テーマ:本日の1冊(3685)
カテゴリ:Books
21世紀研究会編の「イスラームの世界地図」が文春新書として発刊されたのは今から1年前の平成14年1月です。
緒言で次の様に述べています。 東洋と西洋の間には、中洋と言うべき広大な地域が広がっている。東洋とも西洋とも違うこの領域は、イスラームの世界である。 610年にイスラームが誕生して以来、イスラーム諸国はヨーロッパと1400年にも亘る衝突を繰り返して来た。それは民族の衝突であり、宗教の衝突であった。 モーゼもイエスも自分たちの預言者とし、ムハンマドを最後の預言者とするイスラーム教をヨーロッパ人は奇妙な新興宗教と見ていた。 もしかしたら私達日本人は、西欧諸国によって造られた否定的なイスラーム像の影響を受けているのでは無いか。 第1章のイスラームの論理と心理では次の様に言うのです。 主権在民と言う言葉はイスラーム世界には無い。主権はアッラーに在り、法もアッラーの教えであるコーランに照らして制定され、判断されるからだ。 彼等の世界では、如何にアッラーの教えを忠実に実行出来るかと言うことが、何より重要なのだ。 時代の変遷による様々な問題に国際的な解釈が必要になって来ると、当然ながらコーランには規定されていないことが多い。その為、こうしたことについては、各国の評議会で決定されることになっている。 ただし、エジプトの様に積極的に国際社会と関わりを持って行こうとする国もあれば、出来るだけ異教の国との接触を避けると言う国もあるなど、対応は様々である。 それでもイスラーム諸国の大統領、首相の権限は大きく、国家の方針は一人の首長に殆ど決められてしまう。一度大統領に就任してしまうと、どうしても独裁的な長期政権になりがちなのだ。 イスラーム過激派が反政府テロ等に訴えるのも、議会だけではどうにもならない、特に発言の機会のない貧困層の現実を見ない等と批判している訳で、視点を変えて見れば、原理主義と呼ばれる運動は、実は民主化を求めての闘いだとも言えるのである。 この本に当然のこととして結言は無いのですが、イスラーム過激派によるアメリカ同時多発テロ事件で始まった21世紀は、世界各地で、民族、宗教紛争が頻発する世紀となるのではないか、と危惧されています。 私達日本人が先進国として尊敬して来た西欧諸国のフィルターを掛けてイスラーム世界を見るのでは無く、直接に自分達の眼で直視することが必要だと主張しているのです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[Books] カテゴリの最新記事
|
|