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ラッコの映画生活

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2007.02.01
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IL DESERTO ROSSO
Michelangelo Antonioni

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寸評:アントニオーニ初のカラー作品、初期イタリア時代およびモニカ・ヴィッティ最後の作品。ヴィッティは美しいし、映画の完成度はほぼ完璧。

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この映画にはアクションが全くなく、テンポも超ゆっくり。だから合わない人には誘眠効果絶大。モニカ・ヴィッティ演ずる主人公ジュリアナが他者や世界と接点を見出せずに精神不安定の状態にありますが、何かがあってそういう精神不安定になることを描いたのでもなければ、その精神不安定からの回復を描いたものでもない。ただその精神不安定の状況自体を描いたとも言え、とりたてた出来事などは出てきません。

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ジュリアナは彼女と対になる人物コラドと出会う。正常な精神を保ちながらもコラドも同類。自分の問題の解決の糸口を見出すためもあってか、少なくとも他の登場人物の中で一人ジュリアナの孤独や不安を理解し、手を差し伸べるけれど、結局ジュリアナの状態は映画の最初と最後で何の変化もありません。アントニオーニ初のカラー作品で、普通には色のあるこの世界を無反省にカラーで撮ったのではありません。もちろん非現実的な色が出てくるわけではありません。全体を霧や煙や曇天の生彩のない背景の中に、大化学工場の配管やドラム缶などを赤等に原色で表現した。そのために息子に語るお話の空想の映像を除いて晴天の青空は出てきません。この撮影のために草や木の葉などの緑を、彩度の低い色に着色もしたらしいです。全体が彩度のない灰色の背景に、特に黄色は毒・死・恐怖を表す色として、赤は情欲や情熱を表す色として使われています。ちなみに画家アンリ・マティスにLA DESSERTE ROUGE(赤い食卓の下げもの)、日本ではたぶん「赤のインテリア」という絵画作品があって、アントニオーニはタイトルをここから取ったらしい。一場面でこの絵画と同じ画面構成が一瞬再現されています。

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(以下ネタバレ)
ジュリアナの夫はウーゴは工場経営の大企業家。二人には10歳くらいの息子ヴァレリオがいる。普通的には幸せなはずの3人家族。ジュリアナは息子を連れて工場の敷地を徘徊している。工場ではストが行われていて、路上にはスト中の労働者の姿。その一人がハンバーガーを手にしている。ジュリアナは突然彼に近付き、店まで行けば買えるという男から問答無用で食べかけのハンバーガーを買い取り頬張る。そんな異様な彼女の行動から映画は始まる。

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夫ウーゴの旧友コラド。彼は父親を継いでやはり企業家だが、目的意識もなければ、ジュリアナ同様やはりこの世界や人々との接点を持てないらしい。工場内でウーゴはジュリアナにコラドを紹介する。コラドはパタゴニアに工場を起業するためのイタリア人技術者や労働者を募集するためにウーゴに相談に来ていた。ジュリアナは慣れない運転で事故を起こし、それ以来精神が不安定で入院していたとウーゴは言う。でもこの事故の話が本当なのか、それとも精神不安定でジュリアナが自殺をして入院し、それを隠すための作り話なのか、どちらかはよくわからない。とにかく彼女が自殺未遂をしたのは確からしい。

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退院した彼女は近くの小都市に店を開くと言うようになった。その店の彼女。まだがらんどうだ。そこをコラドが訪れる。

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何の店をするのか問われたジュリアナは、まだ決めていないけれど陶器の店にしたいと言う。現実的な営業意識など彼女にはない。コラドは自分の居場所が見つけられずに、これまで同じ場所に長く住んだことがない。引越してばかりだと語る。外に出た二人。そこは人は誰もいなければ、近くに商店などもない寂しい通りだ。商売などが成り立つ場所ではない。

