見取り八段・実０段

陽介は死んだ。

死因は喘息の発作。

直人は殺されたと主張するが医師は取り合わない。



新谷の娘、空は、知らないお兄ちゃんと遊園地へ行っていたと言う。
抱えているクマのぬいぐるみを見て、新谷は息を飲んだ。


あの時、陽介のオフィスにあったぬいぐるみは・・・？
娘は陽介に監禁されていたわけではなかった。


あの時、新谷に送られてきたのは、ピストル型の護身用・催涙スプレーだった。
新谷は陽介のオフィスに行く時、護身用にそれを持っていった。

ぬいぐるみを見つけて、娘が監禁されていると思いこんだ新谷は
陽介にそれを向け、そしてスイッチを押した。


そして、陽介は激しい喘息の発作を起こしたのだった。




今回の一件は不幸な事故だったんです。
よって弁護人は、正当防衛を主張します。


新谷の弁護についた成瀬は言う。



そんな物は真実じゃない！
彼女を操っている人間がまだ捕まっていません。


では、捕まえて下さい。
それが警察の仕事でしょう。


それが、あんたの正義なのか！？


では、あなたの正義は何ですか？

正義の捉え方は人それぞれ違うでしょう。



正当防衛で釈放され、成瀬の前で涙を流す新谷。



空に何と言っていいのか。人殺しの娘だなんて。

私を人殺しにさせた人間が憎い。



しおりは教会で祈っていた。



私のせいかも知れません。

私が警察の判断を狂わせたのかも。


神父さんは、私の力は、神様から与えられた物だと教えてくれた。
私も、ずっとそう思っていました。

でも、違うのかも知れない。

これは悪魔から授かった力なのかも知れません。

私の中に悪魔が住んでいるのかも・・・



涙を流すしおりに、成瀬は言う。



あなたが悪魔なら、世界中に悪魔が溢れていますよ。

悪魔は別の所にいます。



悪魔は、どこにいるのだろう。

何の関わりもない新谷に人を殺させ、
しおりに自分を悪魔だと思わせる。

２人の女に自責の涙を流させたのは雨野真実。

成瀬自身だ。



復讐する事で、成瀬自身が悪魔になっていく。


僕だって悪魔になる事はあります。


と成瀬は言っていた。


あの日から、
それは、彼の中に住み始めたのだろう。


　　　　



しおりに、雨野真実から「女帝」のカードが入った宅配が送られてきた。



しおりは、直人の前でカードの残像を読む。



ハーモニカを誰かが踏んづけている

学生服を着た誰かが廊下を逃げている

白っぽい建物

風見鶏




送り主は私に死者の代弁者に成って欲しいんじゃないかって。



カードの水仙の花は死者を表している。

風見鶏は教会の近くにあった。

白い建物。そこは、直人の母校の中学校だった。




学校の中に足を踏み入れる。

過ぎた日の記憶が蘇る。


自分は、あの日、４人で誰かを追いかけていた。




すべての物が一つの全体を作り上げ、一つが他と響き合い、作用し合う

動けば動く程混乱する

使者の代弁者



そして、辿り着く。

あの日のあの場所へ。


カードの意味は

そして、殺されていく自分の周りの人間は


あの日の事件に関わった人間。



カードの残像と合わさっていく
直人の過去の記憶。


鳥肌が立つ。


やっと気付いたか！


成瀬領の声が聞こえてくるようだった




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