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カテゴリ:政治・経済
自民党の安倍晋三総裁は総選挙に臨んで日銀法改正とインフレ目標を掲げた。 「2~3%のインフレ目標を設けて日銀に無制限に緩和してもらう」と発言、これを受けて円相場は半年ぶりに1ドル=81円台になり、日経平均株価は9000円台に乗せた。 これに経済界が好感している。「金融緩和が足りない」という一部の自民党の議員のみならず、民主党議員の一部やみんなの党も金融大幅緩和は賛成だろう。だから、選挙後の安倍政権の地盤固めには好都合な経済政策と安倍氏は見ているかもしれない。 しかし、日銀はこれまでも金融緩和を進めてきたが、デフレは今も続いている。デフレは基本的に事業創造が広がり、需要が拡大して需給が締まり、経済が拡大しなければ収まらないのだ。 「それは金融緩和が不十分だからだ」というのが安倍氏を含む自民党議員やみんなの党は主張だ。しかし、安倍総裁の言うように、2%のインフレ目標達成まで無制限に金融を緩和したらどうなるだろう。 池田信夫氏は「エコノMIX異論正論」の中でこう指摘している。 <安倍氏は物価上昇率が0.1%、0.2%・・・というように徐々に上がっていくと思っているのだろうが、そういうことは起こらない。日銀の保有資産はGDP比で約30%(150兆円)と世界最大規模で、リーマンショック以後1.5倍に増えたが、デフレが続いている。……これを200兆円、300兆円・・・と増やしてゆくと、何が起こるだろうか。……マネタリーベースがある限度を超えたときインフレ予想が生まれ、金融資産が海外や実物資産に逃避し始める> この結果、円安→輸入物価上昇→インフレ→資金不足による金利上昇→インフレ加速、とい経過をたどって、金利の制御のきかないハイパーインフレ(物価暴騰)が出現する危険が大きい。 安倍氏はマイルドなインフレを目標にしながら、そう都合よく収まらないで、かつてのアルゼンチンのようなハイパーインフレになってしまう危険が大きいというのだ。 金利も大幅に上昇して国債価格が暴落、国債を大量保有している銀行が倒産、国債による資金調達ができなくなって財政が破綻してしまう。大恐慌だ。 ただ、円の暴落で日本の輸出産業の競争力は回復、高齢者に保有が偏っている金融資産が紙くず状態になる一方、働く若い世代の賃金はインフレに見合って大幅上昇し、世代間の不公平も解消される。 借金している人々は実質益に負債が軽くなり、とりわけ、政府は巨額の債務が大幅に軽減される。そこで池田氏はこう結んでいる。 <安倍氏がそういう「焼け跡」から日本経済を再出発させようと考えているのなら、それも意味のある選択肢だろう。もしかすると日本には、その道しか残されていないのかもしれない> しかし、「焼け跡」では失業者があふれ、生活は相当の困窮が予想される。社会的な混乱、不安が続くだろう。中国などとの緊張が高まる中で安全保障上の懸念も強まる。「焼け跡」からの早急な復興も簡単ではない。 安倍氏が、そうした覚悟をもって金融長緩和策を唱えているとは思えないのだが……。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2012.11.17 14:05:54
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