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カテゴリ:医学
運動の頭部外傷に注意「隠れ脳振とう」も スポーツは体によく楽しいものですが、思わぬけがをするリスクもあります。特に心配なのが頭のけが。胃の父関わる頭蓋内出血や骨折だけでなく、衝撃による脳振とうは、軽傷でも繰り返すと生活に支障が出ることがあります。脳神経外科医でもある福岡大学の重森裕教授(スポーツ医学)は「頭部傷害は手足のけがに比べて頻度は低いが、発生した時の健康の影響が大きい」と指摘。「予防策に加え、起きた場合にどう対処したらいいかを多くの人が知っておく必要がある」と語っています。
昨年W杯でも批判が 昨年開催されたサッカーのワールドカップ(W杯)カタール大会では、飛び上がったイランのゴールキーパーが味方の選手と正面衝突して頭部外傷を負いました。キーパーは中断後もプレーを続けましたが、結局、試合ができなくなり短歌で運ばれました。 国際サッカー連盟(FIFA)は脳振とうが疑われた場合は出場を続けずに交代させるルールを定めており、チームやFIFAの対応の遅さに批判の声が上がりました。重森さんは「大事な局面で選手交代をしたくない気持ちも分かるが、世界最高峰の大会としてお手本を示すべきだった」と話しています。 頭部外傷の死亡例はボクシングなどで知られていましたが、アメリカンフットボールやラグビー、柔道などでも報告され、ここ数十年で世界的に研究が進んでいます。
ヘディング禁止措置 頭への衝撃が繰り返されると長期的な影響も懸念されます。英国の元プロサッカー選手を調査すると神経変性疾患で死亡するリスクが高かったのです。米国や英国では頭への衝撃を減らすため、試合や練習で子どものヘディングを禁止する措置が取られました。日本サッカー協会(JFA)は指導や練習に配慮するよう求めるガイドラインを出しましたが、禁止にまでは踏み込んでいません。 「サッカーの面白さに関わるので大人までヘディングを禁止するのは無理があるが、子どものうちは頭への衝撃を減らしたほうがよいのは間違いない」と重森さん。「親やコーチなど周囲の人のリスク啓発に加え、頭を打った時に本人が適切に対処できるような教育が必要だ」と語ります。 頭を打って認知機能が低下した状態で運動を続けると、再び頭を打つ心配もあります。度重なる脳振とうで引退を余儀なくされる選手もいるといいます。 重森さんが大学生のスポーツ選手を調べると、本人に自覚がない「隠れ脳振とう」が少なくないことがわかりました。10人に1人が自分の症状が脳振とうに当たらないと考えていたのです。
心配ならすぐに受診を
時間がたって症状悪化も 頭を打ったらどのように対処すべきなのでしょうか。日本臨床スポーツ医学会は一般向けに「頭部外傷10カ条の提言」と題した手引きを公表。専門家による国際会議も脳振とうが疑われる際の対応を簡潔にまとめた手引き「CRT5」を発表しています。 「まずはプレーを中断し、選手を試合から外すのが原則」と重森さん。意識喪失や、体・感覚の異常がある場合はすぐ救急車で医療機関に運びます。外見は大丈夫でも頭蓋内出血が起きていることがあります。 さらに普段と変わった様子がないか周囲の人がよく観察します。本人に違和感の有無を聞いたり、今日の日付や試合のスコアを答えさせたりして記憶などの認知機能を評価します。気になる点があれば試合には復帰させず、医師の診察につなげる必要があります。 重森さんは「脳振とうは時間がたって症状が悪化することもある。何度も繰り返し評価し、心配ならすぐに受診するのが大切」と話します。 CRT5の日本語版は、日本脳神経外傷学会の学術誌「神経外傷」2019年42巻1号の特別寄稿で見ることができます。
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Last updated
April 29, 2024 05:39:44 AM
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