カテゴリ:本
2003年4月発行
装画・装幀 村上豊 二百六十二匹の黄金虫・ 橘実之の娘、虫好きの露子姫に連れられ遍照寺へと赴く晴明と博雅。 眠る前に明徳が「涅槃経」を誦しているとどこからともなく黄金虫があらわれ、捕まえても朝には消えているという。 露子姫の調べたところ、その虫は二百六十二匹・百十六種おり、その中でも多いのが足が四本ある虫(二十一匹)だったとか。 実はそれまで毎夜、寛朝様に読まれていた「般若経」の文字が彼の不在で読む人がいなくなった淋しさから、 自分のことも読んでほしいと明徳の元にやってきたのであった。 ちなみに、一番多い四本足の虫の正体は"無"である。 鬼小槌・ 雪と水、巡る呪を眺める晴明と博雅― ひと月ほど前から姿を消した平実盛。 熱がり、寒がり、痛がり、しまいに猿のように叫ぶという猿叫の病に臥している藤原中将。 中将のところに赴く二人は得たものの半分は自分のものだという蘆屋道満に出会う。 鬼に魅入られ、常人の目に止まらなくなった実盛は道満に救われるが、 その間に恋しい人を中将に取られた悔しさから、恩ある中将を鬼小槌で猿叫の病にしていたのだった。 それを払うことで褒美をもらい、寒い冬を越そうとしていた道満の目論みは晴明によって潰えるが、三人でのどかに酒を酌み交わす。 棗坊主・ 移ろいゆくものは見えるが季節は目に見えぬ― 叡山にある祥寿院に恵雲と名乗る僧が訪ねてきた。 訪ねてきたというよりも、元々ここの座主だという。 だが、彼を知るものはなく、ただ五十年前にそういう名の座主がいたとの記録が残っていた。 彼は南斗星と北斗星の碁を眺めているうちに時が経ち、亡くなっていた。 骸からは棗の樹が生えていた― 東国より上る人、鬼にあうこと・ 美しいというものがこの世にあるためには、それを見るものと、見られるものが必要― 晴明の屋敷に逃げ込んできたのは東国に住むという平重清。 野宿しようと思った先に見つけた荒れ屋で休んだが、そこにはもののけがいた。 化け物の正体(大鼠)を調べた清明は猫を連れて退治に出かける。 覚(さとる)・ 人の心を読み、食べる唐土の妖魅・覚を何も思わないことで撃退する晴明。 針魔童子・ 播磨国の性空聖人の元に来た毘沙門天の使いでもある東寺の善膩師童子。 彼は自らの落ち度から性空の下を出される。 だが、帰っても毘沙門天のお怒りを買うだけ、どうにかして性空聖人に追ってきて欲しいと彼の大事な針を持ち出すが、 その針が性空の元に返ろうと暴走。 それを晴明が治め、針は播磨国出身の道満の手で戻されることに― この世は"呪"によって成り立っていると説明する晴明と、 そう言われるとこんがらがってしまうが、自然に、身体で感じている博雅のなんともいえないバランスが良い。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
January 6, 2006 03:57:34 PM
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