JEWEL
日記・グルメ・小説のこと711
読書・TV・映画記録2699
連載小説:Ti Amo115
連載小説:VALENTI151
連載小説:茨の家43
連載小説:翠の光34
連載小説:双つの鏡219
完結済小説:桜人70
完結済小説:白昼夢57
完結済小説:炎の月160
完結済小説:月光花401
完結済小説:金襴の蝶68
完結済小説:鬼と胡蝶26
完結済小説:暁の鳳凰84
完結済小説:金魚花火170
完結済小説:狼と少年46
完結済小説:翡翠の君56
完結済小説:胡蝶の唄40
完結済小説:琥珀の血脈137
完結済小説:螺旋の果て246
完結済小説:紅き月の標221
火宵の月 二次創作小説7
連載小説:蒼き炎(ほむら)60
連載小説:茨~Rose~姫87
完結済小説:黒衣の貴婦人103
完結済小説:lunatic tears290
完結済小説:わたしの彼は・・73
連載小説:蒼き天使の子守唄63
連載小説:麗しき狼たちの夜221
完結済小説:金の狼 紅の天使91
完結済小説:孤高の皇子と歌姫154
完結済小説:愛の欠片を探して140
完結済小説:最後のひとしずく46
連載小説:蒼の騎士 紫紺の姫君54
完結済小説:金の鐘を鳴らして35
連載小説:紅蓮の涙~鬼姫物語~152
連載小説:狼たちの歌 淡き蝶の夢15
薄桜鬼 腐向け二次創作小説:鬼嫁物語8
薔薇王転生パラレル小説 巡る星の果て20
完結済小説:玻璃(はり)の中で95
完結済小説:宿命の皇子 暁の紋章262
完結済小説:美しい二人~修羅の枷~64
完結済小説:碧き炎(ほむら)を抱いて125
連載小説:皇女、その名はアレクサンドラ63
完結済小説:蒼―lovers―玉(サファイア)300
完結済小説:白銀之華(しのがねのはな)202
完結済小説:薔薇と十字架~2人の天使~135
完結済小説:儚き世界の調べ~幼狐の末裔~172
天上の愛 地上の恋 二次創作小説:時の螺旋7
進撃の巨人 腐向け二次創作小説:一輪花70
天上の愛 地上の恋 二次創作小説:蒼き翼11
薄桜鬼 平安パラレル二次創作小説:鬼の寵妃10
薄桜鬼 花街パラレル 二次創作小説:竜胆と桜10
火宵の月 マフィアパラレル二次創作小説:愛の華1
薄桜鬼 現代パラレル二次創作小説:誠食堂ものがたり8
薄桜鬼 和風ファンタジー二次創作小説:淡雪の如く6
火宵の月腐向け転生パラレル二次創作小説:月と太陽8
火宵の月 人魚パラレル二次創作小説:蒼き血の契り0
黒執事 火宵の月パラレル二次創作小説:愛しの蒼玉1
天上の愛 地上の恋 昼ドラパラレル二次創作小説:秘密10
黒執事 現代転生パラレル二次創作小説:君って・・3
FLESH&BLOOD 二次創作小説:Rewrite The Stars6
PEACEMAKER鐵 二次創作小説:幸せのクローバー9
黒執事 韓流時代劇風パラレル二次創作小説:碧の花嫁4
火宵の月 BLOOD+パラレル二次創作小説:炎の月の子守唄1
火宵の月 芸能界転生パラレル二次創作小説:愛の華、咲く頃2
火宵の月 ハーレクインパラレル二次創作小説:運命の花嫁0
火宵の月 帝国オメガバースパラレル二次創作小説:炎の后0
黒執事 フィギュアスケートパラレル二次創作小説:満天5
薄桜鬼 昼ドラオメガバースパラレル二次創作小説:羅刹の檻10
黒執事 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:碧の騎士2
薄桜鬼ハリポタパラレル二次創作小説:その愛は、魔法にも似て5
薄桜鬼 現代妖パラレル二次創作小説:幸せを呼ぶクッキー8
黒執事 転生パラレル二次創作小説:あなたに出会わなければ5
薄桜鬼 現代ハーレクインパラレル二次創作小説:甘い恋の魔法7
薄桜鬼異民族ファンタジー風パラレル二次創作小説:贄の花嫁12
火宵の月 現代転生パラレル二次創作小説:幸せの魔法をあなたに3
火宵の月 転生オメガバースパラレル 二次創作小説:その花の名は10
黒執事 異民族ファンタジーパラレル二次創作小説:海の花嫁1
