ちょっと日本に戻ってまして、
少しの隙に、神戸は有馬温泉『御所坊』へ行ってきました。
我が温泉めぐりのバイブルとしている、
柏井壽氏の『「極み」の日本旅館』によると、
古くから知られた温泉地の宿命なんでしょうが、
にぎやかで歓楽的、言い方を変えれば、
猥雑で垢抜けない雰囲気になりがちな有馬温泉の
古い旅館を引継いだ金井啓修氏が、
敢えて、木造建築をそのまま活かし、部屋数を抑え、
高品質小規模旅館を作ったのがこの「御所坊」なのだそうです。
デザイナー旅館の先駆け、というのでしょうかね。
バーやライブラリーも充実させ、いまや日本でも有数の旅館となった・・と。
ま、そこに行ってきたのです!
なるほど、ステキな旅館です。
狭い敷地をなんとか工夫して利用しているものだから、
段差は多いし、廊下もゆったり、という感じではないし、
肝心の温泉も、そう、広々とした・・というのではない。
でも、要所要所に、センスいい気遣いがちりばめられ、
なるほど・・と思いましたね。
なによりも、茶褐色に濁った温泉の質がいい。
古来、日本第一神霊泉といわれているんですって。
これは、天の恵みなのでありましょう。
また、料理がいい。カニだ、イセエビだ、などという
目先の豪華さに走らず、いいダシを使って、
丁寧に味付けしてある、というのがいい。
地元の野菜や、湯葉などをふんだんに使って、
しかも量が多すぎない、というのもいい。
一緒に行った友人の話なんですが、最近、
新宿・伊勢丹の「吉兆」で食事をしたのだそうです。
先付けに出てきた器に、100円ショップで売っていそうな、
安っぽい造花の朝顔が挿してあって・・。
その段階から期待は出来ないと覚ったそうなんですが、
やっぱり、がっかりするお味だったそうで。
そういう話をしながら、我々、料理を堪能したのですが、
ほんと、料理なんて「美味しいものを提供したい」という気持ちさえあれば、
ある程度のことは、簡単に出来ると思うのですけれどね。
そして、働く人々の愛想がいい。
(ちょっと作り笑い的かな、というのはあったのですが・・)
もちろん、厳しいオバサン観察眼からすれば、
「ここはこうすれば」的な改善余地は諸々あったのですが、
それはそれとしても、
由緒ある有名温泉地であるがために、ともすれば流れがちな
目先の豪華さと内容の雑駁さ・・というところをきっぱりと切り離し、
本当の心地よさを目指している旅館がちゃんとある。というのは、
日本人として喜ばしいことだと思いましたよ。
★写真は、御所坊の温泉。
左が女性用、右が男性用。先端の辺りは開放され、
でも、見ようとしても首から上しかみえないという
「半混浴状態」になっています。
まあ、この年になると、そんなことはどうでもよくなっていて、
ひたすら、Na分の多い、よって、湯疲れの少ない(らしいです)
茶色いお湯を、堪能したのでありましたが。