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その日コラドはある技術者を訪ねてフェラーラに行くというのでジュリアナも同行する。訪れた技術者の家。妻が応対で出るが、この夫婦にも2人と同じような無目的不確かな生活を感じる。報酬が良くてもそのつもりはないと、妻はコラドの提案を断る。

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ある日港の岸壁に面した知人の小さな小屋別荘に集う人々。ウーゴもジュリアナもコラドもいる。酒を飲んで、ベッドだけの小さな小部屋での男女の乱痴気騒ぎ。ジュリアナにはここでも人々との接点が見出せない。寒いと言って暖炉に薪をくべるが、薪は足りない。たまたま狭いベッドの上でコラドが足で踏み抜いてしまった赤い壁板を火にくべる。次から次へと壁板を剥がしては火に。いちばん熱心なのはジュリアナとコラドだ。コラドは木製の椅子まで破壊して薪にする。2人にとって部屋の寒さは心の寒さの象徴でもあり、だから心の寒いこの2人が熱心なのだ。

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やがて岸壁に入ってきた大きな外国船。伝染病者の発生を知らせる黄色い旗が掲げられる。(余談ですが、調べてみたら黄色い船旗は「船上すべて健康なので、検疫を求む」という意味らしい。この辺はよくわかりません。)ジュリアナは恐怖から小屋を後にし、皆も車のところに戻るが、霧の中でただ不安そうなジュリアナを見守るだけの人々。突然一人車のハンドルを握ったジュリアナは岸壁を先端の方へ走り去る。コラドなどが行ってみると海に落ちる寸前で車は止まっていた。彼女は再び自殺を考えたのか。

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夫が出張で出かける。ある日息子のヴァレリオが脚が動かなくなったと訴える。心配するジュリアナ。息子にせがまれ小島の海岸の少女のお話をする彼女。このお話は、映画の他の大部分の現実世界との対比で、美しい晴天の空と海の映像で描かれるが、彼女の心の状態を表すかのような内容だ。しかし息子の脚は意識的か無意識かの息子の仮病であった。ちゃんと歩いている息子を見て彼女は錯乱する。自分にとっての唯一の現実世界との接点と思っていた息子にも否定されてしまったのだ。

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錯乱状態の中でコラドの部屋に来たジュリアナ。錯乱状態のまま彼女はコラドに身を任せるが、唯一の解決の糸口かと思われたコラドも何の解決にもならなかった。あてどのなく港のロシア船に乗ってアナザーワールドに行きたいと思う彼女だが、出てきた船員とは言葉は通じず、最後に船員はただ「I love you!」と実体的に無価値な言葉を口にするだけだ。

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再び冒頭と同じく息子を連れ工場の敷地を徘徊するジュリアナ。最初と何も変わってはいないのだった。

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ヴィッティ4部作の最後ですが前作の『太陽はひとりぼっち』まではどちらかと言えば、ヴィッティ演じる主人公女性と特定の誰かとの「愛の不毛」や「人間間のディスコミュニケーション」でしたが、既に『太陽はひとりぼっち』でもその傾向が見られた、世界全体、あるいは人々全般との「無接点感」や物の世界との関係を描いていると思います。

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だから意味は少し違いますが、題名的に考えるなら「『ある女の存在証明』の不能性」と言えるかも知れません。アイデンティティーというのは自分と外界との関係から自分の中に構築されるものだからです。その外界との関係を持てないのがジュリアナなわけです。しかしそれはここに描かれた工場に象徴されるような「単純な工業化による人間疎外」などというものではない、もっと根源的な現代人の心の問題だと思います。だから工場のカラフルな配管などの風景は、美しいものとして描かれています。また2人(特にジュリアナ)は経済的には金持ちで、生活のための嫌でもの仕事の必要性がない有閑な環境にあるわけですが、それは有閑だからこうした精神に置かれるということではなく、有閑だから描き易いということで、フェラーラの技師の場合もそうであるように、誰もにもありうる空漠感だと思います。

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Last updated  2012.03.31 22:09:05
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