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あとがきは6月14日ロードショーの映画「スパイ・ゾルゲ」の篠田正浩監督が次の様に書いています。
敗戦後、「アカ」と畏怖した共産主義が軍国主義と戦った正義の思想として復権し、尾崎秀美はその犠牲者としてヒーローとなった。昭和天皇は既に人間宣言の詔書を発表し、私は戦前の昭和をどの様に再認識して良いかと言う深刻な命題に向き合うこととなった。ゾルゲ事件の資料や研究書も出版され、私は貪る様に読み耽った。 ゾルゲはドイツ人の父とロシア人の母という重層する民族環境がスケールの大きな人間性を育んできたと考えられ、単一民族と信じている日本人の単純思考の陥穽を打破するには、この獄中手記、ゾルゲ事件の尋問調書、尾崎秀美の上申書の検討が欠かせないと思った。 ゾルゲは「第一次世界大戦が彼の全生涯に深刻な影響を与えた。1千万人の死者と2億人の負傷者を出した惨状から民衆を救済出来るのはレーニンが作ったソビエトだけが希望だと信じた人達がモスクワを目指したのだ。」と言っています。 しかし、彼等の信じた理想の国ソビエトが半世紀の時を経て自らの思想で崩壊するとは考えられなかった。 モスクワではスターリンの大粛正が始まり、彼の理想郷も変質していたので、レーニン派だったゾルゲがモスクワに生還したとしても処刑は免れ無かったに違いない。 ゾルゲは獄中手記の初めの方で次の様にスパイとして注意事項を記述しています。 「スパイ」は、合法的な仕事を持つことは、絶対に必要である。日本および支那においては、大きな商人になるのが一番良い方法であると思う。 その理由は、情報活動をする様な利口な人間は、最初から商人になる様なことが無い。それで大体、商人はあまり利口では無く、主として馬鹿な人間が多いから、官憲から注目されたり「スパイ」たることが発覚することが困難である。 又商人はその商売を通じて種々な情報を入手し得、大商人であれば各階級の人とも自由に交際出来るからである。 本当の利口な「スパイ」は、軍や政治上の秘密や機密書類を手に入れると言うことのみに努めるものでなく、広い意味での各種の情報ならびに断片的な情報でも拾い集めて、それを自分で判断するのである。 ゾルゲのハンブルク大学での政治学博士号を保持する学究の徒である自負が商人を卑下する形で出ていると感じました。 彼は「源氏物語」「万葉集」「平家物語」は言うに及ばず「日本書紀」等1000冊の蔵書を所有して日本研究に没頭したのです。結果ラフカディオ・ハーン同様の洞察力を持っていたようです。 又一方、近頃問題になっている北朝鮮の工作員活動も、政治亡命した“よど号グループ”の協力を得ながら、その様なマニュアルに従って日本で行われているかと思うと震撼を感じざるを得ませんでした。 全体の読後感は後日また書きたいと思っています。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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