一人の女性をずっと想い続ける主人公のお話。
事業に成功し華やかな生活を手に入れます。しかしある時、大切なものが損なわれたことを知り、一瞬にしてそれらが空虚なものとなってしまう。。。
(写真はWikipediaより)
主人公デクスターはジュディーという美しく奔放な富豪の娘に恋をします。
大富豪と庶民から成り上がった金持ちの間には、はっきり一線が敷かれていた時代です。
デクスターの家も中流のそこそこの金持ちで、彼は大学卒業後、事業家として成功し、ジュディーと再会して交際を始めます。しかし、次から次へと別の男に惚れていくジュディーの奔放さに悩まされます。彼女のまわりには常に十人ほどの男たちが取巻き、結局は彼女の心をつなぎとめておくことが出来ずに別れてしまいます。
デクスターはジュディーのいる西部から東部に移り、そこでの事業も成功し、知合いの紹介で知的な女性アイリーンとの結婚を考えます。
しかし、ジュディーがラグという男と結婚し、育児に専念する大人しい女性に変貌してしまったことを仕事で会った男から聞かされます。
さらに、彼女は二十七歳なのにもう昔の輝きを失ってしまって夫ともうまくいっていないことを知らされます。
彼は、もう失うものも怖いものもないと考えていたが、自分がまた何かを失ったことを知らされたのでした。夢が消え去り、デクスターはこの何年かで初めて涙を流した。
まるで自分がジュディー・ジョーンズと結婚し、彼女が色香を失ってゆくのを目の当たりにしたような気がした。
そして、次の語りで最後が締めくくられています。
「ずっと昔、僕の中には何かがあった。でもそれは消えてしまった。それはどこかに消え去った。どこかに失われてしまった。僕には泣くこともできない。思いを寄せることもできない。それはもう二度と再び戻ってこないものなのだ」
フィッツジェラルド(米国)が1920年代に書いた短編集で、本の題名となっている、その中の1つがこの「冬の夢」です。
私はもちろん村上春樹の翻訳のものを読みました。フィッツジェラルドの代表作「華麗なるギャッツビー」の執筆前に書かれたものです。
注1)青字は短編集からの抜粋
注2)毎度のことですが独りよがりな感想です