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2008.01.18
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カテゴリ:lovesick
結局、撮影が延びに延び、家に帰ったのは夜中の2時ごろだった。そっと玄関を開けて家に入ったが、なんのことはなく、まだ居間から明かりが漏れていた。瑞希かな?と、中に入ると、意外にも、母がソファで雑誌を読んでいた。
「あら、お帰り。遅いのね。飲んでたの?それともお仕事?」
「ただいま。今日は仕事」
「いつもこんなに遅いの?」
俺は、母の向かいに腰を下ろし、
「日によるけどね。今日は予定より延びたんだ。それにしても、どうしたの?珍しいね」
「私は今日は早かったのよ。たまには人並みの時間にって、早めに寝ようとしたんだけど、かえって目がさえちゃって。だから、あきらめて、」
母は、ワイングラスを上げて、
「寝酒でもしようかしらってね」
「なるほどね。父さんは?」
俺はそばにある小さなクーラーから、ペリエを出す。
「まだ帰ってるわけないでしょ。ところで、悠斗。あなた、なんだか好きな人ができたらしいわね?」
思わず、瓶を落としそうになる。あの、おしゃべり。
「瑞希だな。ほんとおしゃべりだよ、あいつは」
「あのくらいの女の子はみんなおしゃべりよ。で、どんな人なの?美人?年はいくつ?何してる人?」
「そういうの一応、興味あるんだ、母さんでも」
家庭よりも仕事優先の人だから、言ってみた。
「そりゃあ当然でしょ。あなたね、この間みたいな子、全然だめよ。ほんとに趣味悪いったらないんだから。ちゃんと親に紹介できるような子にしなさいよ。もう20歳も過ぎたんだから」
「ほっといてくれよ。この間って、もう1年半も前の話だろ?」
「そうだったかしら?で、今度の人はどうなの?」
「めちゃめちゃいい子だよ。美人だし、同い年で、陶芸家なんだ。」
一応母の質問に答える。
「陶芸家?いいわね~、気が合いそうだわ。名前は?私も知ってる人かしら。」
そういえば、母は暇があれば陶芸家の個展を回っていた。でも、楓は覆面でやってるって聞いたな。
「知らないと思うよ。」
「そう。あなたと同い年なら、まだまだ若いものね。どんな作品を作るのかしら?興味あるわ~。今度あわせてよ。」
「でも、恋人になれるかどうかは、まだわかんないよ」
「あら、あなた、弱気じゃない。瑞希の話だと、もっと進展した関係なんだと思ってたけど。もっと自信もっていかないと、可能性0になるわよ」
俺はペリエを飲みながら、うなずく。
「ご忠告ありがと。がんばるよ。さて、風呂入って寝るわ。母さんも、ほどほどにね」
「なんだ、つまんない。付き合ってくれないの?」
「遠慮しとくよ。色々、聞かれるの怖いし」
と笑うと、母は、
「ふふ。悠斗はほんと、真面目なんだから。」
「おやすみ」
「おやすみなさい」

部屋に戻ろうとして、瑞希の部屋に電気がついているのに気づいた。ノックする。
「はあい」
眠そうな声。俺はドアを少し開けて、
「おしゃべり」
と言ってやると、
「だって、初デートでお泊りなんて、しゃべりたくなっちゃうじゃん。前途多難とかいってたくせに。スケベ」
「ば~か。夕べは、デートのあと、宗太郎んちに泊まったんだ。考えすぎなんだよ。お前こそスケベだよ、ったく」
「なんだ、そうだったんだ。ごめんね。」
素直に謝られると、それ以上怒れなくなる。
「早く寝ろよ、おやすみ」
「おやすみ。またデートのこと、詳しく聞かせてね」
「ん~、それは内緒」
と、いつものセリフを言うと、
「また~、もう、そればっかり」
俺はふと、瑞希の部屋に張ってあるポスターを見て、
「そういえば、今日、大橋凌くんと一緒だったんだ」
とポスターの彼を指差していってやると、
「え~?サインもらってくれた?」
「まさか」
俺は笑って、
「もう、ケチ!」
という文句を背中にドアを閉めた。

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最終更新日  2008.01.18 09:50:09
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