矛盾 with Re檬
「夏なんてこなくていいよ」そう塞ぎこむ心は曇天されど外の世界は色付いて生命の連鎖が絶えない季節忘れたかあの丘に吹いた風は春の匂いを運んでいただろう本当に忘れたの?あの丘で見下ろした淡い春の色彩を蒲公英は揺れツツジは微笑み藤棚はうつむきながら囁く青竹は真っ直ぐ伸びて光と影を遮り苔はひっそりと階段を覆うセピアのスケッチならもう捨てたよだって寂しいじゃないか「そろそろ目覚めようか」そう呟きながらもまだ身体は睡眠を求めカーテン越しの黄色が眼にささるのだ「ああモノクロームでいいよ」反射的に手をかざし色を拒絶する「その色彩をおくれ」心は夏のフォトグラフを求める眼を閉じるべきか克目すべきか心電図の波の如き自問自答どちらが勝つか閉塞と解放季節が始まっても己の中ではいつまで経っても矛と楯