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カテゴリ:戦争映画
2007 アメリカ・日本 監督:リサ・モリモト
出演者:ドキュメンタリー 89分 カラー WINGS OF DEFEAT TOKKO-特攻- DVD検索「TOKKO-特攻-」を探す(楽天) 日系二世アメリカ人女性が製作した、特攻を題材にしたドキュメンタリー映画。製作はアメリカと日本の合作と言う位置付けだが、カナダの国際映画祭で上映して評価を得たために、日本での公開となったそうだ。 監督の日系二世リサ・モリモトは、叔父砂田敏夫が元特攻隊員であった事を知り、それまで「カミカゼ」は9.11のような自爆テロと同じ狂信的なものという価値観と、柔和な叔父のイメージの相違点に疑問を持ったことから製作に至ったと言う。すでに叔父が亡くなっていたことから、自らの親族、日本人の元特攻隊員、特攻機に沈められたアメリカ駆逐艦生存者などへの取材を通して特攻(神風)の真実に迫っていく。 海外での評判も良いということで、ちょっと期待をしたのだが、結論から言うとやや肩透かし。特攻に興味を持ったというアメリカの監督の製作というだけに、やはり内容的には初心者レベルで、掘り下げがかなり浅い。 もともと海外向けの作品であろうから、日本軍の特攻作戦や特攻隊員の心情に迫る作品という意味では貴重で評価されるべきものだろうとは思う。とかく、9.11自爆テロと同様だとか、嬉々として敵艦に突入する化け物というイメージを外国人が持ち続けることは、日本人として悲しいことであり、画期的な作品であることは間違いない。 しかし、あくまで日本でドキュメンタリー映画として見た場合、あまり目新しい事はないし、特攻を扱うには最低限押えて欲しい事柄も多々抜け落ちている。また、日米の記録映像を多用しているのだが、単に背景映像としての利用であり、映像と内容の関連性や正確性がかなり乏しいのもドキュメンタリーとしては致命的。日本にはもっと良く出来たドキュメンタリー作品がたくさんあるので、むしろ監督自身の気持ちや叔父の真実を探るといった構成の方が面白かったのではないかと思う。 本作に登場する元特攻隊員は著名な方ばかりで、海軍百里原航空隊所属の江名武彦氏(予備学生 偵察)、上島武雄氏(予備学生 操縦)、中島一雄氏(乙種予科練 偵察)、浜園重義氏(丙種予科練 操縦)の4名。江名氏は神風特別攻撃隊第三正気隊の九七式艦攻偵察員として出撃し、黒島に不時着後帰還している。浜園氏と中島氏は九九式艦爆のペアで出撃後に敵戦闘機3機と交戦し、被弾しながらも帰還した経歴を持つ。 本作で貴重なのはこうした方々の生の声を聞けることであろう。3,000名余の特攻隊員には当然のことながら一人一人の人生や思いがあり、たった4人とはいえ実に様々な思いがあったのだと知らされる。予備学生出身の二人はやはりインテリだったということを髣髴とさせる語り口で、世情を達観し、自身の置かれた立場を十分に理解していたように見える。それに比して予科練出身の二人はより熱情的な雰囲気が強い。それぞれがいかに死に直面していったか、その違いを知る事で一口に特攻と言えども、死の覚悟とは単純ではないと思い知らされる。 興味深かったのは、浜園氏の凛とした語り口で、歴戦のパイロットらしい強い意志と信念を感じた。優しい笑みを浮かべながらも固い信念が顔に表れているのだ。今の日本人にはなくなってしまった何かを強く感じさせる。 このほか、数人の歴史家や作家が登場するが、今ひとつ素性が良く分からない。元東レ社長の作家森本忠夫氏も特攻について語るが、このあたりの人選が適当なのかどうかはやや疑問。 本作の中で気になった証言をいくつか。 特攻で撃沈された駆逐艦ドレックスラーの生存者が「日独に追い詰められていれば、あれだけのこと(特攻)をやるアメリカ兵だっていただろう」と言っている。これは多分その通りだろうと思う。事実、アメリカ兵も陸上戦などでは自己犠牲の攻撃を行った例もあり、追い詰められれば日本軍以上だったかもしれない。 元特攻隊員は戦後に多くを語らなかったことは良く知られている。上島氏は終戦時のことを「生きている(ことに驚いた) どうしていいかわからなかった」と言っている。自身を死んだものとして扱ってきた人にとって、いきなり生を突きつけられることはどんな気持ちなのだろうか。多分、彼らはすでにその時に一度死んでいるのだろう。死んだ者が何も語らないのは当然な事なのかもしれない。 おまけだが、作品中に登場するアニメ・・・チープなんだが、なんだかいい味出していた(笑)。 興奮度★★ 沈痛度★★★ 爽快度★ 感涙度★★ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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