PEACEMAKER鐵 韓流時代劇風パラレル二次創作小説:蒼い華14
YOI火宵の月パロ二次創作小説:蒼き月は真紅の太陽の愛を乞う2
火宵の月 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:炎の巫女0
火宵の月 韓流時代劇ファンタジーパラレル 二次創作小説:華夜18
火宵の月 昼ドラ大奥風パラレル二次創作小説:茨の海に咲く華2
火宵の月 転生航空風パラレル二次創作小説:青い龍の背に乗って2
火宵の月×呪術廻戦 クロスオーバーパラレル二次創作小説:踊1
火宵の月×薔薇王の葬列 クロスオーバー二次創作小説:薔薇と月0
金カム×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:優しい炎0
火宵の月×魔道祖師 クロスオーバー二次創作小説:椿と白木蓮0
薔薇王韓流時代劇パラレル 二次創作小説:白い華、紅い月10
火宵の月 遊郭転生昼ドラパラレル二次創作小説:不死鳥の花嫁1
火宵の月 現代転生パラレル二次創作小説:それを愛と呼ぶなら1
FLESH&BLOOD 千と千尋の神隠しパラレル二次創作小説:天津風5
鬼滅の刃×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:麗しき華1
薄桜鬼腐向け西洋風ファンタジーパラレル二次創作小説:瓦礫の聖母13
薄桜鬼 ハーレクイン風昼ドラパラレル 二次小説:紫の瞳の人魚姫20
火宵の月 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:黄金の楽園0
火宵の月 昼ドラ転生パラレル二次創作小説:Ti Amo~愛の軌跡~0
火宵の月 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:鳳凰の系譜0
火宵の月 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:鳥籠の花嫁0
火宵の月 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:蒼き竜の花嫁0
火宵の月 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:月の国、炎の国1
火宵の月 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:碧き竜と炎の姫君0
コナン×薄桜鬼クロスオーバー二次創作小説:土方さんと安室さん6
薄桜鬼×火宵の月 平安パラレルクロスオーバー二次創作小説:火喰鳥6
ツイステ×火宵の月クロスオーバーパラレル二次創作小説:闇の鏡と陰陽師4
陰陽師×火宵の月クロスオーバーパラレル二次創作小説:君は僕に似ている2
黒執事×ツイステ 現代パラレルクロスオーバー二次創作小説:戀セヨ人魚2
黒執事×薔薇王中世パラレルクロスオーバー二次創作小説:薔薇と駒鳥27
火宵の月 転生昼ドラパラレル二次創作小説:それは、ワルツのように1
薄桜鬼×刀剣乱舞 腐向けクロスオーバー二次創作小説:輪廻の砂時計9
F&B×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:海賊と陰陽師1
火宵の月×薄桜鬼クロスオーバーパラレル二次創作小説:想いを繋ぐ紅玉54
バチ官腐向け時代物パラレル二次創作小説:運命の花嫁~Famme Fatale~6
火宵の月 昼ドラハーレクイン風ファンタジーパラレル二次創作小説:夢の華0
火宵の月 現代ファンタジーパラレル二次創作小説:朧月の祈り~progress~1
火宵の月 現代転生パラレル二次創作小説:ガラスの靴なんて、いらない2
黒執事×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:悪魔と陰陽師1
火宵の月 吸血鬼オメガバースパラレル二次創作小説:炎の中に咲く華1
