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カテゴリ:yuuko
ある日、ユウコは、テレビドラマの中で演じるテツヤを見た。エンドロールで流れる名前は、漢字名になっていたけれど、紛れもないテツヤだった。ユウコは思った。あの時言っていた、大きな仕事っていうのは、このことだったのね。よかったね、テツヤ。あなたには何か光るものがある。これからも、自分の夢を追い続けて、多くの人に愛されて、どんどん輝いていって欲しい。傷つけてしまったこと、、、ごめんなさい。あなたの子供がここに、今私の中に、存在することも、、伝えることもできなくて。。迷い始めるととめどなくなることが分かっているから、迷わずにきたのに。それでも、テツヤの姿を見ると、どうしようもなく心が揺れる。
『テツヤ、愛してる。』 心で思ってみるユウコ。すんなりと心に馴染む言葉。そうだよね、私はテツヤを愛している。もうきっと2度と会えないだろう、今この時になっても。お腹を撫ぜて思う。ねえ、楓、私はあなたのお父さんを愛してる。私の命がこんなに短くなければ、私はどうしたかな?どうしようもないことを考えてしまうユウコ。テツヤと私とあなたと、、、幸せな家族になれたはずだよね、きっと。 痛む胸に手をあてて、ユウコは自問する。 一体どうしたんだろう、今日は。。、、、そうね、きっと、テツヤを見たから。 考えないようにしたいのに、心はとまらない。 『テツヤ、愛してる』 何度も何度も思ってしまう。その度に、締め付けられ、痛む胸。楓、私、きっと、死ぬまで、ずっと、あなたのお父さんを愛してるよ。あんなに素敵な人なのに、「彼」との恋の記憶の中で死んでいくはずだった私を、、こうして、あなたという新しい命を遺す私に変えてくれた人なのに、きっと、もっと、幸せになれたはずなのに。。 ユウコは覚悟を決める。私はテツヤを愛したまま死んでいく。後悔はない。幸せだと思う。 でも、きっと、テツヤは、、・・・もう、私を忘れてくれたよね。。。? ・・・どうやったら、ユウコを忘れられるんだろう。。。? 撮影が終わるといつも真っ先にテツヤは、スタジオのあるビルを出る。大きな建物の中から外に出るとほっとするのだ。今日も一応、そつなく終わった。少し月を見上げて、いつもどおり、足はあの場所に向かう。ユウコと出会った、いつも待ち合わせた、ポスターの前。そう、きっといないことは分かっていても。 そして果たしてその場所に、ユウコはいない。でも、ぽっかりと自分の為にあいている様なそのポスターの前の空間に、テツヤは身をおく。ポスターに背を向けて窓にもたれ、ユウコと過ごした、あの、たった数ヶ月のことを、頭から順に思い出していく。最後の日の記憶まで、たどり着いて、いつも思う。一体何があったっていうんだろう。 『ごめんなさい。もう、会えないの』 あの一言が聞こえるまでは、本当にそれまでどおりの2人だったんだ。いつもどおりのユウコだったんだ。2週間に1回の約束も、必死で守った。もちろん、浮気なんてしなかった。ユウコの方だって、、『遊びだった』なんて、、そんなこと、ないはずなのに。何度考えても、今でも、わけが分からない。 何であの時、手を離してしまったんだろう。絶対に、離しちゃいけなかったのに。テツヤは手を眺めながら思う。 ユウコが言ったように、テツヤはユウコの名前しか知らなかった。苗字も、どこに住んでいるのかも、電話番号も、通っているはずの病院だって、テツヤは何も知らなかった。探すことすらできない。 ただ、同時に、テツヤは知っていた。たとえ探し出せたとしても同じだということも。ユウコ自身が、もう戻る気がないことを。本当は分かっていた。 ユウコに別れを告げられた時、半年だけ、、、半年だけここで待とう、とテツヤは期限を切った。 半年、ここで、同じことを思い続けて、そして、ユウコのことは忘れる。 それから・・? モトの俺に戻るだけだ。 俺に、心は、、もう、ない。全部ユウコにあげてしまった。 でも、そんなものは、もう、いらない。 元通り、また適当に女遊びを始めるだけだ。 情熱を傾けるのは芝居だけ。テレビの仕事は、特にしたいわけではないけれど、顔を売るには手っ取り早い。そしていつか、また舞台に戻る。その時には、俺はもっと大きくなっている。 テレビに出ていれば、ユウコがもしも、いつか、、連絡を取りたくなってくれたら、、、、、ないか。。ないよな。 それでもテツヤは、2週間に一度、いつも、同じ場所で、半年間、待ち続けた。 そして、その期限の半年が過ぎた日、テツヤは適当にナンパした女を抱いた。 その夜を境に、予定通り女遊びを始めた。 元通り、、、いや、以前よりも、いっそうひどく。 癒えるはずのない渇きを癒すために。 癒えるはずのない渇きだと分かっていても。 テツヤには、ユウコが、自身の子を身ごもっていることを知る術すらなく。。。 ←1日1クリックいただけると嬉しいです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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