ぐずぐすと過ごすうちに時間だけが過ぎて午後名実共に重い腰を上げた。
スノーシューとカメラバッグを車に放り込んでアストラッド・ジルベルトを流しつつ、ある山の登山口へと向かって山小屋で茶を啜る。
座ったベンチの下に蔦を丸めた如きものがあり、リースの材料でも誰かが採集したものと意に介さずにいたのだが取り出してみると、それは誰かが小枝と蔦とガムテープと電線如きもので編んだスノーシューであることに驚いた。
昔々、げんちゃ●という者がおった。
酒飲み話から山中の秘湯をもとめて山にわけいろうという話になったらしいのだが、その時参加した中に●ダ吉という若者がおったそうじゃが、そのサ●吉、途中で膝に異常をきたしぬかるむ雪に難渋していると器用にもスノーシューを編みあげてサダ●の歩行を手助けしたのがげんち●んと聞き及んでいる。
参加した物らは山中の秘湯をみつけ、雪と土を掘り入浴できる大きさの湯壺を穿って入湯したらしいのだが、その年の夏は冷夏、餌を求めて満たせなかった羆が冬眠できず冬山に餌を求めて歩いているのとばったり出会ったらしく、裸で手編みのスノーシューで逃げだした●ダ吉以外の姿を見ることはその後なかったという話じゃ。
その時一人の命を救ったスノーシューがこれじゃ!
なんぞと物語をでっちあげて歩いていると。
あら、お行儀の悪いこと、誰なの?こんなに食べ散らかしたのは。