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2008.06.13
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カテゴリ:yuuko
ユウコはポスターを眺めながら待っていた。どこまでも青い空、雪をかぶった山、美しい水を湛えた湖、そして、大きく添えられたメイプルリーフ。広大な自然。素晴らしいところなんだな、カナダって。息を切らせ走ってくる音に振り向くと、テツヤがいた。大げさに息をつきながら、
「ごめん。待たせて」
という。ユウコは首を振る。息を整えてから、
「よかった、待っててくれて。」
「よかった、来てくれて。」
と微笑むユウコ。テツヤも微笑んで受けながら、
「どっかでお茶でもする?それとも、・・・うちにくる?」
あまりにストレートな誘いに、ユウコは、戸惑う。
「あ、違う違う。ほら、もうどこもすぐに閉まっちゃう時間だし、何も、そんな会っていきなり、何も、その、ほら。ウチに泊めるとしても、ちゃんと別のふとんで寝るし」
しどろもどろになるテツヤにふきだすユウコ。笑ってくれたことにほっとしたように、落ち着きを取り戻すテツヤ。
「怒ってない?。。なら、よかった。いつもこんな風に家に誘ってるわけじゃないんだよ、絶対に。」
「怒ってない。終電なくなっちゃったし、どうしようかと思ってたから。私も、会ってすぐの人の家に泊まるようなことないのよ、絶対に」
テツヤはユウコを愛しそうに見つめ、
「分かってるよ。」
といい、
「うち、すぐそこなんだ。」
と手を添え、促した。

テツヤの家は、まだ新しそうなマンションだった。中に入ると広く、綺麗に片付いている。
「もっと貧乏なとこと思ってたでしょ?」
といわれて、笑って頷く。
「当たってる。ほんとなら、こんなとこ住めないんだ。海外出張になった知り合いに頼まれて、留守番がてら、だから」
「そうなんだ」
とユウコ。
「その辺テキトーに座ってて。コーヒー淹れる」
「おかまいなく」
ソファに腰を下ろすユウコ。胸に手を当てる。少し痛む。今日はいろいろあったから。
病院では、先生に、彼と別れたことを伝えた。先生は黙って頷いた後、この間の検査の結果を伝えた。検査の度に、短くなる余命。仕方ない、この2年間、私は、彼との恋に、身も心も擦り減らしてきたんだから。もちろん、そのことに後悔はない。ただ、数年の命が延びるからって、死んだように生きてても仕方がない。2年間、私は、間違いなく幸せだった。
そしてユウコは、コーヒーを淹れているテツヤに目をやる。
彼のこと、キライじゃない。ていうよりも、スキ、かも。だけど、彼と別れて、こんなに早く?しかも、今日会ったばかりで?
だが、戸惑う気持ちよりも、惹かれる気持ちの方が明らかに加速度を増していることに、ユウコは気づく。
そう、多分、きっと、、最初に声を聞いた瞬間から、惹かれていたんだ。

だったら、私には、ためらっている時間なんてない。

ユウコはそう思った。


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最終更新日  2008.06.13 06:43:57
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