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トト(ヨークシャーテリア:享年17歳)

小さな小さな弟~トト~
toto





実は今回、この『15匹の天使達』を作るにあたって、一番時間がかかり
頭を悩ませたのが、このヨーキーの「トト」です。
この子のお話を一番書きたいのに、書けない。
思い出がたくさんあり過ぎて。


キリタを家族に迎えて1年が過ぎた頃。
ベルのお話の後半にも登場した、私の友達が犬を飼い始めました。
すっかり仲良くなった私達。
友達は、犬を飼い始めた報告がてら、その犬を連れて遊びに来ました。


今までMIX犬しか見た事のない私。
初めて見たヨークシャーテリアに驚きました。
第一印象は


アジア人の髪の毛。


小さな身体と、その真っ黒な毛に、小学生だった私は思わず

「ねぇ、本当に犬なの?」

と聞いてしまった位です(笑)。


うちに遊びに来ていた、そのヨークシャーテリア。
名前はトトくんです。
友達が当時片思いしていた男の子のイニシャルがT.Tだったため
TOTOという名前にしたのだとか。

トトくんは、トイレのしつけもちゃんと出来ていたし
無駄吠えもしないし、人懐っこくてとても可愛い子でした。


ところが、ある日を境に、トトくんがうちに遊びに来る事は
なくなってしまいました。
小型犬というのを知らなかった私は

「きっと身体が大きくなってきたから、連れて来れなくなったんだろう」

そう思っていました。


そして、しばらくたったある日。
今度は私の方が、友達の家に遊びに行く機会がありました。
友達がうちに来る事はあっても、遊びに行くのは初めてです。


友達の家に到着。
玄関先で友達の名前を呼び、友達が玄関を開けました。

と同時に、ものすごい異臭が、私の鼻をつきました。
そして家に上がり、リビングに通され、言葉を失いました。


リビングには、ケージが1つ。
その中に、以前見た時とは明らかに姿の変わってしまった
トトくんがいました。

けたたましく吠え、ケージがなかったら間違いなく噛み付きそうな勢い。
そして、ボーボーに伸び、毛玉でもじゃもじゃになった被毛。
ケージの中は、糞尿まみれ。
ケージの中に入ってるフードボウルも、糞まみれでした。
身体がとても痒いのか、バリバリと身体を掻き毟るのですが
伸びきった爪で、毛玉だらけの身体を掻くので
爪が毛玉に引っかかり「キャインキャイン!!」と騒ぎます。


言葉を失ってる私の横で、友達が突然
キャインキャインと叫ぶトトくんに向かって


「うるさい!!」


と怒鳴り、ケージに向かってTVのリモコンを投げつけました。
リモコンは、後ろのカバーが外れ、電池が飛び散りました。


「ねぇ、一体どうしちゃったの?」


私は友達に聞きました。
すると友達はこう言いました。



「うるさいしバカなんだもん。飽きちゃった。」



この衝撃的な日を境に、私はもう友達の家に行く事はなくなり
友達とすっかり疎遠になりました。


そして、しばらく経ったある日。
偶然私の母が働く会社に、この友達とお母さんが
お客さんとして来たのだそうです。

トトくんの現状を母には話していなかったので、母はまだ
私と友達が仲良くしているのだと思い、友達のお母さんと私の母が
すっかり仲良くなってしまいました。


何度か友達のお母さんが、お客さんとして、友人として
母の会社に訪れるようになったある日。

「ねぇねぇ、ちょっとお願いがあるんだけど」

友達のお母さんから、こんな事を言われたのだそうです。



「私達、新しい家に引っ越す事になったからさ。
 トトの事を手放そうと思うんだけど。



トト、3万円で買ってくれない?



