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カテゴリ:制作現場
*ロケ4日目 10月14日(木)--「その4」より続き。 「クニエ/海の宝石」と呼ばれるイル・デ・パンの海。 この美しい海で巻き網漁の様子を撮影したあと、S氏宅に戻る。 すると、伝統料理「ブーニャ」ができあがっていた! さぁ、食おう!! バナナの葉を開く。 縛っていたヤシの葉を切り、バナナの葉の袋を開く。ふわぁっと、ココナッツミルクの甘い香りが漂う。土をかぶせられ、熱い焼き石に1時間半ほど蒸された食材は、ぐちゃぐちゃ。一見、おいしそうには見えない。 が、ほろほろにほぐれた鶏肉にかじりついた泉谷さん、ひと言、 --うめぇじゃねぇか! 庭木の下で宴席開始。 撮影が終わって、ぼくらスタッフもご相伴に預かる。確かにおいしい。鶏肉やヤムイモ、バナナなどの食材の味がココナッツミルクの甘味でほどよく中和され、しつこくなく、いくらでも食べられる。 一番気に入ったのはヤムイモ。初めて食べたのだけど、ねばりがあって、ちょっとサトイモ風。しかし、“ワシはヤムイモや!”とも言うべき、しっかりとした、自身の味を主張している。これまで食べたことがない、が、これは自宅でも食べたい味だ。でも、家庭のガス台でこの味はちょっとムリかも。 イヌとネコもやってきた。 鶏肉をかじっていると、背中でなにやらフンフン鼻息が。振り返ると、S氏宅で飼っている(と思われる)イヌが「ねぇねぇ、ちょうだい」とシッポを振っていた。鶏肉をやろうと手でちぎっていると、ネコもスリスリ、やってきた。人懐っこいヤツらである。 おなかもいっぱいになったころ、S氏の息子がギターを持ってきた。コーディネイターのY氏が聞くと、S氏は島でも名高いフォークソング(たぶん『地元の歌』という意味だと思われる)の歌い手とのこと。 すると、泉谷さん、S氏のギターを手にしてポロリポロリとやりだした、そして、 --おい、チューニング、狂ってるぞ。 おぉ、さすがミュージシャン・泉谷しげる! しばし、調弦。そして始まったのは、なんと『春夏秋冬』! 30年以上前、LPレコードで何度も何度も聞いた愛聴曲。そして、ギターを弾き始めたころ、スリーフィンガーの練習をした曲。その想い出の曲を、南の島で、それもナマで聞けるとは思わなかった。 あぁ、大感激! ジ~ンとしていたら、S氏ご自慢の12弦ギターが登場。そのギターをジャーンと弾いた泉谷さん、 --おや? こっちはバッチリあってるじゃん。 すると、S氏、ニヤリと笑ってギターケースから調弦器を取り出した。 --なんだ、いいもん、持ってるじゃねぇか。 S氏が地元の歌を歌い出す。アドリブで合わせる泉谷さん。南の島の木陰で、思わぬ歌の共演だ。 ギターは自己流だというS氏。ツーフィンガーでスリーフィンガーを弾きこなすテクニックと、ひげもじゃの外見からは想像できない美声。なるほど、島で名高い歌い手というだけのことはある。 即興ジョイントライブ! ギターを取りかえて。 「ブーニャ」を作ってもらうこと、そして、漁の様子を撮影させていただくことは、コーディネイターのY氏を通じてS氏側にお願いしていたこと。しかし、ギターの登場以降は、まったく予定外の出来事だ。こんなことがあるから、現場は楽しい。 短いジョイントライブを終え、S氏宅をあとにして海辺へ移動。 白い砂、澄んだ海・・・・・・。 イル・デ・パン島のビーチは、世界でも有数のきめの細かいパウダーサンド。特にこの入り江の砂は美しいことで名高い。砂浜の向こうに見える、スッと伸びた木が印象的。「南洋杉」だ。「イル・デ・パン」の「パン/Pins」とは、フランス語で「松の木」の意味。この島を訪れたキャプテン・クックが、まっすぐに伸びたこの南洋杉を松の木と間違えて命名したと言われている。 「イル・デ・パン」、日本語にすると「松島」だ。名前が同じということで、「イル・デ・パン」は、日本の名勝「松島」と姉妹都市関係にある。 --でも、交流はほとんどないみたいなんですよね。 と、コーディネイターのY氏。イル・デ・パン側は積極的なのだけど、松島の方はどうも乗り気ではないのだそうだ。 泳ぐ人もちらほら。 美しいこの浜辺。しかし、最近、日本人の女性が殺害された場所でもある。上の写真の岩陰で、旅をしていた若い日本人女性の死体が発見されたのだ。ニューカレドニアの治安は良いとされている。心地よい自然と温かい人々に心は開放的になる。だが、ひとり旅には、やはり注意が必要だ。 この浜辺では、先住民・カナックの伝統的なダンスを撮影。 踊るは「鳥の舞」。 島の女性? 腰の刺青が魅惑的。 踊りを見る泉谷さん。渋い! ダンスをするカナックの人たち。イル・デ・パンは観光客が多いので、客が集まりそうな浜辺を回り、踊っているのだそうだ。この浜辺も西洋人・日本人がたくさんいて、撮影の準備をしている間に「なんだなんだ」と人々が集まってきた。 カメラが回り、撮影開始。すると、日本人のおじさんが泉谷さんの隣りにやってきて、 --なんの撮影すか? と、きき始めた。本番中の泉谷さんは対応できない。そばにいたぼくが、「撮影中です。すみません」と、おじさんを引き離す。 おじさんは、 --叱られちゃったよ、アッハハ。 と、仲間に言いつつ、離れていった。ちょっとアタマにきた。 タレントは人々が注目してくれることによって生活している。だから、声をかけられると、できるだけサービスをしようとする。しかし、カメラが向けられているときは、「仕事」をしているときなのだ。 その仕事の最中であることがわかっていながら、それもカメラが回りだしてから、入り込んでくる無神経さは理解できない。仕事をしている相手に、「アッハハ」はないだろう。 『天国にいちばん近い島』で、同国人にイヤな思いをさせられるとは・・・・・・。残念。 日帰りの「イル・デ・パン」ロケ。でも、ムリだろうと思っていた夕陽が撮影できた。中央に写っている影は、この美しい夕景を撮影しようと砂浜にはいつくばっているカメラマンのH君。 お疲れさま。 10.31 PM 0:55 拘束されていた若者の遺体が、バグダッドで確認されてしまった。 ご両親の、家族の心痛はいかばかりか・・・・・。 当初から殺害する目的で拘束したとしか思えない武装勢力。 若者を拘束することで自衛隊が撤退するなど、はなから考えてはいまい。力を誇示するようなこうした行為は、決してプラスには働かないのに。 自衛隊を派兵しているだけの、実効のない日本のイラク政策。 その中で、またひとり、前途ある人間を見殺しにした。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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