カテゴリ:本
登場人物がどこかでつながっている短編集。
バンク・ 銀行強盗に押し入られた銀行。 人質は手足を縛られ、顔には縁日で売っているようなお面をかぶらされていた。 理屈で人を困らせる陣内付き合ったがために巻き込まれた鴨居は 同じ人質として知り合った盲目の永瀬の推理に驚きつつも納得する。 彼は言った「強盗犯も工員もグルだ」と― 強烈な陣内をはじめ、彼の友人・鴨居、冷静な永瀬などのキャラクターはもちろんのこと、話全体に魅力のある匂いがする。 陣内と父親の確執が(物語全体の)影のベースとなっている。 主人の命令に徹し、存在感すら消していた盲導犬・ベスも陰の立役者だ。 チルドレン・ 家庭裁判所で働く家裁調査官・武藤は先輩の陣内に振り回され、担当する子供たちに時に騙され、時に自信をなくしながら今日も働いている。 担当した木原志朗は万引きをしてここに送られてきた。 付き添いの父親との関係はかなり緊張感の走るものだったが、 陣内さんの悪戯めいた差し入れの本によって変わっていく。 そして、その後起こる志朗誘拐事件。 そこで彼と父親に隠されていた秘密に気付くー "相変わらず"のマイルールで邁進しながらも(他人に真似できない方法だが)優秀な調査官になっている陣内に笑いがこぼれる。 いいことではもちろんないけど、最後の志朗の取ってしまった行動もニヤリとさせられる。 レトリーバー・ 優子が上司のなじる言葉を聞き流しながら思い出すのは 恋人の永瀬と優子のライバルである盲導犬・ベスと共に失恋した(告白して玉砕した)陣内を待っていたときのこと― 自分が失恋したから時が止まったと豪語する陣内に付き合ううちに待っていた公園で起こった事件の真相に気付く永瀬。 この頃の陣内は家裁調査官を目指している頃。 以前、彼がバイト中に人を殴ったことがある。というのは後の話への前振り。 チルドレン2・ 少年事件担当から離婚などを扱う家事事件担当へ移った武藤と相変わらず少年事件担当のままの陣内。 武藤が担当するのは不倫して離婚(のち、不倫相手と再婚)を繰り返す大学教授と現在の妻による娘の親権争い。 陣内は教授と陣内が担当する年長少年(18歳)アキラを自分の出演するライブへ来いと誘う。 「家裁の調査官は奇蹟を起こす」自分の言った言葉に責任を持たず次には「駄目なものは駄目なんだ」と言ってしまう陣内。 だが、そんな陣内だからこそ、結果的に奇蹟を起こしてしまうのかもしれない? 辻褄が合いすぎている話であっても、"アリ"と思わせるのは陣内のキャラクターにおう所が大きい。 子供を表す英語「CHILD」は複数になると"childs"ではなく「CHILDREN」となる。 つまりは別物になる(集団になると子供は変貌する)。という言葉、妙に納得してしまった。 イン・ 優子と共に陣内のバイトを覗きにデパートの屋上へ来た永瀬(とベス)。 陣内は見当たらず、飲み物を買いに言った優子の帰りをベンチで待つ。 仙台市内の強盗事件に巻き込まれてから一年後の話。 陣内が「吹っ切る」話でもある。 仲が良いといわれて、"自分は嫌いだから先に食べてしまう「パンの耳」を親は好きだと勘違いしているのを知って困惑する"様に例えた鴨居と彼に「パンの耳」に例えられた陣内の関係がなんとも面白い。 優子と永瀬とベスの三角関係?も微笑ましい。 コミカルでありながら、のどかで温かい気持ちになる一冊。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
February 9, 2006 03:47:08 PM
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