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ken tsurezure

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trainspotting freak

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2013.11.01
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カテゴリ:音楽あれこれ
「ビートチャイルド」とは、1987年8月に熊本県の阿蘇山の高原地帯で開催されたロックフェスティバルなのだそうだ。動員数は約7万人と推測され、多分この頃に行なわれたフェスでは最大規模のものではないだろうか。
1987年当時、僕は16歳だったが、このフェスについては今に至るまで全く知らなかった。僕はその頃洋楽を主に聞いていたので、その当時は日本のロックについて全く知らなかった。僕が邦楽のロックを聞き始めるきっかけとなったブルーハーツとの衝撃的な出会いは1987年の秋だった。そういうわけだから、僕が「ビートチャイルド」というフェスについて知らなかったことはそんなに不自然なことではない。
そのフェスについての記録映画が最近公開された。「ベイビー 大丈夫か beat child 1987」という映画だ。
特別興行ということで当日券が2500円と高額であったが、感想としてはそれだけのお金を払ってでも見に行ったかいがあったというものだった。

冒頭で雨に濡れる観客席がまず映し出され、そのあと(多分)前日のアーティストたちのリハーサル風景が映し出される。開放的な高原の空気の中、とてもリラックスしながらリハーサルをしているのがわかる。
これは僕の想像だが、このフェスを主催した人はこのフェスをこんな感じで主催したのではないだろうか。夕方から始まって朝まで、一日中ロック漬けで盛り上がりながら、楽しい時間を何万人ものお客さんと一緒に共有できればいい。
しかし、開場してから数時間後にこのフェスは大きな試練にぶち当たる。フジロック第一回目と同じく、雨だ。
この映画の映像を見た感じではかなりの大雨であるように見える。スコールとか集中豪雨といっても大げさではないだろう。これと同じ程度の雨量と時間の集中豪雨は僕もまだ経験したことがない。僕がフェスで想定している雨天用の重装備でもここで一晩過ごすのはかなりきつかったのではないだろうか。阿蘇山の高原であるということを考えるとこの雨は相当寒かっただろうし、凍えてしまう恐怖を感じたお客さんもいたのではないだろうか。
このような荒天から始まったフェスであるが、多分フェスの主催者も参加したお客さんもこの豪雨を想定していなかった。そういわざるを得ない。
薄着で雨に濡らされ震えながら立ちすくむ客。こうした豪雨には全く対応できない軽装備で何とか雨をしのごうとしている客。そうした姿がカメラで映し出される。
そしてステージのセッティングもこの集中豪雨を想定していなかった。ステージには屋根がなかったみたいで、演奏している人々にも凄まじい雨が降りかかってくる。こんな状態でよく感電事故が起きなかった。それが幸運なことのように思えるほどだ。

このフェスになぜ7万人もの人々が来たのか。それはこのフェスに登場するミュージシャンを見ればわかる気がする。
ブルーハーツをトップバッターに、レッドウォーリアーズ、BOOWY、岡村靖幸、白井貴子、尾崎豊、ストリートスライダーズ、ハウンドドッグ、渡辺美里、佐野元春など、まさに1987年の日本のロックシーンの旬な人々が出演しているからだ。
このときは1987年。今となっては大物や伝説となったミュージシャンもまさに現役で、明日はどのようなことが起こるかわからなかった。
そうしたライブ映像は本当に貴重で、それだけで価値があるものといえる。
そして映画では基本的にそのとき出演したアーティストたちの3曲を収録しているという内容だ。
ブルーハーツやレッドウォーリアーズが出演したとき小降りになった雨は、再び勢いを増し、そのまま最後の佐野元春のステージまでやむことがなかった。
そんな客にとってもアーティストたちにとっても極限状態の中、繰り広げられるライブはすごいとしか言いようがない。少なくとも僕達くらいの世代の人々から見たらそう思える。
この映画を見て、本当に地獄見たアーティストは白井貴子だった。そう思った。再び強くなった雨のため1時間半押しで始まった彼女のステージ。曲の途中で突然ギターとベースの音が消えてしまう。楽器が鳴らなくなってしまったのだ。そしてモニターアンプも壊れてしまう。このままでは演奏もままならず、ステージでは白井貴子ひとりが何万人もの観衆の中で対峙することになってしまう。ソロとき思わず出てしまった言葉「ベイビー 大丈夫か」それがこの映画のタイトルになったのだろうと思われる。

