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カテゴリ:yuuko
ぼんやりと、コーヒーを淹れるテツヤの動きを眺めていると、
「名前」 といわれて我に返るユウコ。 「え?」 「君の名前も聞いてなかった」 コーヒーを運びながらいうテツヤ。 「あ、ユウコ。。」 「ユウコちゃん、か。僕の名前は言ったよね?」 「うん、テツヤくん」 「そうそう。どうぞよろしく、ユウコちゃん」 「こちらこそ。でも、、」 「ん?」 「呼び捨てにしてほしい。ちゃんってなんか、かわいすぎて」 「そう?了解。じゃあ、俺もテツヤって呼んで?」 コーヒーを飲みながら、芝居の感想や、裏話、そしてまたカナダの話なんかをする。テツヤが何かを話すたびに、胸が震えるユウコ。 そうか、胸が痛いのは、彼にドキドキしてるからなんだ。 「・・コは、恋人いるの?」 突然、聞かれ戸惑っていると、 「その、反応は、、いるってことなのかな?」 と残念そうにいうテツヤ。ユウコは慌てて首を振り、 「いないいない。別れたところなの」 「おっと、それは悪いこと聞いちゃったかな?」 「ううん。もう、終わったことだから。」 「本当に・・?」 「うん」 頷くユウコ。テツヤは嬉しそうに、 「じゃあ、僕、本気でユウコのこと、考えてもいい?なんか、めちゃくちゃスキになりそうな気がするんだけど。あ、もちろん、今日どうこうっていうことじゃないよ。ゆっくり、ちょっとずつ、僕のことも知ってもらって・・」 「あの」 さえぎるユウコ。 「何?」 「今日、から、、じゃダメかな?」 ユウコの言葉に戸惑うテツヤ。 「今、なんて?」 「今日、、から、じゃダメ?私、、、」 あまり時間がない、と言いかけて、少し考えるユウコ。そして、 「私は、もう、テツヤのこと、大好きだから」 テツヤは、目を細めてユウコを見る。真剣な目つきに、ユウコは、急に恥ずかしくなり、 「ダメ、だよね。。?会ったばかりでこんなこと言う女じゃ、信用できないよね。ごめんね。やっぱり、私、。。。忘れて」 と立ち上がり玄関に急ぐユウコ。なんてみっともないこと言っちゃったんだろ。。情けなさに涙が浮かんだ。バカみたい。私だって、本当は、ちゃんと、ゆっくり、、時間をかけたいのに。。自分の体が恨めしかった。 「ユウコ!」 テツヤは廊下を追ってき、ユウコの腕を掴んで抱き寄せた。 「ちょっと待ってよ」 ユウコは慌てて涙を拭きながら、 「いいの。ごめん。私、ほんとに、バカみたい」 テツヤが抱く腕に力を込める。 「・・・本気にしてもいいの?」 と囁くように聞かれ、そっと目を上げるユウコ。 「後悔しない?」 「テツヤ。。?」 「さっきはちょっと余裕あるフリして、、カッコつけたけど、僕も、君の事好きなんだ。一目ぼれだよ、完全に。」 「・・・」 「僕は、どっちかっていうと、、真面目じゃないと思う。これまで、たくさんの女の子と寝てきた。会ってその日に、、寝たことも、そしてそれっきりってことも、何度もある。恋人って呼べる人も何人かいたけど、いつも、女グセの悪さに愛想つかされてフラレテきた」 「ど、う、して、、そんな話?」 テツヤはかまわず続ける。 「でも、さっきも言ったけど、こんな風にいきなり、家に誘うことは本当に、ないんだ。たった一晩きりの相手のつもりなら、家まで連れてこない。最初から違ったんだ、ユウコのことは」 「最、初から・・?」 「って、説得力ないかな?ユウコが僕を受け入れてくれるなら、もうダレとも寝ない。僕は、今、そう思ってるんだけど」 ユウコは首を振り、 「そんなことどっちだってかまわない。他の人と寝たいなら寝ていいのよ」 テツヤは少し傷ついたように、 「それって、ユウコは、、、遊びってことなのかな?」 ユウコは少し笑って、 「違うの。そうじゃなくて、、」 「何?」 「私、少し、心臓が弱くて。。2週間に1度しか、、、その、、し、ちゃいけないの。」 「2週間に1度?」 「そう。それに、、激しいのも、、ダメ。。だから、きっと、物足りないでしょう?だから、いいの、私、テツヤを独り占めできなくていい。私といる時に私のことだけ考えてくれるなら、他に何人いたって、かまわない」 余命が短いことは言わない。前の彼にも言わなかった。言えなかった。言っても悲しい思いをさせるだけだ。ユウコは、ただ、誰かを愛して、愛されて、残された時間を過ごしたかった。 「ユウコ1人で十分だよ。心が満たされるなら、性欲なんて些細なことだ」 「・・・ほんとに?」 「ほんとに」 「、、別に、嘘でもいいんだけど、ね」 テツヤは心外そうに重ねる。 「ほんとに!だよ。」 ユウコは笑う。テツヤのその表情に、男、というよりは、男の子の感情を見つけて聞く。 「ねえ?」 「何?」 「歳、いくつ?」 きっと年下だ、とユウコは思う。 「19」 「え~??」 「何?ユウコは?」 「22」 「え~~??嘘だろ?」 「ほんとに。女は上にサバ読まないよ。」 「3歳も上?絶対、年下だと思ってた」 「年上はキライ?」 「ユウコならなんでもスキ」 「・・・」 「あ、調子よすぎた?」 「うん」 「でも、・・・ほんとだよ」 「うん。ありがと」 テツヤはそっとユウコを抱き寄せて、キスをした。 ←1日1クリックいただけると嬉しいです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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