東京で働いている旧友から電話があった。
「今日、買い物に行ってレジで働いている人の名札を見たら<城>と書いてあってさ。振り仮名が<キズキ>だったんだよ」
キズキ…。ワタナベ…。ノルウェイの森…。思考が<ムラカミハルキ>へ辿り着くと、僕たちは(まるで<僕>と<鼠>のように)バーでビールを飲んで語り合った大学時代のことを、あるいは(<僕>と<キズキ>のように)ビリヤードをして技を競い合った大学時代のことを思い出した。そして僕たちは、お互いの近況報告をして、電話を切り、それぞれの日常へと戻っていったのだ。
それだけの話。でも、それだけではない春の挨拶。