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2014年12月22日
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12月20日、報徳博物館で報徳ゼミがあり、富田高慶が書いた「報徳記」原文を宮内庁が発刊する際に、

だいぶ校正が入り、しかもそれは高慶が了承したものではないと聞いた。

そこで、高慶が著した「報徳記」に基づいて「岸右衛門の訓え」を改めた。


4 岸右衛門への訓(おし)え―二宮金次郎の教諭で農民がどのように精神変革を遂げたか―

桜町三村のうちの物井村に岸右衛門という者があった。少し才知があり、剛気な性格であった。二宮金次郎は桜町陣屋に来てから、日夜至誠を尽し、衰村を興し、百姓を安んじようとしたが、これをあざけりそしっていた。自から大言を吐いて桜町仕法に非協力の行いをなして歳月を送ること七年に及んだ。金次郎は寛大を主として、これを戒しめられなかった。しかし金次郎の丹誠(たんせい)がいささかも変わることなく、月年を経て、効果が次第にあらわわれてきたため、岸右衛門はこう思った。

岸右衛門独白:以前、小田原からこの地を再復するために出張してきた役人は何人もいるが、一年を待たないで逃げ去った。二宮氏が来ても、前と同じく失敗するに違いない、
どんな仕法を行なおうが、この地の復興などできるはずがないと思っていた。ところが二宮氏の仕法は七年にも及んで、その効果は日々にいちじるしい。私がこのように仕法に反対し続けるならば、桜町三村の再興は近年にも成り、私が罪人となるのも目前である。今すぐに前非を謝罪して、一緒に二宮氏の復興事業に力を尽し、後の繁栄を取ったほうがよい。

岸右衛門は知人を先生のところにやって、「岸右衛門は先生の仕法に感じ入って、力を尽そうと願っています」と言わせた。金次郎は旧悪をとがめることなくその要請を許した。岸右衛門は陣屋に来て、「先生の指揮に随って、丹精を尽します」と言った。金次郎は仕法の大意、人倫の大道を教えた。岸右衛門は始めて広大の道理を聞いて大変感激し、これから日々村に出て指揮に随い、土木事業の率先となり力を尽した。しかし村人はこれまでの岸右衛門の行状を見ているからその言葉を信じない。岸衛門は悩んだ。金次郎は岸右衛門にこのようにさとした。

二宮金次郎:お前が前非を改めて、上下のためを心掛けるといっても、人々がどうしてお前の本心を知ろうか。そもそも人の難しいとするところは、私欲を去ることである。お前が私欲を去らなければ、人はこれを信じまい。

岸右衛門:教えに随いましょう。欲を捨てるには、何を先にしたらよいのでしょうか。

二宮金次郎:お前の貯えてきた金銀や器財を出し、貧乏で苦しむ人々を救助する資金としなさい。また田畑をすべて売払ってその代金を救助のために差し出しなさい。欲を去り、村人のために力を尽すこと、これより大きいものがあろうか。人の人たるの道は、己れを棄て人を恵むことより尊いものはない。お前の旧来の行いは、ただ自分を利そうとするだけであった。自分だけを利そうとするのは、けだものの道である。人と生れながら一生鳥やけだものと行いを等しくすることは、なんと悲しむべき至りではないか。今、私の言葉に随って、けだものの行いを去り、人道の至極(しごく)を行う時は、お前の心は私欲の汚れなく、清浄に帰し、諸民もまたこれを見てその行いに感じいって、お前を信ずることに何の疑いがあろうか。

(岸右衛門は憂いと喜びが交互にして容易に決断できなかった。一方ではこの善道を行いたいと欲し、一方では一家を廃することを憂えたためである。)

二宮金次郎:お前の心が決することができない理由は、一家を失い、父母や妻子を養うことができないことを憂慮するからではないのか。お前がこの善道を実践しようとし、自分の田畑を売り払って村の復興に尽くすという非常の行いを行うならば、私がどうしてお前が倒れるのを黙って待っていようか。お前にはお前の道があり、私には私の道がある、三村の興廃は私の一身にかかわることだ。無頼(ぶらい)の者が、一家を失うのでさえ、教育を尽してこれを再復し、安らかにしようとしている。今、お前が、上は君のため、下には民のため、家財をなげうって復興のために尽くそうとする。このような感心な行いの者を飢えさせるならば、私が三村を復興する任務をどうして達成できよう。ただお前の一心が私欲を去ることができず、生涯、鳥やけものと群れを同じし、空しく生きて空しく死んでいくことを嘆くだけである。

岸右衛門:先生は私を憐れんで、君子の行い
を教えられました。恩義の大きいことは譬えようがありません。すぐに教えに随って、この人道を実践しましょう。

(岸衛門はすぐに家へ帰って、田畑を売り払い、復興の資金にあてることを父母や妻子に説いた。家族は大変驚いて、泣いて反対した。岸右衛門は疑念が生じてきて、「婦女子をさとすことができません」と知人を金次郎のもとにやって告げさせた。)

二宮金次郎:これは岸右衛門の一心にあって婦女子にあるのではない。岸右衛門の心が、目前の欲におおわれているだけだ、ああ、小人はもともと君子の行いを実践することはできない。このような者に教えたことは私の過ちである。

(知人は岸右衛門に金次郎が言ったことを伝えた。
 岸右衛門は覚えず汗をぬぐって言った。)
岸右衛門:実に私の心が定まらないからである。どうして家族のせいであろうか。

(岸衛門は断然、田畑や器財を売払って、百余両を持って、桜町陣屋に来た。)

岸右衛門:不肖の私がどうして、大道を行うことができましょう。これをあなた様の事業の財産に加え、仕法のお役に立ててください。

二宮金次郎:お前は今日から力を尽して荒れ地を起こすがよい。

(金次郎は、岸衛門に荒れ地を与え開墾させ、また金次郎も人夫を派遣して共に開発させ、たちまち数町の田を開いて、これを岸右衛門に与えた。)


二宮金次郎:この新しく開いた田は、お前がこれまで保有していた田に勝(まさ)っている。今年からこの田を耕すがよい。もとの田は五公五民で収穫した米が百俵であれば五十俵の租税である、この開田は百俵を生ずれば百俵ともにお前のものとなる。七、八年を経なければ貢税(こうぜい)を出す必要がない。お前が貢税の田を売払って、貧窮の人々を救助し、無税の田を得てこれを耕すならば、一家の生産は以前に倍しよう。これをこれ両全の道というのだ。

(岸右衛門は始めて先生の処置の深遠であること驚いて、大変に喜んで仕法に力を尽した。そして外には村人の信用を得て、内には富が以前に倍する幸いを得たことは、皆金次郎の良法によったからだという。)





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最終更新日  2014年12月22日 07時55分39秒



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