テーマ:楽器について♪(3626)
カテゴリ:風変わりなピアノ
![]() これは1936年ベヒシュタインと物理学者ネルンストが共同で作り上げた「ネオ・ベヒシュタイン」という楽器である。 中を見ると何かフランケンシュタインの研究所のような不思議な印象を受けるが、ようは響板のないピアノにピックアップ(マイク)を付けて弦の振動を電気的に拾うという、言ってみれば打弦方式のエレクトリックピアノである。今から考えれば大して珍しくも思えないが、この楽器の生まれた1930年代を少し振り返ってみよう。 20世紀はじめ、電化の波とともに新しい娯楽として「映画」が急速にひろまった。最初は無声映画であったが、当初から声の出る「トーキー」の研究・開発がさかんであった。その研究から出てきたのが、蓄音機にピックアップをつけて電気的に増幅させる技術だった。 これに目を付けたのが楽器奏者・職人たちであった。特にギターは当時、音量拡大のために様々な工夫が試みられていた。蓄音機の針についているピックアップを楽器の音源に付けようという発想はそのような流れからすれば当然行き着くところであった。 1931年、ジョージ・ビーチャムとアドルフ・リッケンバッカーが初めてピックアップをマウントさせたスティールギター「フライング・パン」を発表した。その後1935年、f字ホールのギターにピックアップをマウントさせたギブソン・ES-150、1948年にはソリッドボディー(単板ボディー)のエレキギター、フェンダー「ブロードキャスター(後のテレキャスター)」が発表された。 このようにしてエレキギターが誕生したわけであるが、このネオベヒシュタインはそのような時期に開発されていたわけである。 このネオベヒシュタインは単にピアノの音を電気化するというだけでなく、もう少し前進した期待がされていたようである。 例えば左ペダルとして採用されているボリュームペダル。このペダルによって強弱を自由にコントロールできるだけでなく、音の立ち上がりをゆっくりさせてヴァイオリンのような効果も出せた。 また、響板がないので、弦の振動が減衰しにくく、いつまでも音が伸びる。このような特徴を生かして今までのピアノになかった表現などが積極的に期待されていたようである。しかし、前々回の「トルコ行進曲ピアノ」と同じく、そのような特殊な効果はピアノ表現としてはあまり受け入れられなかったようである。 少々変わったかたちではあるがネオベヒシュタインは現代の電気・電子ピアノのパイオニアである。この後、ピアノは様々な形で電気化されていくが、それらの詳細についてはまた別の機会に紹介したいと思う。 (ベルリンフィルハーモニー博物館蔵)
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