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照千一隅(保守の精神)

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「照千一隅(しょうせんいちぐう)」(一隅を守り、千里を照らす)は伝教大師・最澄の言葉。本を読み、考えたことをこのブログに書いて参ります。ご意見、ご感想など御座いましたら是非お寄せください。

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2022.07.28
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テーマ:憲法議論(165)
カテゴリ:憲法

《この言葉(=無条件降伏)、この事実が戦後に新しく日本にもちこまれ、根づいた価値の、いわば「守護神」、あの、サリンジャーの小説にいう「ライ麦畑の守護神」に似たものとして語られ、受けとめられてきたのはそのためである》(加藤典洋『アメリカの影』(講談社学術文庫)、p. 176)

 主人公ホールデンは、高校を退学になったばかりの16歳。妹フィービーに将来の夢を訊かれ、「子供たちを守る捕手になりたい」と不思議な答えを返す。

"Anyway, I keep picturing all these little kids playing some game in this big field of rye and all. Thousands of little kids, and nobody's around--nobody big, I mean--except me. And I'm standing on the edge of some crazy cliff. What I have to do, I have to catch everybody if they start to go over the cliff--I mean if they're running and they don't look where they're going I have to come out from somewhere and catch them. That's all I'd do all day. I'd just be the catcher in the rye and all. I know it's crazy, but that's the only thing I'd really like to be. I know it's crazy." -- J.D. Salinger, THE CATCHER IN THE RYE

「とにかく僕は、すべてこの小さな子供たちがこの大きなライ麦畑などで何かゲームをしているのをずっと想像しているんだ。何千人もの子供たち、そして周りには誰もいない――大きな人は誰もいないってこと――僕以外はね。そして僕はどこか危ない崖のふちに立っている。僕がしなければならないのは、もし彼らが崖を乗り越えようとしだしたら、誰であれ捕まえなければならない。つまり、もし彼らが走っていて、行く先が見えなかったら、僕はどこからか出てきて、彼らを捕まえなければならない。一日中それしかしなかった。ライ麦畑の捕手みたいなものさ。おかしいとは思うけど、本当になりたいものはそれしかない。馬鹿げてるって分かってはいるよ」―J・D・サリンジャー『ライ麦畑の捕手』

 さて、<無条件降伏>とは、この<ライ麦畑の捕手>のように、子供たちが道を踏み外すのを既(すんで)の所で捕まえ止める「安全装置」のようなものなのか。戦前の日本は道を踏み誤った。だから、今後は道を踏み誤らないように、<無条件降伏>によって西洋流の「処方箋」を施したということなのか。

 が、そもそもGHQは、親心よろしく日本を民主化しようとしたのではない。「降伏後に於ける米国の初期の対日方針」にあるように、

 日本カ再米國ノ脅威トナリ又八世界平和心安全ノ脅威トナルコ トナキ樣保證スルコト

詰まり、日本弱体化がその目的であった。「自由」「平等」「人権」「平和」は、日本を民主化するためのものというよりも西洋的価値観の一方的な押し付けであった。それは、明治期の「和魂洋才」のように、「西洋的なるもの」を日本に移植するのではなく、日本の文化伝統を否定するものであった。

 加藤氏も次の如く指摘する。

《しかし、このことは必ずしもこの守護神がその守護する価値を代表していることを、意味しない。時には、その守護神と守護されるもの達が、全く相反する価値を代表しているということもありうる。そして、「無条件降伏」という守護神についていえば、一見すれば明らかなように、それ自体の代表する価値とそれがまもろうとし、またもたらそうとする価値のあいだには、うずめようのない亀裂のあることを、指摘しなければならないのである》(加藤、同)






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Last updated  2022.07.28 21:00:08
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