です。その率が少ないかどうかは難しいところです。



 さて、刑事訴訟法442条は、再審請求をしただけでは、刑の執行停止の効力を認めていません。死刑も除外していませんから当然同様です。1999年には、再審請求の4日後に死刑が執行された例もあり、死刑制度にかなり強硬に反対している社民党の福島現党首らが法務委員会でこの点を追及していますが、それ自体が直ちに不適法だと追及されているわけではありません。
 死刑の執行を指揮する法務大臣の署名は6ヶ月以内という刑事訴訟法475条では、6ヶ月の期間が再審請求の間は伸ばしてよいと規定していますが、別に6ヶ月待たなければいけないという規定でもありませんから、再審請求の最中に死刑の執行をすることは全然違法ではないことになるのです。

 再審請求をして、再審を受け付けます、もう一度裁判しましょうという決定(開かずの門がやっと開いた状態)が出てもまだダメで、さらに裁判所から執行停止の決定をもらって(実際には再審開始の決定と同時に刑の執行停止の決定を出すようですが)、やっと死刑の執行は裁判が終わるまではされない保証が出るのです。あるいは、所轄の検察庁の検察官から自主的に刑の執行を止めるといってもらわなければなりません。


 こうしてみれば分かるとおり、再審をしているから死刑の執行ができないというのは、別に弁護士が法を逆手にとっているわけではありません。請求中の死刑を避けるというような実務が定着しているとしても、それは行政が勝手に気を回しているだけに過ぎません。つまりは行政の責任であり、国民が法務大臣の任命責任を議院内閣制の元で追及することで解決しなければならない事柄なのです。

 それとも、橋下氏はそんな役にもたたない請求を持ち込んで、裁判所のキャパを埋めるんじゃない、とでも言いたいのでしょうか。これ自体ものすごい善解だと思いますが、私の知る限りそういう観点を持っている人は過去に一人もいませんし、再審請求など全体から見れば微々たる物です。


 ついでに、・・・無能な弁護士が余計な手続きというのは、またしても弁護人の仕事を理解しているのかどうか疑わしい発言と言うべきでしょう。再審請求者から依頼を受けた弁護士は、被告人に最大限有利な見地から再審事由を探して主張していくのが当然と言えるでしょう。彼が有能で、再審理由なんかないから自分は再審請求しないよ、さようならなんていったら確実に債務不履行になるでしょう。再審請求の場合といえど、弁護をする立場になったならば当然立たされる立場は同じというべきでしょう。




 ついでにもう一つ、別のところにツッコミを入れておきましょう。今なお懲戒請求テンプレートを適用しているサイトです。
 彼の論理展開はこうです。





ところで、
「弁護士に懲戒請求をすると、損害賠償をしなければいけなくなるぞ」
という威しが、ネット上で、チラホラ見受けられますが、 本当でしょうか?
その根拠として挙げられている判例を、きちんと 読んでみましょう。
良く見かける最高裁の判例は: http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070424155439.pdf
で、この中から、

他方、懲戒請求を受けた弁護士は、根拠のない請求により名誉、信用等を不当に侵害されるおそれがあり、 また、その弁明を余儀なくされる負担を負うことになる。 そして、同項が、請求者に対し恣意的な請求を許容したり、広く免責を与えたりする趣旨の規定でないことは明らかであるから、 同項に基づく請求をする者は、懲戒請求を受ける対象者の利益が不当に侵害されることがないように、 対象者に懲戒事由があることを事実上及び法律上裏付ける相当な根拠について調査、検討をすべき義務を負うものというべきである。 そうすると、同項に基づく懲戒請求が事実上又は法律上の根拠を欠く場合において、 請求者が、そのことを知りながら又は通常人であれば普通の注意を払うことによりそのことを知り得たのに、 あえて懲戒を請求するなど、 懲戒請求が弁護士懲戒制度の趣旨目的に照らし相当性を欠くと認められるときには、 違法な懲戒請求として不法行為を構成すると解するのが相当である。

という部分が恣意的に抜き出されて引用されていますが、 この判例は、単に 訴訟に負けた弁護士が悔し紛れに相手弁護士に対して 嫌がらせを目的として懲戒請求をかけたというもので、 今回のこの話とは、状況が異なります。 では、普通の懲戒請求の場合はどうなのか、というと、 この前に、以下のようなことが述べられています。

弁護士の懲戒請求は、請求者において懲戒事由が存在しないことを認識し、 あるいは容易に認識することができたにもかかわらず、当該弁護士の名誉を毀損したり、 その業務を妨害する意図に基づいてされたものであるなど、当該懲戒請求に、 弁護士の懲戒請求制度の趣旨を逸脱し、懲戒請求権の濫用と認められるなどの 特段の事情が認められる限りにおいて、違法性を帯び、不法行為を構成する場合があり得るが、 上記のような特段の事情が認められない限り、不法行為を構成するとはいえないと解するのが相当である。

というわけで、
・懲戒事由がちゃんとあると考えている
・業務妨害とか名誉毀損等を意図してない
のであれば、懲戒請求しても 不法行為を構成するとはいえないのです。






 おそらく彼は判決文を十分に読まなかったのでしょう。判決文で何か自分に有利に拾えるところはないか・・・と思ってみていたらここに飛びついて、全体の流れを把握していなかったのでしょうね。

 最高裁の判決文の流れはこうです。

一、事実はこうでした
二、この事実に基づいて、高裁はこういう判断基準を立ててこういう結論にしました
三、でもこの判断は間違っています
四、最高裁の判断基準はこうで、それによると結論はこうなります

 もうお分かりでしょう。彼が自説の根拠としているのは二の部分、つまり最高裁が使い物にならないとした高裁判決なのです。
 四の部分、つまり実質的な最高裁の判示はすでにこちらで展開したとおりです。

 判決文はきちんと読まないと、大変なことになります。

 





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最終更新日  2007年10月08日 14時18分16秒
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