新上五島町青方の大曽郷に煉瓦造りの美しい教会があります。
青方湾の静かな入江の高台に位置しているのですが、この入江出口には国家備蓄の海上浮体タンク石油基地があって、何かそぐわない奇妙なコントラストを醸し出しています。
昔は海岸に沿った小さな道を使って大曽郷に行きましたが、石油備蓄プロジェクトに対する地域支援金が多く投入されましたので、海岸を埋め立てて造った広い道路で行くことが出来る様になりました。
1915年に完成した煉瓦造りの教会は正面に八角ドームの鐘楼があり、色の異なる煉瓦を規則的に配置する意匠の工夫が見られます。
しかし、やはり美しいのは教会内部で、リブ・ヴォールト式と呼ばれる木造アーチ式天井、半円アーチの窓には西独製の鮮やか花柄ステンドグラス、が教会の雰囲気を高めます。
「ヴォールト」とは、アーチの原理を利用して作られた石造やれんが造りの屋根、天井のことを言い、内輪に突出した棒状のリブを持つものをリブ・ヴォールト(Rib-Vault)と呼びます。
木造であれば長い柱と梁が製作可能ですから、本来アーチは必要無いと思うのですが、何とか西欧の教会に様式的にも近づけたいとした日本の大工棟梁による工夫の結果の様です。
「鉄川与助」とインターネットで出てくる筈ですから、検索してみてください。
上五島丸尾郷に生まれた彼は、上五島だけでなく下五島、長崎、天草等でも数多くの教会を設計施工したのです。
彼の手がけた教会は、此処大曽教会の他、石造りで知られる頭が島教会、煉瓦造りの青砂ヶ浦教会、木造の冷水教会等がありますが国の重要指定文化財となっている所が多いのです。
工夫と雰囲気に満ちた教会も多く、長崎県内の50余に数えられる教会群の中核として世界遺産申請が進められているそうです。