そうした極限状態だったから生まれてしまった、アーティストたちのライブ。それは本当に鬼気迫るものがあるし、また1987年という時代が生んだ空気を本当に体現していると思う。
全体的にみて思ったのは、おのおののバンドのリズム隊がとても強いということだ。それを特に感じたのはBOOWY。氷室と布袋という非常に強力なシンガーとギタリストを支えるリズム隊のタイトさは、後のBOOWYフォロワーと次元が異なっているように思う。そしてバンド全体の演奏も本当に勢いがあり、なぜ彼らが伝説になったのかこの映像で実証されている気がする。
レッドウォーリアーズ、ストリートスライダーズ、ブルーハーツ。そうしたバンドはその後のバンドブームのロックに大きな影響を与えたが、その後のフォロワーと格が違うオーラを放っている。逆にそうした破格のバンドイメージがあったからこそ、その後のロックに影響を与えずにはいられなかったのではないか。そしてそのイメージは少なくともこの映画では虚像ではなく、それぞれ実質的な強さを備えていた。
好き嫌いはともかく独特の「重さ」を感じる尾崎豊のステージも、初期の貴重な岡村靖幸のステージも貴重な歴史記録だ。
そしてこの映画の最後は佐野元春の「サムデイ」で締めくくられる。朝が来て会場が明るくなった場面での「サムデイ」はとても印象深い。
一本の映画としてみると、ナレーションがうるさく感じられた。状況を説明するためには最小限のナレーションは必要であったかもしれない。しかしあまりにも説明過剰に思えた。それに感傷的な物言いも嫌な感じがした。それと尾崎豊が中島みゆきをカバーしたような情緒たっぷりな主題歌もあまり感心しなかった。
ただそれを差し引いても、1987年当時の日本のロックの記録映画として優れたものだと思う。

あれから二十数年もたった。2013年から振り返ってみて「ビートチャイルド」というフェスはどういうものだったといえるだろうか。
ある人が「ウッドストック」を評してこんなことをいっていたのを思い出す。ウッドストックは、ロックがこれだけの人々を動員できるビジネスであることを明らかにしたイベントだった。
「ビートチャイルド」も日本の「ウッドストック」だったのかもしれない。
日本のロックバンドを集めてフェスを実行し、かなりひどいことにはなったけれど興行としては「成功」した。それは日本のロックで何万人もの人々を動員できる「ビジネス」として成り立つ可能性がある。
1987年はベビーブーマー先行世代の1971年生まれの僕が16歳になった頃。バンドブームの象徴といわれる「イカ天」が放映されるのが1989年。
「ビートチャイルド」に集まった観客達は僕より2~5歳以上年上の人たちだろうが、ベビーブーマーが音楽市場に購買層として入ったとき、ロックはもしかしたら大きな金を産むビジネスになるかもしれない。それをこのフェスはそうした産業の人々に知らせたのではないだろうか。

例えば「ロックインジャパン」に行っている若いロックファンには、このアーカイブに納められた記録映像を「リアルロック」とは感じないかもしれない。あるいは能天気な歌にイラッとくるかもしれない。
それでいいと思う。何もしなくても時間は経つものだし、僕は確実に年を取った。そしてこうしたアーカイブを懐かしいと思ってしまうくらいになった。そしてそうした歌は僕らにとって等身大な世相の表現だったとも言える。

一応宣伝文句では、この映画をDVD化する予定がなく、映画でしか見ることができないとある。この映画に登場しているミュージシャンの顔ぶれを見ると、事務所の関係とか著作権の関係とか色々あるのだろうと想像できる。
少なくとも1987年に10代だった人々にとっては、貴重な映画で見る価値がある映画だと思った。





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Last updated  2013.11.01 14:36:41
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