火宵の月 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:黎明を告げる巫女0
火宵の月 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:光の皇子闇の娘0
火宵の月 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:闇の巫女炎の神子0
火宵の月 戦国風転生ファンタジーパラレル二次創作小説:泥中に咲く1
火宵の月 和風ファンタジーパラレル二次創作小説:紅の花嫁~妖狐異譚~2
火宵の月 地獄先生ぬ~べ~パラレル二次創作小説:誰かの心臓になれたなら2
PEACEMEKER鐵 ファンタジーパラレル二次創作小説:勿忘草が咲く丘で8
FLESH&BLOOD ハーレクイン風パラレル二次創作小説:翠の瞳に恋して20
天官賜福×火宵の月 旅館昼ドラクロスオーバーパラレル二次創作小説:炎の宿1
火宵の月 異世界ハーレクインファンタジーパラレル二次創作小説:花びらの轍0
火宵の月 異世界ファンタジーロマンスパラレル二次創作小説:月下の恋人達1
火宵の月 異世界軍事風転生ファンタジーパラレル二次創作小説:奈落の花1
FLESH&BLOOD ファンタジーパラレル二次創作小説:炎の花嫁と金髪の悪魔6
名探偵コナン腐向け火宵の月パラレル二次創作小説:蒼き焔~運命の恋~1
火宵の月 千と千尋の神隠し風パラレル二次創作小説:われてもすえに・・0
薄桜鬼腐向け転生刑事パラレル二次創作小説 :警視庁の姫!!~螺旋の輪廻~15
FLESH&BLOOD ハーレクイロマンスパラレル二次創作小説:愛の炎に抱かれて10
PEACEMAKER鐵 オメガバースパラレル二次創作小説:愛しい人へ、ありがとう8
FLESH&BLOOD 現代転生パラレル二次創作小説:◇マリーゴールドに恋して◇2
火宵の月×天愛クロスオーバーパラレル二次創作小説:翼がなくてもーvestigeー0
黒執事 昼ドラ風転生ファンタジーパラレル二次創作小説:君の神様になりたい4
薄桜鬼腐向け転生愛憎劇パラレル二次創作小説:鬼哭琴抄(きこくきんしょう)10
火宵の月×ハリー・ポッタークロスオーバーパラレル二次創作小説:闇を照らす光0
火宵の月 現代転生フィギュアスケートパラレル二次創作小説:もう一度、始めよう1
火宵の月 異世界ハーレクインファンタジーパラレル二次創作小説:愛の螺旋の果て0
火宵の月 異世界ファンタジーハーレクイン風パラレル二次創作小説:愛の名の下に0
火宵の月 和風転生シンデレラファンタジーパラレル二次創作小説:炎の月に抱かれて1
火宵の月×刀剣乱舞転生クロスオーバーパラレル二次創作小説:たゆたえども沈まず1
相棒×名探偵コナン×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:名探偵と陰陽師0
火宵の月×薄桜鬼 和風ファンタジークロスオーバーパラレル二次創作小説:百合と鳳凰2
火宵の月 異世界ファンタジーハーレクイン風昼ドラパラレル二次創作小説:砂塵の彼方0
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※BGMと共にお楽しみください。「火宵の月」二次小説です。作者様・出版者様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。―先生・・ 誰かが、呼んでいる。 有匡が目を開けると、そこには涙を流して自分を見つめている最愛の妻の姿があった。(泣くな、また・・会えるから。) 意識が遠のく中、有匡の耳に微かに聴こえたのは、妻の、ある言葉だった。―僕も、すぐに会いに来ますから。「ん・・」 不思議な夢を見た後、有匡は低く呻くとベッドから起き上がった。「おはようございます、有匡様。」「おはよう。」 執事に挨拶を済ませた後、有匡は浴室に入り、冷たいシャワーを頭から浴びた。