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鎌倉橋残日録  ~井本省吾のOB記者日誌~

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2014.11.28
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カテゴリ:日本・日本人
26日付けの当ブログで松原久子氏の「言挙げせよ日本」(プレジデント社)を紹介した。

 <国際社会にあっては対決は日常茶飯事である。ところが日本人は、それが特別の状態であるかのように思い、何とか早く普通の状態に戻りたいと焦る。そしてほとほと疲れてしまう。息の長さに欠けるのだ。ゆっくりと鷹揚に構えつつ、うちに敵愾心、猜疑心を秘めてどこまでも自己を貫くという、欧米人には当たり前の外交芸当がなかなかできない>

その松原氏のドイツでのエピソードを、伊勢雅臣が編集長を努めるサイト「国際派日本人養成講座」が取り上げていて興味深い。

松原氏がドイツのテレビで「過去の克服-ドイツと日本」をテーマにした討論番組に参加した時のことだ。

<ドイツ代表は「日本も戦時中、中国、朝鮮、東南アジアで市民を殺戮したからホロコーストは日本の問題でもある、と発言した。松原氏はすかさず、こう反論した。
「日本にはアジアの特定民族を絶滅することが優秀な日本 人の使命だという論理は存在せず、日本政府がそうした論 理に基づく政策を立てたことはかつて一度もなく、占領した地域で目的の民族をしらみつぶしに探し出して、もっとも効果的に安上がりに殺すべきだといった発想そのものが日本人の思惟方法には存在しない。ドイツの犯したホロコーストは戦争とは全く無関係の次元にある殺戮だ」>

 日本人で、これほど明快に論理的に、詳しく主張できる人はまれだ。大変な雄弁家である。

このエピソードには後日談がある。

<テレビ局からの帰りに、ケルン駅で列車を待っていると、人ごみの中から中年の女性が近づいてきて、「我々のテレビで我々の悪口を言う者はこれだ。日本に帰れ」と言うなり、松原氏の顔に平手打ちを食らわせ、消えていった。

次のテレビ出演の時に、松原氏はこの事件を手短に話し、ドイツには今もって言論の自由がないから、身を守るため沈黙すると宣言した。すると、放送中に80件以上もの電話があり、局を通してたくさんの花束がお見舞いとして届けられた。その 一つに「あなたの言うことは腹立たしい。でも本当だから仕 方ない」と書かれたカードがついていたという>

 平手打ちを食らって、松原氏のショックは大きかっただろう。怖くなってなにも話さなくなって家に閉じこもっても不思議ではない。

 しかし、松原氏はあえてテレビ出演し、「この国に言論の自由はあるのか」と提起、平手打ちをしたドイツ人女性を批判した。

 それがドイツ人のお見舞いを呼び寄せ、松原氏の主張の承認につながった。勇気ある行動である。しかし、それをせず、黙っていれば、日本人は譲歩と劣勢を強いられる。

 ドイツ人には日本の戦争犯罪とは比べようもないホロコーストを敢行しながら、日本人も同じだと、自国の罪過を相対化しようとする意思がある。国際社会で日本への批判を盛り上げ、ドイツへの批判の目をそらし、ドイツは日本よりも良くやっていると思わせる欺瞞的策略がある。

 冗談ではない。悪意ある史実の歪曲にはただちに反論することが肝心だ。



松原氏はそのことを心得ている。異国の地で、ここまでの論理と弁論術を確立するまでには、様々な非難、批判の嵐で傷つき、それを乗り越えてきたに違いない。

 しかし、大変ではあるが、我々も、松原氏のひそみにならい、弁論術を鍛錬する必要がある。対立や摩擦を嫌う日本人にとって、しんどい作業ではある。

 その心構えをもう一度、松原さんの言葉の中に確認すれば、こうだ。

<ゆっくりと鷹揚に構えつつ、うちに敵愾心、猜疑心を秘めてどこまでも自己を貫く(姿勢)>

「沈黙は金」は日本の美徳である。が、それはしばしば正しいことを主張することからの逃避、言い訳に使われる。

 国際社会では黙っていれば、認めたことになり、国益を失い、後でひそかにバカにされているのだと心得たい。








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Last updated  2014.11.28 17:54:27
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