カテゴリ:本を作る
自分の本の売り方を考えてみよう
著者は最高の営業マン 出来上がった本に対する思い入れが一番強いのは何と言っても書いた本人です。 次には編集者、さらには利害のかかわる発売元の営業担当者と経営者でしょう。 「どんなにいい企画でも、直接自分で100冊程度は売る自信がなければ止めましょう」 著者への私の提言です。相手がどれほど高名で偉い人でも同じことを言っています。 自分で売れないと言うことは、読者対象のハッキリしない本だと言うことです。 「あの人に読ませたい」「こういう人たちに読んで欲しい」 本は、人と人とのコミュニケーション手段です。もちろん不特定多数へと広がります。 でも先ず、身近な人たちとのコミュニケーションから始まります。 あなたの周辺の人たちさえも興味を持ってくれない本が売れるわけありません。 その本の存在を知ってもらうこと 私はどうも宣伝という言葉が嫌いです。何かたぶらかしているような印象を持っています。 だからいつも広報という言葉に置き換えて使っています。 多くの人たちにその本の存在を知ってもらうことも大切です。問題は費用対効果です。 「サンヤツ」と呼ばれる新聞の一面下段の出版広告が昔から使われてきました。 全国紙だとこんな小さな広告でも一回100万円ほどかかります。 以前は私も三大紙に毎週のように掲載していました。以前は効果もあったのです。 でも最近では、その効果も薄れて、投じた費用ほどには売上げにつながりません。 今ではインターネットの利用や口コミのほうが大きな影響力を持つようになりました。 だから広報は、アイディアとこまめな努力が必要です。 本が出来てからでは遅い 新刊本が本屋さんに並ぶ期間が問題です。 以前ですと最低でも1ヶ月、さらには新刊委託期間である5~6ヶ月並べてもらえました。 それが今では2~3週間も置いてもらえればいいほうです。 その間にそれなりの売上げが出てくるようだと、補充されたり並べる期間も延長されます。 新刊が出て、すぐに売れる仕組みを作ることが、以前にも増して大切なのです。 そのためには事前の出版予告や内容の紹介が必要になってきます。 インターネットは最高のツール 私はblogを始めて、こんなに便利な広報手段があったのかと驚かされています。 書いた人がどのような人なのかを垣間見ることも出来ます。 どのような本を出そうとしているのかを知ることも出来ます。 さらには自分の意見を伝えて本に盛り込んでもらうことも可能です。 もっと利点があります。アマゾンや楽天ブックスで注文することも出来ます。 ネットショップの弱点である商品を手にして選べないこともblogがカバーしてくれます。 本の中身をblogで紹介すればいいのです。 私の本の場合 私は今書いているこのblogを本にして出版します。 発売日も決めて、このblogでカウントダウンしていきます。 今書いているこの原稿で質問や意見を頂いて書き改めていきます。 事前の本が出ますよという広報と内容を知ってもらうことの一石二鳥です。 意見も集約できれば一石三鳥です。 そして楽天ブックスからご注文を頂ければ発行に合わせた販売促進活動にもなります。 そして売り歩きます 一冊でも多く買って欲しい、読んで欲しい。著者も編集者も思いは同じです。 私は自分が作った本をカバンに詰めて、知り合いのところを徘徊します。 このことは以前にある女性編集者のことで日記に紹介しました。 過去の日記が削除されてしまったので、今日の日記に再録させて頂きます。 この編集者のような気持ちがなければ、出版に関わる者としては失格だと思っています。 ある女性編集者の場合 20年ほど前、時々深夜に私を呼び出す女性がいました。 もちろんこれから書くのは、浮いた話ではありません。 彼女は年上で、さらに体重が私の2倍、胴回りは3倍はあったと思います。 名前は岩本恵子、講談社に勤めていました。 「ねえ、飲みに来ない。私、いつもの店にいるから」 忘れたころに電話が架かってきます。 そこで私は、そそくさと池袋のオルゴールなる店へと駆けつけます。 それほど高い店ではなかったのですが、いつも彼女のオゴリでした。 「本が出来たのよー。買ってくれる」 満面の笑みを浮かべて一冊の本を差し出します。 カウンターのところにドンと陣取り、おもむろに大きなカバンから本を取り出すのが常でした。 カバンには同じ本がいっぱい詰まっています。 ある時、彼女は一躍、有名になりました。 あの世紀の大ベストセラー、黒柳徹子さんの「窓際のトットちゃん」を企画・編集したからです。 「私も窓際族だから、黒柳さんにこの名前にしてもらった」と嬉しそうに話していました。 後日、「私、テレビにも出たのよ。見た?」と電話が架かってきました。 彼女、自分が担当した新刊が出るたびに、大きなカバンに一杯詰めて持ち歩いていました。 会う人、会う人に「買って下さい」と薦めるのです。 飲み屋でぐうぜん隣り合わせた人にまで。 私は、1200円くらいの本代を払うだけで、たっぷりとご馳走になれます。 酒にいぎたない私は、いつも飛んでいったものです。 「窓際のトットちゃん」を手掛ける前に、彼女は「功、大好き」という本を手掛けていました。 その本が出来た時も、当然のように買わされました。そしてご馳走になりました。 「功、大好き」は映画俳優の木村功氏の未亡人の手になる本です。 結果的には、そこそこ売れたみたいです。 私も興味もないのに読まされました。 でも企画段階では、 「死んだ人間の未亡人のノロケ話なんて売れるわけないだろう」 と猛反発を受けていたと聞かされていました。 それでも出したかったのだと。 彼女自身が新婚間もない時に伴侶を事故で失ったと後で知りました。 病的なぐらい太り始めたのもその時かららしいのです。 木村功氏の未亡人に自分を投影していたのかも知れません。 自分の手掛けた一冊の本があります。 それも天下の講談社です。放っておいても、ある程度は売れます。 なのに彼女は、たとえ一冊でもいいから多くの人に見せたいと心底思っていました。 そして行動したのです。 彼女にとって自分の手掛けた本は、愛しい自分の分身みたいなものだったのですね。 その彼女、まだそれほどの年でもないのに、あっけなく旅立ってしまいました。 何冊かの自分の手掛けた本を残して。 「ねえ、一冊でいいから買ってよ」 自分で作った本を売り歩いていた編集者がいたことを、いまだに忘れられません。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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