「本日のご予定ですが、朝はT物産とのオンライン会議、夜は帝国ホテルにて龍崎財閥創立百周年記念パーティーです。」「パーティーか・・」 社交家の父とは対照的に、有匡は人嫌いで社交嫌いであるが、副社長という立場故、そういった集まりを無視する事が出来ない。「そういえば、四条家の高子様から、昨夜ご連絡がありました。」「そうか・・」 一度見合いしただけの、吐いて捨てる程の女は、どうやら有匡の事を気に入ったようで、しつこく連絡してくる。 いい加減、彼女に直接言わなくては。 お前とは、結婚出来ないと。「本日の朝食は如何なさいますか?」「要らない。」「かしこまりました。」 身支度を済ませ、有匡が運転手付きの車で会社へと向かっている頃、火月は緊張した面持ちで秘書課のフロアがある七階へと向かっていた。 今までして来た仕事と言えば、飲食店やコンビニのアルバイトくらいだ。(あ~、どうしよう・・) 火月がそんな事を思っている内に、エレベーターは七階に着いてしまった。「すいません、本日からお世話になります・・」「火月ちゃん!」「火月ちゃんじゃない、久し振り~!」 火月が秘書課のドアを開けると、二人の女性達が彼女に駆け寄って来た。 彼女達の顔を見た火月は、思わずこう叫んでしまった。「式神の、お姉さん達なの!?」「いやぁ、まさか火月ちゃんが殿の専属秘書になるなんてねぇ~」「世間って、案外狭いもんよねぇ~!」 元式神シスターズ、種香と小里は、そう言いながらフラペチーノに口をつけた。 彼女達は有匡の専属秘書として社内で辣腕をふるっている。「ねぇ火月ちゃん、ひとつ質問していいかしら?」「は、はい・・」「殿とは、もう寝たのかしら?」 火月は小里の言葉を聞いて、思わず飲んでいたフラペチーノを噴き出しそうになった。「え、寝、寝たって・・」「いやぁ~、今も昔も殿のフィンガーテクは健在だからさぁ~、火月ちゃんを専属秘書としてスカウトしたのも、そうなのかなぁ~って。」「バッカ、火月ちゃんをスカウトしたのは大殿様よ~、あの人思いついたらすぐにやる人だからね。」「そうね。」 種香と小里がそんな事を話していると、カフェに有匡が入って来た。「あら、珍しいわね。殿がこんな所に来るなんて。」「いつも出社なさったら副社長室に籠もりきりなのにね。」 有匡はカウンターでコーヒーとサンドイッチを注文すると、そのまま火月達が居るテラス席へと向かった。「あら殿、お珍しいですわね。」「お前達、どうしてここに居る?」「火月ちゃんと、少しお話していましたの。あ、もうこんな時間だわ、急がないと!」「火月ちゃん、後はお二人で楽しんでね~!」「え、お、お姉さん達~!」 急に有匡と二人きりにされ、火月は暫く有匡と目を合わさないようにした。「おい、そんなに怯える事はないだろう?何も取って食ったりはしないから、こっちへ来い。」「は、はい・・」 火月が恐る恐る有匡の隣に座ると、彼はサンドイッチを一口かじってそれをゴミ箱に捨てた。「あの、それで栄養足りてます?」「余計なお世話だ、秘書だからと言って女房気取りはよせ。」「す、すいません・・」「ったく、調子が狂う・・」 有匡はそう言って火月に背を向けて、カフェから出て行った。「あら殿、お早いお帰りです事。」「火月ちゃんとのデートは、如何でしたの?」「うるさい。」 不機嫌な様子の主を見て、元式神シスターズは互いの顔を見合わせながらこんな話をしていた。「昔の殿も塩対応だったけれど、今の殿はかなり・・」「なんか、精製前の粗塩っぽいわね~」「本当に素直じゃないんだから。」「すいません、土御門有匡様はいらっしゃるかしら?」「まぁ、四条様・・」 有匡の見合い相手・四条高子が秘書課に現れ、周囲は暫し騒然となった。「お姉さん達、どうしたの?」「あ、丁度良いわ、コーヒー、殿に持って行って。」「え?」「よろしくね~」 火月が渋々副社長室へと向かうと、中から男女が言い争うような声が聞こえて来た。「どうして、わたくしと結婚出来ないのです!」「先程から申し上げているように、わたしはまだ結婚などを考えておりません。」「嘘です、心に決めた方がいらっしゃるのでしょう!」 