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カテゴリ:政治・経済
中国は弱肉強食の競争原理が徹底している一方で、競争が及ばない世界がある。共産党と役所、国営企業だ。彼らは国税を中心とする国富を独占し、仲間内で山分けする(あるいは奪い合う)。近藤大介著「中国人の常識は世界の非常識」(ベスト新書)はその点を、エピソードで交えて解説している。
<中国の学生たちの間では、公務員>国有企業>外資系企業>民営企業という序列が、はっきりしている> つまり一番なりたいのは公務員で、2014年入省の国家公務員試験の平均倍率は77倍。一番高かった部署は7192倍だった。 <公務員になれば、生き馬の目を抜く、明日をも知れぬ混沌とした中国の一般社会から逃れられるというわけだ。……そこには世間一般とは異なるオイシイ世界が待ち受けている> 近藤氏は日系企業でアルバイトをしていて、国有企業に就職できた女子学生に「どんな調子か」聞いてみた。すると、彼女はニッコリ笑ってこう答えた。 <最高ですよ。仕事は楽な上に、接待費は青天井で、毎月1000元の家賃手当てや1000元の暖房代、500元の図書代がついて、毎日果物や牛乳などが支給されます。勤務時間を使ってイチゴ狩りやリンゴ狩りの遠足があるし、温泉観光つきの出張もあります。期末ごとの研修は、豪華なホテルで毎晩、宴会をやりながら行います。2年目になると海外出張という名の慰安旅行もあるそうです> 国有企業以上に多くの利権を握る公務員のオイシサは推して知るべし。 近藤著を見ると、中国のシンクタンクが2008年に行った調査によれば、GDPの3割に当たる4兆元(57兆円)もの「灰色収入」(賄賂)があるという。収入に占める灰色収入の割合は高所得者が62%、中所得者が5%、低所得者がゼロだった。 バブル期に大蔵省官僚のノーパンシャブシャブ接待が話題になったように、同様の官僚の既得権や腐敗は日本にも存在する。だが、中国に比べれば、それはケタ違いの小ささ、日本の官僚や政治家、国営企業の灰色収入や既得権はカワイイものである。 ただ、その肥大化は近年著しく、弊害は存外に大きい。役人とそれにつながる外郭団体の数は多く、行政改革を阻んで、日本経済の足腰を弱らせている。 「民」の甘えがそれを助長する。例えば、規制緩和で競争が激しくなり、業績が悪化したタクシー業界が自民党と役所に泣きついた結果、規制強化が実現されてしまった。国民に便利で安いタクシーを提供するという本来の政府のあり方とは逆行している。 このほか農業、医療・介護、金融、放送・通信など規制に保護されている業界は数多い。政―官―業の癒着が日本経済をダメにしている。何かあればオカミに頼る民の甘えの構造と、それを権益拡大の糧にしている官、票田維持のテコにしている政の「鉄のトライアングル」だ。 これに民間企業の従業員に優しい雇用保護経営が加わる。保護と裏腹なのが、経営者や管理職への服従。自由な発想と行動を許さない。それらもまた、日本経済を弱めている。 つまり、日本の政官の腐敗は中国ほどひどくはないが、民に幅広く影響力を持つことで経済を弱めており、これに民そのものの競争原理の不徹底さが加わっている。 中国では競争原理の徹底が日本以上の経済成長を促してはいるが、一部の特権階級以外は貧困と環境破壊に苦しんでいる。さらに、巨大な官の腐敗と非効率がバブルを膨張させ、その破綻の危険性が徐々に高まっている。 どっちがいいか。日本がいいことは明らかだ。が、重ねて言えば、もう少し競争原理を促す必要がある。まずは民が自らの「甘え」を反省し、自己責任でビジネスを展開することが大切だ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2014.01.20 11:50:25
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