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ken tsurezure

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trainspotting freak

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2012.08.19
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カテゴリ:音楽あれこれ
まず思い出から語ることを許してもらえるだろうか。僕がストーンローゼスを初めてみたのは1989年の秋のことだった。彼らのデビューアルバムが発売されて、半年も経ずに実現した来日公演。一番最初の曲だったI wanna be adoredとWaterfallとI am the resurrectionの三曲のことを覚えている。
あまり上手な演奏とは思えなかったI wanna be adoredが混沌の中から一つの形になって最初のビートが打ち鳴らされたとき、会場は不思議な高揚感の磁場を形成した。あの不思議な高揚感は何だったのだろう。新しい時代の始まる音?新しい音楽が生まれた瞬間?その何だかよくわからない不思議な磁場がそのライブの全てだった。
その頃僕は18歳で何も持っていなかったけど、希望だけはたくさんあった。未来は漠然としているけど、この先には何かとても素晴らしいことが待っている。何の根拠もなくそれを信じることができた。それがきっと若さの証なのかもしれない。そんな記憶とごっちゃ混ぜになってローゼスのファーストライブを覚えている。
その後ローゼスは1995年ごろに解散してしまった。もちろんセカンドは買ったし、武道館公演は見に行った。だけど僕にとってのローゼスは1989年の秋のイメージが大きい。
2000年代を越える頃になるとローゼスの歴史的評価は定まってしまった。90年代の幕開け。セカンドサマーオブラブの代名詞。スパイクアイランド…。解散後数年くらい経つ頃にはローゼスは伝説のバンドに変わってしまった。
2011年の秋、ローゼスの再結成が発表された。そして2012年の夏に来日が決まった。フジロックフェスティバルの初日のトリ。
僕はそのライブ会場である苗場のグリーンステージの前にいた。夢みたいだと思った。フジロック、苗場、ストーンローゼス…。
色々な期待に胸を膨らませている観客。そんな人々の人並みがだんだん多くなってくる。そしてついにその瞬間が来た。グリーンステージの照明がおちる。観客の大歓声がこだまする。4人が登場した。

混沌としたギターの音。モコモコとしていて形にならない音。それがだんだん一つの形になっていく。一曲目は二十数年前と同じ。I wanna be adoredだ。

 魂を売る必要なんてない 彼は既に僕の中にいる
 僕は憧れられたい。

あんまり上手とはいえない演奏。だけど会場ではイアンブラウンの歌に合わせてシンガロングが起こっている。グリーンステージが大合唱で一つになる。再結成発表後、夢にまでみた風景。それが今ここで起きている。
Mersey paradise.Sally sinamone…。やっぱりと言うか、ファーストの頃に発表された曲がほとんどだった。セカンドからの選曲はTen storey love songとLove spreadsだけだった。
本当は全曲シンガロングしたい気持ちだった。ステージ近くに集まっていた観客のみんながそんな気持ちだったのだろうと思う。だけど20年以上も前のことだ。歌詞を全部覚えている曲なんてそんなにない。
それでも観客のエネルギーはステージに伝わっているような気がする。I wanna be adoredのときはあまり上手ではなかった演奏。それがだんだん熱を帯びてきて何か不思議なうねりを見せ始める。
ローゼスが生み出したホワイトファンクの名作Fools gold。ベースのマニとドラムスのレニのコンビネーションはもちろんだけど、ジョンスクワイアーのワウワウギターがだんだんと冴えてきて、そのホワイトファンクは独特のグルーヴを展開し始める。それは1991年の追憶ではなく、その後色々なことがあった2012年のFools gold。
僕がこの日のライブで印象に残ったシーンの一つがWaterfallからDon't stopへの流れだった。2曲ともファーストに収録されている曲でDon't stopはテープの逆回転を使ったサイケデリックな曲だ。両方とも素晴らしいメロディーの曲でそれと同時に何か陶酔感の中に憂いの空気を感じさせる曲でもある。
Waterfallで抑え気味のリズムセクションがだんだん最小限のビートしか刻まなくなる。それにあわせるようにだんだんジョンのギターが断片的なフレーズを重ねるように響かせるようになる。そのギターの音はまるでローゼスのシングルに描かれていた抽象画のようだ。一つ一つのフレーズ自体は何の統一感もないようだけど、何かが描かれているのがわかる。それは多分「美」を描いていて、それに向かって音がまとまっていく。ジョンのギターはどんどん饒舌になっていく。その音で縦横無尽に苗場の夜を彩っていく。
 止まらないで 何かおかしいね 
 どうして君はそんなに光っているのだろう

Don't stopの混沌としたアレンジと憂いを含んだメロディー。それは「80年代の残滓」だと当時は思っていた。
でも今になって思う。それはそのまま90年代という時代を予告していたのだ。90年代という時代が例えば1968年のような希望と、世界が変わる前兆のような高揚感にみちた時代ではないということを。
1990年代に何が起きただろう。イギリスではどうなのか知らない。でも日本の90年代は「失われた」とよく言われる。
そんな「ポジティビティー」だけでは言い表せない90年代の不安の深淵を彼らはそこでのぞかせたのかもしれない。もちろんそれをメンバー自身がはっきりと意識していたのかどうか。それは全くわからない。2012年だから言える後知恵みたいなものだけど。
色々あった20数年を思い起こさせる演奏で「聴く」体勢に入ってしまった僕達を振起すようにmade of stoneやThis is the oneが演奏され、また苗場で大合唱が起きる。

 これだ これだ 僕が待ち望んでいたことは

またライブが始まったときの熱狂に戻された僕達。そしてI am the resurrectionが始まる。大合唱はピークを迎える。みんな知っているからだ。これが今回のライブの最後の曲であることを…。

サビの部分での会場での大合唱。それが終わるとベースの音が曲のブレークを告げる。それに呼応してレニのドラムスが一気にスパートをかける。ジョンのギターがそのビートに合わせて空気を引き裂くような鋭いギターの音を響かせる。徐々に高みへと向かっていく。イアンが観客を煽るようにステージを右へ左へ動いていく。どんどん熱気を帯びていくビート。
だんだん近づくフィナーレ…。
それは何分間の出来事だったのか。今となっては記憶が曖昧だ。

演奏が終わってからメンバー全員で観客に挨拶をする。初来日のときはしなかったファンサービス。

その日に復活したストーンローゼスは1989年を再現してくれるストーンローゼスではなかった。2011年に再結成を発表し、2012年に来日したストーンローゼスだった。そこにはセカンドサマーオブラブも90年代初頭の熱気でもなく、2011年に色々あって再結成し、2012年に活動しているストーンローゼスがいた。
ローゼスは世界ツアーのあと、新曲のレコーディングをするかもしれない。そんな噂を聞いた。2012年のストーンローゼス。それでいいのではないのかなと思った。


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Last updated  2012.08.19 13:36:00
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trainspotting freak@ Re[1]:世界の終わりはそこで待っている(06/19) これはさんへ コメントありがとうござい…
これは@ Re:世界の終わりはそこで待っている(06/19) 世界が終わるといってる女の子を、「狂っ…
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trainspotting freak@ コメントありがとうございます aiueoさん コメントありがとうございます…

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