高子が粘着質な女である事は以前からわかっていたが、いくら有匡が彼女に結婚出来ない事を話しても、中々理解して貰えない。 一体、どうしたものか―有匡がそう思っていると、控え目なノックの音が聞こえて来た。「失礼致します、コーヒーをお持ち致しました。」 火月が副社長室に入ると、そこには一人の美女と対峙している有匡の姿があった。「そこへ置いておけ。」「は、はい・・」「もしかして、そちらの方が・・」「ええ、彼女がわたしの・・婚約者です。」 揉め事に巻き込まれたくなかった火月が副社長室から出ようとした時、突然彼女は有匡に抱き寄せられた上に唇を塞がれた。(えっ、これは・・)ファーストキスを奪われてしまったのだろうか。「キエエ~!」 高子は怒りの猿叫を上げ、早口の薩摩弁で有匡に向かって何かを捲し立てた後、副社長室から出て行った。「あの、追い掛けなくてもいいんですか?」「いい。」「え、僕が今夜のパーティーに?」「そうよぉ~、何たって火月ちゃんは、殿の婚約者だもの~」「そ、それは成り行きで・・」「成り行きでも、いいじゃな~い!さぁ、おめかししましょ、おめかし!」 種香と小里によって火月は銀座の高級ブティックへと連行され、更に高級エステへと連れて行かれた。「そんなにしなくてもいいのに・・」「だぁめ、殿の為に綺麗にならなくちゃ!」「そうそう!」 帝国ホテルで行われた、龍崎財閥創立百周年記念パーティーは、政財界の名士などが出席している、華やかなものだった。「火月ちゃん、素敵~!」「わたしのヘアメイク術はダテじゃないわ。」 真紅のAラインの膝丈ドレスの火月は、慣れないハイヒールを履いて覚束ない足取りで歩いていた。「ホラ、背中丸めないの!」「でも・・」「あら、殿だわ!」 火月達が有匡の方を見ると、彼の隣にはマーメイドラインのドレスを着た黒髪の美女が立っていた。(わかっているよ、副社長には、あぁいう人が似合うって。) 有匡とあの美女が並んでいる姿は、まるで一幅の絵画のように美しかった。(場違いなんだろうな・・) 火月はそんな事を思いながらシャンパンを飲んでいると、そこへ一人の男がやって来た。「ねぇ君、可愛いね。」「あの、えっと・・」「この後、二人きりで飲まない?」「わたしの婚約者に何か用か?」 火月が男からの誘いをどう断ろうかと思っていると、そこへ有匡がやって来た。「す、すいません・・」「謝るな。ったく、お前は昔から放っておけないな。」「え?」(先生、今何て・・)「あの、先・・」 火月が有匡の手を握ろうとした時、突然視界が霞んだ。「おい、どうした?」「急に、躰が・・」「歩けるか?」 有匡の問いに、火月は静かに頷いた。「あら殿、どちらへ?」「厄介な事が起きた。」 そう言った有匡の息が、少し荒い事に種香は気づいた。「わかりました、後はわたし達にお任せ下さいな。」「頼んだ。」 有匡は火月の身体を支えながら、予約していたスイートルームへと入った。「先生・・どうしたんですか?」「どうやら、わたし達はいつの間にか媚薬入りの酒を飲まされていたらしい。」「あの、大丈夫なんですか?」「大丈夫じゃない。今、お前を抱き潰して、壊したい衝動に駆られている。だから、お前はさっさと・・」 火月は、有匡に抱きつくとこう言った。「お願い、抱いて下さい。」「お前は・・」 有匡の中で、理性を保っていた“何か”が切れる音がした。「本当に、いいんだな?」「はい。」「途中でやめろと言われても、やめないからな。」「はい・・」 有匡は、ネクタイを緩めた後、それを乱暴に外して火月の目を覆い隠した。 欲望に負けた、醜い己の顔を火月に見せたくなかったから。にほんブログ村
2024.01.24