もちろん血統証もあるし、実際は15万円で買ったんだから
3万は安いと思うよ~。」


母はこの時、ペットが飼えない所にでも引っ越すのかと思い
仕事中だったため、それ以上詳しい話を聞くのは後で…という事で
とりあえずその日の夜、仕事帰りに友達の家に言ったのだそうです。


友達の家に着き、家に入り、トトくんが置かれている
劣悪な環境に驚いて言葉を失った事は、言うまでもありません。

しかも、よくよく話を聞くと、友達の家は借家の一軒家なのですが
隣にもう1軒、同じ大家さんの借家があり
そちらの方が部屋が1つ多いから、そちらに住むとの事。
だからペット不可ではないのです。

そして、さらに呆れたのが、友達の家にはさらにもう1匹
子猫を飼い始めていたのだそうです。
友達のお母さんが話している間も、トトくんは鳴き、叫び、暴れ。
その横で、私の友達はその子猫を抱き、頬ずりしていたのだとか。


当時、母・私・弟・キリタの3人+1ワンだった我が家。
母の収入だけで生活していたので、正直お金には余裕がなかったハズです。




私は家にいました。
そして、母が帰ってきました。

いつもより帰宅が遅いなぁ~と思ったら、母はトトくんを抱いていました。
ものすごい異臭。
そして、汚れたトトくんを抱いた母の会社の制服も、糞尿まみれでした。


母は半泣き状態で、トトくんに話しかけていました。


「辛かったね。おばちゃん、今まで全然知らなくてごめんね。
 もう今日からうちの子だから。ここがトトくんの新しいおうちだからね」



その母の言葉を聞いてビックリしたのです。
なぜトトくんが、うちの子に?
そして母から事情を聞き、トトくんがおかれていた劣悪な環境を
知っていた私は、もっと早くに母に話しておくべきだったと
後悔したのでした。


トトくんが我が家の家族になった日。
トトくん、1歳半。
トトくんの婿入り道具は、血統証1枚。
たったこれだけでした。


もちろん、この日から母も友達のお母さんとスッパリ縁を切りました。


次の日、母はまた遅い帰宅でした。
トトくんのシャンプー、首輪、フードボウル、ブラシ
被毛のコーティングオイル、トイレ、ペットシーツ などなど・・・。
大量の荷物を抱え、帰って来ました。

我が家の一員になったトトは、もうケージに閉じ込められる事もなく
うちの中を自由に行ったり来たりです。
眠る時は、私のベッドで一緒に寝ました。
おトイレもちゃんと出来るし、友達の家で狂ったように吠えていた
トトとは、まるで別犬かと思うくらい、無駄吠えもしないのです。


どうしてこんなイイ子が、あんな目に遭わなければならなかったのか。
そして、どうしてこんなイイ子のトトが、あんなに牙をむき出し
吠えていたのか・・・。
私達には、とうてい想像のつかない事でした。


トトが我が家へ来て、2ヶ月。
突然、トトが大の字になり、座っている私のところへ
ドドドドド~!!と来ました。

直感で「おかしい」と思った私。
トトの顔を見たら、白目をむき出し、鼻血を流し
息も吸っていません。
苦しそうにただ、全身に力を入れ、ガタガタ震えるばかり。


病院へ連れて行っても、原因は分からず。
その後も、こういう症状が何度かあったため
何件も病院を回りました。
ヤブ医者に引っかかり、入院させられ、多額の治療費を
請求された事もありました。

トトの病名は、最期の最期まで結局分からないまま
トトはその原因不明の病気と、一生戦う事になってしまいました。


発作がない時は、至って元気なトト。
キリタとも男の子同士だけど、とっても仲が良かったし
トトが言いたい事も、考えてる事も分かりました。
そしてトトも、私が何を考え、何をするのか
全て分かってくれていました。

「お買い物行ってくるね」といえば、玄関でお見送り。
「お出かけするよ~」といえば、玄関を出て車の助手席に座る。

同じお出かけでも、トトは自分がどうするべきなのか
ちゃんと分かっていたのです。
トトには、言葉が通じてるとしか思えませんでした。


私は社会人になり、友達もたくさん出来ました。
みんな犬好きな友達ばかりで、休日に友達と出かける時は
友達もみんな、お出かけ先を、トトも連れて行ける場所を選んでくれました。


