カテゴリ:読書
湊かなえ『豆の上で眠る』
この風変わりなタイトルはアンデルセン童話『えんどうまめの上にねたおひめさま』から来ています。 短い童話ですが、とても印象的。その内容が突飛なことと、 絵が浮かびやすいせいでしょうか?よく漫画家の方も小ネタに使っていますね。 元ネタ アンデルセン童話のあらすじ あるお城にずぶぬれになった自称お姫様と王様が訪ねてきます。 そのお城のお妃さまは「本物のお姫様ならこれでわかる」と ゲストルームのベッドにエンドウ豆の粒を置き、その上に羽布団を7枚重ねます。 次の日、お妃さまが自称 お姫様に寝心地を訊くと 「布団の中になにかあって、気になって眠れなかった!あざができた!」と 苦情を言われます。 あら、本物のお姫様なのね♪ とそのお城の王子と結婚させたというお話。 「赤い靴」や「パンを踏んだ少女」などで女性の虚栄心に これでもか!!と言うほど厳しい罰を与えたアンデルセンにしては????なストーリー。 なかなかシュールなストーリーですね。 今回、湊かなえのタイトルは秀逸ですが、文章がやや読みにくかったです。 文章があまりよく推敲されていない印象を受けました。 時系列が交差しても上手に書ける(『花の鎖』)作家なのに、、、。 ちょっとやっつけ仕事っぽいですね。 大学生になった女性の回想から始まります。 彼女の姉は優しく、かわいらしく、上品で、賢く、親の愛情を受けて育っていました。 その姉が小学校の時、遊び場から帰らず行方不明になってしまいます。 現在の記述から、姉がのちのちに帰ってきたことは分かります。 何が起こったのか?帰ってきた「姉」は本物なのか?がストーリーの主軸になるところ。 が、その部分より娘一人を失った家族の苦悩、母親の迷走、親族達の思惑、 妹の学校生活、友人関係の崩壊がリアルで重心を持って描かれていました。 最後まで読めばタイトルの意味も分かるのですが、、、、 『告白』や『贖罪』に比べると衝撃度も文章も残念な出来でした。 図書館で借りるか、文庫版になるのを待つか、人に借りるか、、、がいいと思います。 この作者の、大ファンでない限り、ハードカバーで買うほどのことはないかな、、、、と。 湊かなえのうまさを堪能したいのであれば、 こちらを推します。 日本推理作家協会賞受賞の「海の星」。 日本語の特徴を活かした短編で、ラストに膝を打ちました。 伏線もしっかり張り巡らされていて、それが嫌味になっていないところ すごいです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2021.01.27 10:29:19
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