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※BGMと共にお楽しみください。「火宵の月」二次小説です。作者様・出版社様・制作会社様とは一切関係ありません。 子供の頃、『シンデレラ』が好きだった。 義理の母と姉達から虐げられたシンデレラが、優しい魔女によってお城の舞踏会に行き、王子様と結ばれるストーリーが、子供の頃の自分にとっては憧れそのものだった。 だが、成長するにつれて、あれはただのお伽話だったのだと、火月は気づいてしまった。 現実は、お伽話のように、優しい魔女も、魔法も存在しない。「火月、元気でな。」「神父様も、お元気で。」 18歳の誕生日を迎え、火月は長年暮らした孤児院を“卒業”した。 幼い頃、両親を交通事故で亡くし、この日まで孤児院のシスターや神父達、そして自分と同じ境遇の子供達と共に”家族“のように育った。「辛い事があったら、いつでも来なさい。」「はい・・」 身寄りがない火月にとって、アパートの部屋を借りる事や、就職活動は困難を極めた。 しかし、火月は諦めずに前を向き、就職活動に励んだ。 その結果、大手アパレル企業に就職が決まった。「火月、おめでとう!」「ありがとう、禍蛇。」「お~し、今夜はとことん飲むぞ~!」 火月の就職が決まり、彼女は孤児院時代の友人が経営するバーで、火月の親友・禍蛇と、その彼氏である琥龍と一晩飲み明かした。 その結果、火月は出勤初日に遅刻した。「うわ、やばい!」 履き慣れないハイヒールで、全速力で駅まで火月が走っていると、一台のロールスロイスと彼女はぶつかりそうになった。「何処を見て歩いているんだ!」「す、すいません!」 ロールスロイスの運転手から怒鳴られ、委縮した火月の前に現れたのは、長身の美男子だった。「怪我は無いか?」「は、はい・・」「そうか。」 刹那、男の切れ長の瞳と、火月は目が合った。「お前は・・」「若様、急ぎませんと。」「あぁ、わかった。」(何だったんだろう、あの人?) 火月は慣れない仕事に奮闘しながら、今朝会った謎の美男子の事を思い出していた。「ねぇ、今日副社長がいらっしゃるんですって。」「まぁ、そうなの!?」「お珍しいわね。」 周りに居た社員達が少しはしゃいでいるのを見た火月は、近くに居た同僚にこう尋ねた。「副社長って、どんな方なんですか?」「あぁ、あなたはまだここに入って間もないから、副社長の事を知らないのね。副社長は、この会社の社長のご子息で、家柄良し、血筋良し、顔良しの三拍子揃ったとても優秀な方なのよ。」「へぇ、そうなんですか。」「あら、噂をしていたらいらしたわ。」キャァァッ!と、まるでアイドルのコンサート会場でしか聞いたことがないような黄色い悲鳴が響く中、“彼”は現れた。 艶やかで美しい黒髪、一流のテーラーによって仕立てられたスーツを包む長身。 そして、何よりも火月の心を深く惹きつけたのは、切れ長の、碧みがかった黒い瞳だった。―火月・・ 最近、夢に現れる“誰か”の姿に、“彼”が重なったような気がした。「高原さん、どうしたの?」「いいえ、何でもありません。」(あ~、疲れたなぁ。) 仕事が定時で終わり、火月が更衣室で制服から私服へと着替え、そのまま退勤しようとした時、一人の社員が彼女の元へと息を切らしながら駆け寄って来た。「高原さん、秘書課の真田です、大至急社長室に僕と来てください!」「え、あの・・」 訳が判らず、火月は真田と共に社長室へと向かった。「社長、高原さんをお連れしました。」「ご苦労様、君はもう下がっていいよ。」「は、はい!」 社長室に入った火月は、そこに“彼”と、“彼”と瓜二つの顔をしている男が立っている事に気づいた。「高原火月さんだね?初めまして、わたしはA&Sの社長を務める、土御門有仁だ。そして、わたしの隣に立っているのが、一人息子の有匡だ。」「は、はぁ・・」「急な話で悪いんだが、高原君、明日から君はこの有匡の専属秘書になって貰いたい!」「え・・」「父上、何を勝手な事をおっしゃるのですか!?」“彼”―A&S副社長・土御門有匡はそう叫ぶと、隣に立っている父を睨んだ。「有匡、お前は仕事は完璧だが、周りに厳し過ぎる。高原さん、息子をよろしく頼むよ。」「社長、専属秘書って何をすればいいんですか?僕、社会人経験ないので・・」「あぁ、それなら安心し給え。仕事なら有匡が教えてくれるから。」 有仁は、そう言ってこめかみに青筋を立てている有匡を見て笑った。(これから、面白くなりそうだな。)にほんブログ村
2023.12.25