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カテゴリ:制作現場
*ロケ2日目 10月12日(火) 5時起床。う~ん、眠い・・・・・・。 日本との時差は、プラス2時間。 「な~んだ、なんてことないじゃん」と思っていたのだが、この時間差は実にビミョ~。 飛行機の中でも、日本時間では午前3時ころに叩き起こされ、朝食のサービス。 え~、メシ? まだ食いたくないよぉ、と思いつつ、メシ食わざれば力なし、ムリヤリがばがば食ったら、着陸したあとで気持ちが悪くなってしまった。 午前5時だから、日本は3時かぁ。そう思うとまたまた眠い。 そんな目玉でバルコニーの外を見る。 --わぁ、海が見えるっ!! 青い色が目に痛い。 早朝とは思えん・・・・・・。 きのうは晴れたり曇ったりだけど、今日はお天気、期待できそうだ。 午前6時、ホテル出発。ぼくらがやってきたのと同じ便で着くタレントさんをお迎えに行く。 時間通り、無事到着。 今回の番組で主役&レポートをお願いしたのは、泉谷しげるさん。 --粗野で、ぶっきらぼう。だけど、どこか優しげで、 --あったかさを感じさせてくれる人がいいよね。 番組のイメージをほぼ決めて、じゃぁ、誰にやってもらおうかとディレクターのT氏と話しをし、こんな人物だったらいいなぁということになった。そのとき、頭にピンと浮かんだのが泉谷さんの顔。 おぉ、そりゃぁいい!!、ということになったものの、果たしてOKしてくれるかどうか。ローカル局の、地味なドキュメンタリー番組が、名のあるタレントを起用するのは、実際、とても難しい。 まず、予算が折り合わない。以前、某ローカル局で某有名女性タレントにレポーターをお願いしようとアプローチしたら、1泊2日で金100万円也のギャラを提示してきた。 1泊2日と言っても、ほぼ確実に夕方やってくるから、1日目は打ち合わせができれば御の字。2日目は遅くても最終便で東京へ戻るから、結局半日しか働かないことになる。 それで100万だぁ? ふざけんな!! そんな提示に乗っていたら、ローカルの仕事はおいしいと思われてしまう。 即刻、却下! 値踏みしたのかもしれないが、そんな、相手の腹を探るようなタレント(窓口はマネジャーだが)は、こちらから願い下げである。 しかし、「ふざけるな!!」という例がかなりな率にのぼるのも事実ではある。だから、泉谷さんが出演を受けてくれるのか?、ダメじゃないか?、どうせダメだろう・・・・・・・・だんだん意気消沈。 こら、アカン! ダメもとでT氏が泉谷さんの事務所に依頼の電話。すると、あっさり出演を快諾いただいた。 ギャラも上記の女性タレントとは段違い、(制作側にとって)良心的な額である。 驚いたのは、お願いをしたこちら側。 --え? え? OKだったの? ど、どうしよう・・・・・・・・・・・・・・。 てなもんである。オロオロ、情けない。 今の泉谷さんは俳優というイメージが強いけど、レポーター候補を考えたとき、ぼくの頭に浮かんだのは、ギターを抱えてジーンズが破れるほどにステージで暴れ回っていた泉谷さんの顔だった。 ぼく個人にとって泉谷さんは、やはりフォークシンガー。 デビューアルバムから3枚目くらいまでは、リアルタイムで買っていたし、『春夏秋冬』『黒いカバン』『春のからっ風』『眠れない夜』『白雪姫の毒リンゴ』『国旗はためく下に』などなど、ギターを手にしたころに弾いていた曲も多い。 --できれば、ニューカレドニアでギターを弾きつつ歌ってもらえないかなぁ。 出演を快諾してもらったとたん、欲求はデカくなる。 ディレクターのT氏が打診するも、これはさすがにNG。 “ミュージシャン”泉谷と“俳優”泉谷は、きちんと区別しておきたいのだとか。 いや、確かにそれは当然ですね。調子に乗りました。すみません。 前日もドラマのロケで午前様だったという泉谷さん。空港から出てきたときは、まだまだ夢見ごこちという感じ。まずはじっくりお休みいただきたいのだが、スケジュールがそれを許さない。 申し訳ないながら、仕事へ突入させていただきます。 まずは、『ニューカレドニア博物館』へ。資料の映像や研究員のインタビューは前日に取材済みなので、泉谷さんには展示されている先住民族「カナック」の伝統的な漁具を見つめつつ、感想をひとつふたつ、言ってもらうことに。 いちおう、台本らしきものはあるが、レポーター・泉谷の感じを大事にしたいので、どう反応するかは泉谷さんにお任せだ。 ライトがあたり、カメラが回ると、それまでほとんど眠っていた泉谷さんの目玉が輝き始めた。そして、ストーリーにピシャリと合った言葉を紡ぎ出す。ほとんど、ワンテイクでOKだ。 --オレは現場に立ちゃぁ、だいじょうぶなんだよ。心配すんなって。 ロケ車の中で、居眠りしつつムニャムニャ言っていた言葉は本当だった。 さすが、プロだなぁ。大感心!! 街角の小さな店が次のロケ先。 次の取材は、ニューカレドニアで最も大きい(と言っても、上記の写真で見る通りの店構えだけど)漁具店。ご主人の話によると、この店では、毎年、投網が800枚も売れるのだとか。