カテゴリ:My Town
我が家から歩いて3分程の所に、多摩ニュータウン開発で伐採を免れた樹齢600年の椎の古木があります。
多摩ニュータウンは都民に住み良い住宅地を供給しようとの意図で、1970年頃から郊外にある多摩丘陵地帯を宅地造成し、人口30万人を目指して開発が始まりました。 多摩丘陵の土壌は粘土質が多く耕作地帯としては不向きであり、冬は内陸性気候で寒風吹きすさぶ所で、広い野原は秋には一面のススキが原に変身し、雑木林の多い坂道の多い土地柄でしたので、住宅地への転用は良い企画の様でした。 丘陵を削り、沢を埋めて平坦な宅地を確保する為の大規模な土木工事が行われましたので、現在であれば自然破壊を伴う乱開発として大きく問題されると思います。後年1994年には宮崎駿のアニメ映画「平成狸合戦ぽんぽこ」で問題提起されましたが、その頃は経済発展が優先される時代でした。 落合郷平久保地区の「平久保の椎」は丘陵の一番高い所に聳えていた高さ25mの巨木で、小さな社が祭られている多摩の象徴的な木でした。東京都では、指定樹木として伐採しないことに決めました。 多摩ニュータウン開発が活発であった1983年3月にNHKで「多摩ニュータウン」が放映され、この「平久保の椎」を紹介、付近の子供達が木登りをしたり、周囲で遊んでいる様子が報告されていたのです。 開発がほぼ終了した現在、「平久保の椎」は住宅地に囲まれた小さな公園の一角にひっそりと佇んでいます。アスファルトで舗装された道路で囲まれた公園には、子供の遊ぶ姿はありません。その古今の比較を6月1日のNHKアーカイブスで放映されましたが、将に夢の跡の様でした。 ニュータウン開発は核家族の住居を原則としているので、子供が大きくなると家を出て戻ることがありません。孫も同居して、親となった子供と遊ぶという姿は見られないのです。 当初計画した人口30万人は目標の半分ほどで頓挫し、子供達の転出と共に人口激減、平均年齢の急上昇という形で、この地区を襲って来つつあります。 幼稚園・小学校・中学校・高校と次々に閉鎖されることになりました。これらの公共施設は将来老人向け施設に生まれ変わると言われて来ましたが、そんな気配も無く不気味な無人建物となりました。入居の早かった地域では、老人ばかりの住居となり逝去すると住む人のいない住居が増えるだけで、一部にはスラム化していると言われる様になりました。 日本の住宅政策は持続可能なシステムになっておらず、住居も社会インフラも一回限りの使い捨てシステムでした。 「平久保の椎」は1970年から怒濤の様に多数の人が押し寄せ、嵐が過ぎた様に人が激減様子を、黙って静かに見つめているようです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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