『きよしこ』重松清
重松氏の作品は、どれも主人公の感覚が自分に近い。しかも、自分では気づいていない気持ちをちゃんと言葉にしてくれる。そんなところが好きで、結構たくさん読んでいます。中でも身につまされるのがこの『きよしこ』。吃音の少年の物語。家族に、友達に、憧れの人に伝えたい気持ちが山ほどあるのに、それを、ひたすら胸にためている少年。ただ、ドモって笑われないために-『きよしこ』というのは、主人公であるきよしの架空の友達。幼いきよしは、♪きよしこの夜、という歌を、切るところを間違えて「聖夜には『きよしこ』がやってくるんだ。その友達とは言葉がなくても通じ合えるんだ」と妄想するのです。現実では、人と通じ合えないから・・。主人公のきよしは、重松氏自身です。人の内面に広がる世界は本当に広い。それはちゃんと向き合って、耳を傾けないと分からないんだと感じさせられます。