投網がそんなに売れる店など、日本にはないだろう。ニューカレドニアでは投網が盛んなことがよくわかる。 投網を背景に店主と話す泉谷氏。 昼食に山盛りのサラダを食べた泉谷さんは、気合充実。お店のご主人から投網についての話を聞き出す。それも、いきなり本題に入るのではなく、遠まわしに相手の出方を見つつ、徐々に話を焦点に絞っていく。 取材が専門の局のディレクターでも、いきなり本題に入って相手を沈黙させたり、萎縮させたりすることがあるのに、うまいもんである。マネージャ氏は、レポーターはそんなにやったことはないと言っていたが、いやいや、やっぱただ者じゃないです。 ディレクターはライトも照らす。 泉谷さんと店のご主人との一連の話が終わると、店内の撮影。まずは、壁に吊り下げられている幾枚もの投網。サイズもいろいろだが、日本のものよりも小振りだ。 この投網、日本人がこの島にもたらしたのだろうか? 番組ではレポートの間をつなぐ、「インサート」と呼ばれるこうした撮影には時間がかかる。 スタッフはカメラマンとディレクターのふたりだけ。気分は次のシーンに飛んでいるディレクターのT氏、焦りながらも、壁の投網にライトをあてる。 T氏はカメラも回す。なんでもできなければ、ローカル局のディレクターは務まらないのだ。 ぼくはただ見てるだけ。申し訳ないなぁと思うのだが、みだりに手を出すとかえってジャマになる。 餅は餅屋、自粛自粛。 島一番の漁具店のご主人は、趣味で投網を打つという。 その投げ方は『細川流』なのか? 見せてもらうために海岸へ向かう。 昼間は陽射しが強かったのだが、いつの間にか曇天に。 垂れこめる雲。 まだ4時過ぎなのに、薄ら暗いし、吹く風が冷たい。 予想していた南の楽園『天国に一番近い島』のイメージとはかなり違う。 島があるのはオーストラリアとニュージーランドの間あたり。南半球なので、今が春から初夏に向かう季節。毎年、こんなもんなのかなぁと言うと、コーディネイターのY氏が、 --皆さんが来るまでは、ずっと晴天続きだったんですけどねぇ。 なぁるほど。台風に直撃された浦安ロケといい、このロケは天候にたたられる運命なのね。 嵐を呼ぶ男は誰じゃ!! 浜辺に着いたご主人、デモンストレーションをお願いすると、さっさと投網を素早くまとめ、ポイッと投げ捨てた。 「あらよっ」。 おんや? なんか妙だなぁ。 投網を“打って”いるという感じではない。ヒョイと放り投げている、そんな感じ。 泉谷さんとのやりとりを聞くと、「浜辺では魚が見えるから、その上に網をかぶせるだけだ」とのこと。確かにそれで魚を捕るには十分だ。 しかし、ご主人の投網は、まるで花火のように、華麗に大きく開く『細川流』の投網とは、とても言い難い。 日本人が伝えたとされる投網。そこに、求める『細川流』は、ありやなしや? 曇って明かりも薄れてきたので、浜辺の撮影できょうのロケはおしまい。 夜のシーンは予定してないので、いったんホテルに戻り、食事へと出かける。 きょうの夕食は、コーディネイターY氏おすすめのベトナム料理店『ミン・チョウ』。 移民が多いニューカレドニアは、日系人の他にもベトナム系やインドネシア系の人たちなどがいる。中心都市のヌメア市は、ガイドブックなどでは“プチ・フランス”といった書き方をされているが、街を歩く人たちは浅黒い肌のメラネシア系の人たちの方が多いし、レストランもフランス料理ばかりではなく、ベトナム料理や日本料理、イタリア料理など多岐に富んでいる。 が、しかし、イタリア料理は食べない方がいいというのは、いろんな人から聞いた。WHY? 『ミン・チョウ』では、ビールで乾杯のあと、「これを食わなきゃ、ベトナム料理の店に来た意味がねぇ!!」と泉谷さんおすすめの“鶏肉のフォー”をまず食す。 これがめちゃめちゃうまい!! 米の麺に鶏のスープがよくからみ、熱過ぎず、かといって冷めてるわけでもなく、なんとも心地よい温かさ。 はぁ~、疲れが飛んでいくぅ・・・・・・・・。 --な、うまいだろ?! 「フォー」を食わずになんのベトナム料理かよぉ! --今は日本でもインスタントがあるから、お前、帰ったら食えよ! 泉谷さん、ゴキゲン。楽しい人である。 夕暮れ。ホテルのプライベート・ビーチ(五つ星には、こんなもんもついている!)では、若者たちがパラセーリングを楽しんでいる。 海の水は、入れた手をヒュッとあげてしまう冷たさ。 本格的な夏は、まだまだこれからだ。 18:33 拉致された青年のお父さんが声明文を読み上げ始めた。 もう、見ていられない。 また、自己責任論がわいてくるのか。 今度は大手を振って、大通りのど真ん中を闊歩しそうだ。 自己の興味好奇心を抑えきれなかった若者の未熟を責める前に、 世界の中で自分たちの国がなにをしているのかを知る方が先だろう。 テロに屈せよ、いいかげん。 それで西側世界の孤児になってもいいさ。 早く帰ってきてください。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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