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2008.08.16
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正直言えば、たくさんのシーンの撮影が続き、空き時間にはウスイさんの演技を見たり、いろんな話を聞いたり、で、夜仕事を終えたときには、その日撮ったキスシーンのことなど、もう俺の頭には何も残っていなかった。しかし、携帯のメールをチェックして、それを思い出す。
『キスシーンっていつ撮影なの?』
ミリからだ。ミリの哀しい心ごと思い出して、辛くなる。
『今日だった。もう終わった』
・・・なんて、メールで済ませるわけにもいかない。ちゃんと顔見て、、メールの着信時間は、午前中だ。もう、ここまで待たせたんだ、返信はせずに直帰して、話そう。そう決めて、俺はタクシーを拾った。

だけど、マンションまで帰りつき、部屋のドアを開けて、その人気のなさに、俺は、何がなんだか分からなくなる。ミリが、、いない?俺は電気をつけ、ドアを入ると条件反射的に外しかけていた腕時計を確かめる。もうすぐ日が変わる。ケータイを確かめるが、今朝のメール以外の連絡は入っていない。すぐにミリに電話をかけようとして、テーブルの上においてあるメモに気がついた。

『ケースケ。お帰りなさい。もしも、私の方が遅かったら、だけどね。お父さんと食事してきます。ミリ』

ミリの可愛い字。なんだ、お父さんと、、と、ほっとしかけて、でも、遅すぎるだろ?と思う。・・・実家に泊まるんだろうか?そんなこと、、したことないんだけど。それにそうするなら、連絡してくるだろう。お父さんが一緒なら、、何も心配はないだろうけど。。
だけど、、、夕べのキス、背中、大きな不安になって、押し寄せてくる。
俺は、やっぱりミリのケータイにかけてみる。・・・出ない。お父さんにかけるわけにも行かないしな。実家にかけるのも、、遅いか。。俺はいてもたってもいられなくなり、とりあえず、ミリの実家まで行ってみることにした。

マンションのエントランスを出て、何かにせかされるように、走り出す。だけど、実家まで行くまでもなく、公園の途中で足を止める。遠くから、こちらに向かって歩いてくるミリが見えたから。普段は着ないエレガントなワンピース。めちゃおしゃれしてるし。だけど、服装が変わっても、遠目でも、俺にはミリが瞬時に分かる。

ただ、足を止めたのは、ミリの隣を歩いている人間がいたから。
背の高いスーツ姿。お父さんではない男。俺は見たこともない人間だった。
ミリとその人は、並んでゆっくりと歩いている。俺に気づくこともない。
俺は、ミリの安心しきったような、楽しそうなその様子に、夕べとは全然違うその様子に、そこから動けなくなる。

・・・誰なんだ?


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最終更新日  2008.08.16 11:23:03
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