トトには1つ、すごい特技があって

「トト、にっ (^皿^)」と言うと、教えたワケでもないのに

「にっ (^皿^)」と笑います。

私の友達の間では

「トトくんって笑うんだよ」と、人気者でした♪


海、元朝参り、花火大会、バーベキュー、釣り。
どこへ行くにも、トトは必ず一緒。
家族とも、私とも、友達とも、いつもいつも一緒。


友達も、トトの発作のことはちゃんと分かってくれていたし
何よりもトトは、明日お出かけするというのが前日には
ちゃんと分かっていて、興奮気味になります。
そして、私を朝早く起こし、私がブラシで髪の毛をとかしていると
トトも一生懸命に私にしがみついて、髪の毛の毛先を
爪でとかすお手伝いをしてくれるのでした。

私にとってトトは、とても仲の良い弟のような存在でした。


数年後、私は就職の為、実家を離れました。
月に1~2度しか、トトと会えなくなりました。


そしてさらに数年。
私は結婚し、パパの実家にお嫁に入りました。
実家へ帰る機会はすっかり減ってしまいました。


でも私の頭の中には、いつもいつも可愛いトトがいて
実家に電話をするたびに、トトの話を母から聞いていました。


相変わらず、1~2ヶ月に1回、トトは発作を起こしていました。
目も白内障になりました。
寝ている事が多くなり、途中から一緒に生活するようになった
猫のモスとも遊ばなくなりました。
少しボケてしまい、あちこちで粗相をするようになっていました。


私よりもずっとずっと弟だと思っていたトトは
いつしか私の歳を追い越し、おじいさんになってしまいました。



ある日、またトトの発作が起こりました。
ところがいつもは10分程度で治まる発作が
30分たっても治まらず、心配になった母は病院へ
連れて行ったのだそうです。

最近出来たばかりで、初めて行く病院だったようですが
家から一番近かったので、急いで連れて行ったそうです。

すると「一晩入院だ」と言われたそうです。
歳をとってるのに、大丈夫だろうか・・・と不安になったそうですが
トトが助かってくれるのなら・・・と、トトを預け
後ろ髪引かれる思いで、母は病院を後にしました。


朝4時半。
家に電話がかかってきました。



トトは母のお迎えを待つ事なく
病院で、誰にも看取ってもらえないまま、息を引き取りました。


母はトトが心配で眠れず、起きていたのだそうです。
パジャマのまま病院へ向かい、トトを迎えに行きました。
最期まで苦しんだのでしょうか。
目を見開いたまま、亡くなっていたそうです。


そして、トトが亡くなったちょうど4時半頃。
実家から遠く離れたところに住んでいる私も
なぜか分からないけど目が覚め、起きてしまいました。
もしかすると、トトが私に挨拶に来てくれたのかもしれません。


母は、今でも自分を責め続けています。

トトの最期を看取ってやれなかった事。
そして、トトが亡くなったのは自分のせいだ・・・と。


母は決してトトを殺そうとして病院へ連れて行った訳ではありません。
それどころか、逆に何とかトトを苦しみから開放して欲しくて
助けたくて、病院へ連れて行ったのです。

何度も母にはそう言って聞かせたのですが・・・。
母は10kg以上も痩せてしまいました。
トトが亡くなり、数年たった今も苦しみ続け
まだペットロスが続いているのです。


トト、姉ちゃんはあなたに「幸せでしたか?」とは問いません。
あなたは間違いなく、幸せでした。
こんなにもお母さんに愛されて。

そして、姉ちゃんも本当に本当に幸せだったよ。
そして楽しかった。
姉ちゃんが小学生の時に初めて会って、そして姉ちゃんは大人になった。
姉ちゃんと一緒に育った、大切な弟。


小さな小さなトト。
小さな身体で、めいっぱい愛してくれてありがとうね。



「モスのお話」へ続く→

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