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中世武士団をあるく 安芸国小早川領の復元

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2005.08.19
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五輪塔の分類をすすめるうえで、区分しやすい部材は、火輪(笠石)です。

火輪には、さまざまなタイプがあり、石田茂作さんは、著書の『日本佛塔の研究』(昭和44年)のなかで、大きく6種類に分類し、さらに12種類の形を図で示されています。
このほかにも異なるタイプがありますから、細かく分ければ、火輪の種類は、もう少し増えるでしょう。

このうち、小早川領内で確認できる五輪塔は、何種類あるのでしょうか。
この答えは、まだ調査中のため、具体的な数はわかりませんが、たとえば、つぎの写真を見てみましょう。

小早川墓地 五輪塔3種

これは、竹原市の「小早川墓地」にある五輪塔です。

「小早川墓地」にある五輪塔のうち、一応、五輪塔としての形を残すものは、20基ほどですが(ただし空風輪のかわりに宝篋印塔の相輪をのせるものも含みます)、残欠までも含めると、個々の部材の内訳は、地輪18、水輪38、火輪33、空風輪35となります。
水輪の数から推察すると、少なくともこのあたりには、38基の五輪塔があったようです。

もちろん、現在のように、一箇所に集中して38基の五輪塔が建ち並んでいたわけではありませんが、それでもかなりの数になります。

ただし、いずれも高さが1メートルに満たない小型の五輪塔ばかりで、鎌倉時代にみられるような、大きな五輪塔はありません。
火輪の幅も25センチ前後のものが多く、形もよく似ているため、かりに組み合わせをかえたとしても、それほど不自然さはありません。

墓地の周辺は、山崩れも多く、現在の組み合わせも、昭和35年7月15日に発生した山崩れのあと、地元のかたが掘り出して現状のように積みなおしたものになります。
したがって、本来の組み合わせを保っているものは、皆無に近いとみてよいでしょう。

そこで組み合わせを無視し、火輪の形だけを細かく見ていくと、いくつかの異なる点を見つけることができます。

たとえば、火輪の軒の反り方をみてください。

むかって右端の五輪塔の火輪は、全体的にゆるく反っており、7月28日の記事で紹介した箱根の五輪塔の火輪ともよく似ています。
大きさは、横幅が24センチほどしかありませんから、鎌倉時代までさかのぼることはありませんが、室町時代までは、さかのぼるかもしれません。
なかなか、いい形をしています。
このタイプを、ひとまず、Aタイプとよぶことにしましょう。

つぎに、左端の五輪塔の火輪をみてください。
こちらは、隅にむかうほど上部の反りが強くなり、隅で反りあがります。
このため、軒の上下の高さは、中央と隅では大きく異なります。
Aタイプより新しい形で、これは、Bタイプとしましょう。

最後に、中央の五輪塔です。
この火輪は、軒裏(軒の下端の線)の中央は、ほぼ直線(水平)ですが、隅のところで少し反りあがり、上部は、跳ね上がっています。
これは、Cタイプとしておきましょう。

このCタイプは、Bタイプより新しいタイプですが、BからCへとある年代によってきれいに移りかわるものではなく、たがいに重なる時期もあります。
このため、どちらが新しいか、簡単には判断できません。
この点も、五輪塔の年代判定の難しさなのです。
ただし、いずれも戦国時代のものとみて間違いないでしょう。

つぎに、同じ「小早川墓地」の、別の五輪塔の写真をみてみましょう。

小早川墓地 五輪塔3種

むかって左側の2基は、Cタイプ、右端の五輪塔は、Bタイプのようですが、よく見ると、右端の五輪塔の火輪は、軒裏(火輪の下端)が隅までまっすぐ直線(水平)で造られています。
このタイプは、16世紀末の慶長ごろみれら、江戸時代の特徴的な造り方となります。
隅をやや斜めに切る造り方も、江戸時代の特徴です。
こうした点から、さきほどの3タイプよりは、新しい五輪塔だと考えられます。
そこで、これは、Dタイプとしておきましょう。

このように、「小早川墓地」だけでも、少なくとも、4タイプの五輪塔があります。

ただし、これまでの石塔調査は、おもに宝篋印塔を中心に進めてきたため、それぞれのタイプがいくつあるのか、高さと幅の比率はどうなのか、といった細かな調査はしていません。
このため、9月にあらためて調査をおこなう予定です。





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最終更新日  2005.08.19 10:45:59
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